Farah Master Scott Murdoch

[香港 30日 ロイター] - マカオのカジノ運営企業、ギャラクシー・エンターテインメント<0027.HK>は新型コロナウイルスの猛威で中国本土からの来場者がぱったり止まり、1日当たり300万ドル(約3億2100万円)の運転費用を垂れ流している。こんなことが起きたら、大抵の企業は沈没しかねない。

しかし、世界最大のギャンブル拠点のマカオでは、同社や同業の多くが嵐を乗り切れるだけの十分な手元資金を確保している。驚くなかれ、数カ月から数年、収入ゼロが続いても、生き残れそうなのだ。

マカオのカジノ運営会社らのバランスシートの質は、米ラスベガスの同業者を凌駕する。米ラスベガスのカジノ業者が多大な債務を背負い込んでいるのに比べ、マカオでのビジネスは豊富な現金収入を生み、借金も比較的少ない。ひとえに本土の中国人の飽くなきギャンブル熱のおかげで、近年、収益を大きく伸ばしてきた秘密はそこにある。

ロイターの試算によると、マカオのカジノ会社の今年の累積キャッシュは計120億ドル(約1兆2900億円)を上回る。

その好例がギャラクシーだ。定期配当をせず、ここ数年では約57億ドル(約6100億円)のキャッシュをため込んだとみられる。この規模の内部留保があれば、コロナ危機が長引いて売上高ゼロのままでも、生き抜くことができそうだ。

中国特別行政区のマカオにとって、ギャンブル産業の浮沈は命運を握る。人口60万人の約4分の3が直接、間接的にカジノに雇用されている。

ギャラクシーのロバート・ドレーク最高財務責任者(CFO)は、コロナ流行のさなかの2月末、通期決算会見で「コロナの影響がこれからどうなるのかを予想するのは非常に難しい」と述べていた。新型コロナの影響で、マカオでは年内に開始が予定されていた数十億ドル規模のプロジェクトが遅延する見通しになっている。

しかしアナリストによると、当地の他にカジノを運営するサンズ・チャイナ<1928.HK>、MGMチャイナ<2282.HK>、メルコ・リゾーツ<MLCO.O>、ウィン・マカオ<1128.HK>は、ギャラクシーよりはキャッシュのバッファーが低いにもかかわらず、いずれも半年から2年間程度、収入ゼロでもやっていける。その場合、借金をしなくても全員が生き残れるのは半年間。ただ、売り上げが立たない期間が半年以上長引くと、問題が起きるケースもあるかもしれないという。

各社はロイターの質問に対してコメントを控えている。

<短距離ダッシュでなくマラソン覚悟>

マカオはコロナの感染対策として、中国本土、香港、台湾から入境しようとする来訪者が直前14日間に海外を渡航していれば入境を禁じている。マカオへの旅行者の90%以上は、こうした地域からだ。

マカオの各カジノは2月、2週間の営業停止を経て運営を再開したものの、渡航制限や感染対策の規制により、売上高は80ー90%落ち込んだ。4月の売上高も全体で前年同月比95%減少したとみられている。1日当たりのマカオ来訪者数は、1年前は10万人を超えていたが現状は200人程度だ。

ギャラクシーのドレーク氏は経営環境の苦境について「短距離走ではなくマラソンの様相だ。中国本土の状況は漸次改善が期待できるので、これがマカオにも少しずつ波及することを期待している」と述べている。

マカオのカジノ運営6社は近年順調に成長を続け、2014年以降で計2000億ドル(約21兆4000億円)超を稼ぎ出していた。つまり幸運にも、コロナ危機の途方もない影響に対処する力をつけていた。トムソン・ロイター・アイコンによると、大手6社の平均負債資本比率は53%で、ラスベガスの同業者の約87%より良好だ。

コロナ流行を理由に配当を停止したサンズは、1日当たりの運転費用が400万ドル(約4億3000万円)近い。しかしJPモルガン(香港)のアナリスト、DS・キム氏によると、手元キャッシュが約14億ドル(約1500億円)あるため、2年間は売り上げなしでも経営が維持できそうだという。

サンズのシェルドン・アデルソン会長は4月22日の電話の投資家向け決算説明で、配当再開は今後の利益次第と表明。直近では配当も自社株買いもせず、キャッシュ保全に努める方針を約束した。サンズの発表した四半期決算は1億6600万ドル(約178億円)の純損失だった。

マカオの同業他社も数週間内に決算を発表する予定だ。アナリストは、旅行制限が緩和されても下半期の業績回復はゆっくりしたものになると見込んでいる。

ただ、こうしたカジノ業者が資本市場での調達に動いた場合、簡単にはいかないと 銀行関係者は警鐘を鳴らす。アジアで資金調達が成功するには、そのセクターの将来の見通しが明確になっている必要があるが、マカオのカジノの場合は、いつ客が戻れるのかさえ、視界不良なためという。