自分が所属する組織から「越境」することで、キャリアはもっと磨かれる――4人の「越境人材」座談会から見えた“成長のカギ”(前編)

人生100年時代、「自分のキャリアは自分で磨く」という認識が広まりつつある中、実際にどのように磨いていけばいいかわからず、漠然とした不安を抱いている人も多いのではないでしょうか。

そこで、自身の成長を促進する手段の一つとして「越境」に注目してみましょう。

「越境」とは、自分の所属する組織を越えて交流を図る動きのこと。この動きは、能動的に成長の機会を得る方法の一つです。

会社で仕事に向き合い続けることで、連続的な成長は見込めます。一方で、部署異動や昇進などにより役割が変わることで、今までとは異なる「非連続」な成長機会を手に入れることができます。今までとは異なる視野・視座で仕事に対応する必要性に迫られ、不安と戦いながらも成長していくのです。いわゆる「ステージが上がる」という感覚に近いかもしれません。

しかし、こういった機会は必ずしも自分が望めば手に入れられるというものではありません。

一方で「越境」活動は、自らの手で機会を創りだすことができます。部署異動や昇進などと同様に、そこで新たな役割を得ることで、視野・視座に変化が生まれ、「非連続」な成長の機会になるのです。

今回は、NEC、東芝、キヤノン、ソニーといった大手メーカーに所属し、部門間の越境、あるいは社外への越境を推進する有志活動を立ち上げた4人の方々をお招きし、座談会を開催。彼らがどんなきっかけ・目的で有志活動を始めたのか、軌道に乗せるまでにぶつかった壁をどう乗り越えたか、「越境」経験を通じてどう成長したか――などを語っていただきました。

座談会メンバー・プロフィール
日本電気株式会社 諸藤洋明さん (写真左から1番目)

入社13年目 第一官公ソリューション事業部所属。2017年、有志活動『CONNECT』を立ち上げ。「やりたいを加速する」をテーマに、組織を超えたイベントやコミュニティ運営などを行う。
参考記事:「社内に面白い人がいるはずなのに、出会えない…」NEC社員が立ち上がり企業カルチャーの変革に挑む――「越境」で新たな価値を生み出すNECの今
//next.rikunabi.com/journal/20190510_c11/

キヤノン株式会社 大辻聡史さん(写真左から2番目)

入社9年目。イメージコミュニケーション事業本部所属。2016年、「キヤノンパーソンが持つ意欲やアイデアを仲間と話し、考え、試せる場をつくる」ことを目的とする有志活動『MIP(ミップ=Make It Possibleの略)』を立ち上げる。グループ会社や事業所を横断したネットワークを構築、勉強会、発表会、地域貢献活動などを行う。

東芝エネルギーシステムズ株式会社 金子将人さん(写真右から2番目)

入社6年目。事業開発部所属。2017年、有志活動『Open Roots ESS』の立ち上げに参加し、社長対話会、社内交流会、有識者を招いての講演会、他社有志団体との交流活動などを展開。
参考記事:「もう一度、誇りと働きがいを!」危機に瀕した会社を変革するため、“現場の社員”が行動を起こす 〜東芝エネルギーシステムズ株式会社 変革へのチャレンジ
//next.rikunabi.com/journal/20190114_c11/

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 森井孝則さん(写真右から1番目)

入社11年目。企画管理部門 所属。ソニーの経理やソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)にて、経理の立場からPlayStation 4の立ち上げに関わった経験を経て、新規事業創出部(SSAP)にてオーディションやワークショップの企画・運営に参画。その後、自ら事業サイドに転じてSSAPのオーディションにて優勝しプロジェクト化された子供向けトイ・プラットフォーム「toio」と、電子お薬手帳「harmo」の事業企画、ファイナンス、法務、マーケティング、法人営業を担当。そこで得た知見や人のネットワークを活かしながら、2018年、社員の新しいチャレンジの支援を目的として、厚木テクノロジーセンターに設けられたワークプレイス『コミチカ(※)』の企画・運営を手がける。
※コミチカ=食堂などがある「コミュニケーションプラザの地下」にあることに由来する愛称

<ファシリテーター>
株式会社リクルートキャリア 大橋 裕介(写真中央)

リクルートキャリアの営業マネジャーとして自動車業界・電機メーカーなど大手製造業の採用支援を行う傍ら、「ひとりひとりが自分の人生をイキイキと生きる社会づくり」を目的に個人のチャレンジ、組織の変革を応援する一般社団法人『Work Design Lab』のメンバーとしても活動。
また、リクルートグループの組織を越えた有志活動「One G-HR」の発起人でもある。


※所属企業・肩書は取材当時(2019年7月)のものです。

危機感、楽しいことの追及、使命感…「越境」のきっかけは様々

大橋 そもそも皆さんは、どんなきっかけで、どんな目的で有志活動を始めたのでしょうか?

大辻 僕はもともと「新しいことがしたい」という想いでキヤノンに入社したんです。でも5年目くらいに「自分は新しいものを生み出せるような力を付けているのかな。今のレベルの成長でいいのかな」と、漠然とした危機感を感じて。セミナーに参加したり本を読んだりしてみたんですが、仕事にはつながっていかない。そこで、まずは自分の部門内で勉強会を始めて、当時開発に携わっていた技術分野と違う分野の架け橋となるようなものを探し始めたんです。そこから他部門の人たちとも関わりが生まれ、賛同者が集まってきてくれました。

金子 僕の動機も「危機感」。ただ、自分自身に対してというより、会社に対してですね。2015年に東芝の不正会計が発覚したほか、原子力発電事業の先行きも見えない中で、退職者が続出していました。そんな中、「会社を何とかしよう。もう一度誇りを取り戻そう」と声を上げた人がいて、すぐさまそこへ乗っかったんです。最初、若手20人くらいが集まって「自分たちに何ができるのか」「何をすればいいのか」を考えるところからのスタートでしたね。

諸藤 私の場合、最初は「巻き込まれた」という感じ。同期メンバーと飲みながら、「NEC内には面白い人がたくさんいるはず。その人たちと会える機会、新しい技術と出会える機会があれば、会社生活楽しくなるんじゃね?」なんて会話をしているうちに、活動の発起人に組み込まれた。もともと新しいチャレンジには抵抗感がないほうなので、最初は「面倒だな」という気持ちもありつつ、面白がって立ち上げたのが始まりです。

森井 私はソニー内で既に立ち上がっていた取り組みに、助っ人として加わりました。有志たちが始めた「厚木のエンジニアを活性化させるホットスポットを作り出す」という新しいチャレンジに対して会社が賛同し、厚木テクノロジーセンター内に『コミチカ』というワークプレイスをオープンしたんです。そこでは、新しいアイデアをもとにした試作もできるように、3Dプリンタやレーザーカッター、切削機などの機材や、材料も揃えています。いずれも非常に高性能なもので、会社として投資をしているだけにしっかり運用・管理していく必要がありますが、企画メンバーは技術職が中心で経営管理の専門知識がない。そこへ私がたまたま、コミチカを管轄する半導体グループ会社の企画管理部門に異動してきて、その状態を見て「困っていそうだな」と。私は企画管理や経理として幅広い事業を経験していて力になれそうなので、運営のサポートを引き受けたんです。なので、半分は業務、半分は有志活動、という感じです。

「あいつら遊んでるだけ…」周囲からの理解など、“壁”はたくさんあった

大橋 危機感、楽しいことの追求、使命感――皆さん、きっかけはそれぞれだったのですね。しかし、現在のように多くの人を巻き込んで社内に影響を及ぼすに至るまでには、困難もあったのではないでしょうか。途中、どんな壁にぶつかりましたか。そしてそれをどう乗り越えていったのでしょうか。

大辻 部門内で勉強会を始めたばかりの頃は、人は集まらないし、思い通りには進まなかったです。どうすればうまくいくのか模索しているとき、社内報で同じような活動をしている人を見つけて、会いに行きました。そこでノウハウを聞くほか、「この人に相談するといい」と他部署の人も紹介されて。そこからネットワークが広がっていった。だから僕の場合、最初から「越境」を狙っていたわけではなく、やりたいことをするためにいろいろな人に会ううちに、いつのまにか越境していたという感じです。

諸藤 有志活動をする中での最大の課題は「本業との両立」だと思います。本業をおろそかにしてしまうと、「あいつらは遊んでるだけ」という目で見られてしまうし、そうなると後に続く人も出てこなくなる。特に、自分の部署の利益のためだけの活動ではなく、「越境」して部署外で活動するからには、本業にしっかりと取り組み、成果も挙げていなければなりません。でも、本業が忙しくなると、なかなか有志活動ができなくなる。フィットネスジムと同じで、「行っても行かなくてもいい」となると、足が遠のいてしまうメンバーも出てきてしまう。志を持って参加しても、継続が難しいこともありますね。

大辻 確かに。自分たちの裁量でやることだから、いくらでも先延ばしにできるんですよね。そうして優先順位が落ちていくとモチベーションも下がっていってしまう。だから、僕たちはあえて「締切り」を設けるようにしていました。志を同じくする人たちに対して「自分はこれをここまでにやります」と宣言する。そうすれば、家でテレビを観る1時間を企画を考える時間にあてたり、ランチタイムをミーティング時間にあてたりする発想になる。時間はできるものではなく、作るものだと思うから。

諸藤 「役割を負う」のも一つの方法だと思ってます。私自身、『CONNECT』の代表として『ONE JAPAN(大企業の若手有志団体のコミュニティ)』 の会合に呼ばれることもあるので、忙しくても行かなければならない場面がある。一メンバーであっても、書記担当なり広報担当なり、自分のミッションを持つことは、続ける秘訣なんじゃないかと。とはいえ、『CONNECT』内で役割分担を決めることはしていないんですけどね。自発的に役割を担っていけるのが一番いいと思う。

大辻 メンバーの「自発」を促すためには、リーダーたちが本当に自分にやりたことをやって、楽しんでいる姿を見せることが大事なんじゃないかな。メンバーも「自分はこれをやりたくてやっている」と思えば、そこで自分のポジションを確立していくと思います。

金子 そう。有志活動は、「義務感」が強くなってしまうと続かない。だから、僕たちは「本業に貢献する」という目的はあえて持たないようにしています。本業とからんだ時点で、上司にお伺いを立てなければならないことも出てくるし、できることの枠も狭まってしまうでしょう。だから「会社への貢献」を前提とせず、やりたいことを楽しんでやろう、と呼びかけていますね。

森井 そうした点では、私はやや皆さんとは状況が異なります。ソニーはいい意味で仕事と遊びがオーバーラップしたカルチャーがあります。例えば、プライベートなつながりから得た知識が仕事に活きるということがたくさんあって、両者を必ずしも対立軸とは見ていません。『コミチカ』についてもエンジニアの活性化、雰囲気が変わる、新しいチャレンジが増えるなど本業で得られるものとは異なる性質のアウトカムを期待した、長期的な投資と位置付けられています。だから『コミチカ』を利用する人たちが設備や機材をきちんと使いこなして成果につなげられるようにサポートしていくし、『この部署とこの部署がつながれば新しい事業が生まれるかも』という可能性を探って橋渡しをしていく。一方で、現在もぶつかっている障壁としては、企画・運営に関わるメンバーの「時間の捻出」です。仕事で成果を出している人が集まっているからこそ、各自、本業がとても忙しく、運営が追い付いていないところがあります。

大橋 本業とのバランスを取りながら、時間を捻出する工夫、モチベーションを保つ工夫をすることが、有志コミュニティを運営する上での共通の課題だといえそうですね。

 

後編では、「越境活動を通じてどう成長したか」「今後チャレンジしたいこと」を語っていただきます。

後編へ続く

WRITING 青木典子 PHOTO 平山 諭


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