自分が所属する組織から「越境」することで、キャリアはもっと磨かれる――4人の「越境人材」座談会から見えた“成長のカギ”(後編)

人生100年時代、「自分のキャリアは自分で磨く」という認識が広まりつつある中、実際にどのように磨いていけばいいかわからず、漠然とした不安を抱いている人も多いのではないでしょうか。

そこで、自身の成長を促進する手段の一つとして「越境」に注目してみましょう。

今回、大手メーカー内で、部門間の越境、あるいは社外への越境を推進する有志活動を立ち上げた4人の方々をお招きし、座談会を開催。前編では彼らがどんなきっかけ・目的で有志活動を始めたのか、途中でぶつかった壁をどう乗り越えたかを語っていただきました。後半となる今回は、「越境」経験を通じてどう成長したか、また、今後のビジョンをお聞きします。

前編はこちら

座談会メンバー・プロフィール
日本電気株式会社 諸藤洋明さん (写真左から1番目)

入社13年目 第一官公ソリューション事業部所属。2017年、有志活動『CONNECT』を立ち上げ。「やりたいを加速する」をテーマに、組織を超えたイベントやコミュニティ運営などを行う。
参考記事:「社内に面白い人がいるはずなのに、出会えない…」NEC社員が立ち上がり企業カルチャーの変革に挑む――「越境」で新たな価値を生み出すNECの今
//next.rikunabi.com/journal/20190510_c11/

キヤノン株式会社 大辻聡史さん(写真左から2番目)

入社9年目。イメージコミュニケーション事業本部所属。2016年、「キヤノンパーソンが持つ意欲やアイデアを仲間と話し、考え、試せる場をつくる」ことを目的とする有志活動『MIP(ミップ=Make It Possibleの略)』を立ち上げる。グループ会社や事業所を横断したネットワークを構築、勉強会、発表会、地域貢献活動などを行う。

東芝エネルギーシステムズ株式会社 金子将人さん(写真右から2番目)

入社6年目。事業開発部所属。2017年、有志活動『Open Roots ESS』の立ち上げに参加し、社長対話会、社内交流会、有識者を招いての講演会、他社有志団体との交流活動などを展開。
参考記事:「もう一度、誇りと働きがいを!」危機に瀕した会社を変革するため、“現場の社員”が行動を起こす 〜東芝エネルギーシステムズ株式会社 変革へのチャレンジ
//next.rikunabi.com/journal/20190114_c11/

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 森井孝則さん(写真右から1番目)

入社11年目。企画管理部門 所属。ソニーの経理やソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)にて、経理の立場からPlayStation 4の立ち上げに関わった経験を経て、新規事業創出部(SSAP)にてオーディションやワークショップの企画・運営に参画。その後、自ら事業サイドに転じてSSAPのオーディションにて優勝しプロジェクト化された子供向けトイ・プラットフォーム「toio」と、電子お薬手帳「harmo」の事業企画、ファイナンス、法務、マーケティング、法人営業を担当。そこで得た知見や人のネットワークを活かしながら、2018年、社員の新しいチャレンジの支援を目的として、厚木テクノロジーセンターに設けられたワークプレイス『コミチカ(※)』の企画・運営を手がける。
※コミチカ=食堂などがある「コミュニケーションプラザの地下」にあることに由来する愛称

<ファシリテーター>
株式会社リクルートキャリア 大橋 裕介(写真中央)

リクルートキャリアの営業マネジャーとして自動車業界・電機メーカーなど大手製造業の採用支援を行う傍ら、「ひとりひとりが自分の人生をイキイキと生きる社会づくり」を目的に個人のチャレンジ、組織の変革を応援する一般社団法人『Work Design Lab』のメンバーとしても活動。
また、リクルートグループの組織を越えた有志活動「One G-HR」の発起人でもある。


※所属企業・肩書は取材当時(2019年7月)のものです。

「越境」によって、“意思決定”の回数が格段に増えた

大橋 有志活動を通じて、そして「越境」の体験を通じて、以前とは物事の見方、捉え方が変わっているのではないかと思います。ご自身はどのように成長したと思われますか。

諸藤 「人に会いに行くこと」に対する心理的ハードルが下がりましたね。例えば、自社の役員が社内ブログに書いた内容の真意が分からなかったとします。以前の私なら、まずは部長に「これはどういうことでしょうかね」と相談したでしょうが、今なら「今からその役員の部屋へ出向いて、直接真意をたずねればいい」という発想になる。昨年から新規事業の検討も担当しているのですが、遠慮なくお客様に課題を聞きに行っています。自分の課題や疑問を解決してくれる人に会いに行くことにためらいがなくなったのは、自分にとって大きな変化だと思います。

金子 僕は、「意思決定力」が身に付きました。意思決定の回数を重ねることで、人は成長すると思うんです。大きな組織の中では、若手は意思決定の権限をなかなか持てないですよね。自分で考えて提案する機会はあっても、最終的な意思決定は上司に委ねることになりますから。その点、有志活動では、自分が意思決定する場面がすごく多い。例えば、「このイベントをやるかどうか」から、「イベントで何をやるか」「イベント中に想定外のことが起きたらどう対処するか」まで、意思決定の連続です。その積み重ねが成長につながっていると感じます。

森井 私は、越境経験によって想像力や共感力が高まったと感じています。『コミチカ』では一種の「自治」のような組織運営をしていて、企画や運営の大部分が企画メンバーに任せられています。利用動向を見ながら必要な設備の導入や材料の補充、講演会やイベントの企画など来年度の活動計画を立て、予算を組んで、実行に移していくのですが、場を利用する人たちがどんなことを考えていて、それを自分たちがどのように手助けできるだろうか、そういう共感の視点を持てるようになったと思っています。

最近では、こんな人を紹介してもらえないかとか、顧客開拓で困っているのでアドバイスを欲しい、といった相談を受けることも増えていて、以前一緒に仕事をしたつながりや、大学時代の友人のネットワークで、外部の企業や専門家を紹介したり、社内の技術シーズを他部署や社外につなげて新しい事業にしていくプロデュースなども行っています。また、相談される前から、社内のメンバーが何に困っているんだろうか、どんなサポートができるだろうかと考えて、時には先回りをして提案もしています。

ソニー社内には、『コミチカ』以外にも、ソニーシティ(本社)やソニーシティ大崎などに同様のコミュニティがあるのですが、『コミチカ』は気軽に相談しながら新しいものを作り出す場としての価値を高めていくようなことを考えています。先ほど自治といいましたが、自分たちでコミュニティを経営している感覚です。

大辻 意思決定にも通じることだけど、僕は「自分で考える力」が養われたと思います。活動を始めたきっかけは「自分が成長できているかどうかの危機感」だったわけですが、漠然と不安を抱えているのではなく、「どう動けばいいか」「どこから情報を得ればいいか」を考えられるようになった。それに、活動をしていると、あちこちから聞かれるんですよ。「どうしてやっているの?」と。だから、それに答えるためにも、自分に問い続け、考え続けなければならない。そうして思考が深まったのはいいことだと思っています。

諸藤 それが越境活動のいいところだと、私も思います。本来のミッションとは関係のない場所に行って、異分野の人たちと交わると「あなたは何ができるのか」を問われる。そこで、自分自身に向き合う。その後、自分の仕事に戻ると、「これは本当にやりたい仕事なのか」「自分の強みを活かすために、こんなことができるんじゃないか」と、さらに越境を試みて、世界が広がっていく。

森井 そういうサイクルを作り出すことが大切ですよね。

私も本業でも有志活動でもいろいろな組織にいて、置かれている環境だったり、扱っている商材だったり、周りの人の雰囲気だったりで、物事の考え方やスタイルが違うことを感じています。前にうまくいったやり方が別の組織では全然通じないということも思いのほか多いですし、失敗を繰り返しながら仮説と検証のサイクルを回す大切さを、何度も痛い思いをして学びました。でもよく考えると、小さな、失敗を許容される組織ってそう多くはないので、そういう経験を積めるのも越境のメリットだと思います。

諸藤 有志活動って、いわば「経営」なんですよね。人材や資金を調達し、それを使って価値提供し、継続させていく。経営センスを磨ける場でもあると思います。

まずは「やらなくていいこと」に、あえて手を出してみることから始めよう

大橋 皆さん、視野が広がり、視座が高まった、ということですね。では、今後はどんなチャレンジをしたいのか、どんなキャリアを歩んでいくのか、今後の目標をお聞かせください。

大辻 実のところ、自分の「成長」に対する危機感や不安は、今も消えていません。活動を通じて世界が広がる中で、すごい人たちに出会ったので、自分ももっと成長しなければ、と。

今後取り組んでいきたいことの一つとしては、会社や人のポテンシャルをもっと引き出すような働きかけです。例えば、大企業の中では、いろいろな事業部の人が別々に、同じ課題に取り組んでいて、それをお互い知らないでいたりする。同じ課題・目的を持つ人たちをつなげ、共有できるようにすれば、さらに高い成果につながると思いますから。

諸藤 私も、まだ「越境」できていない人の手助けをしていきたいと思います。私自身、人に連れられて新しい世界へ踏み出せたので、次は自分が他の人の手を引いてあげたいですね。

金子 僕は、「ゼロ」から「1」を生み出すことに取り組んでいきたいです。この有志活動で、ほぼゼロの状態から試行錯誤をしながら形にしていくプロセスを経験して、結果、会社にいいインパクトを与えられた手応えがあって、これが自分の強みだと思いました。僕のもともとのライフミッションは、「クリーンエネルギーが100%実装された社会を創る」ということ。そこに向けてのアプローチとして、今の「事業開発」というポジションで、「ゼロ」あるいは「0.1」のようなところから育てていきたいと思います。

森井 ちょっと長期的な話ですが、私は人のライフスタイルを変えるような事業を作りたいと思っています。

今年入社11年目ですが、これまで7つの商品・サービスのローンチに携わってきました。しかし、個々の商品・サービスを作ることと、ライフスタイルを変えることの間には大きな差があって、それらをどうしてもつなげられずにもどかしさを感じています。自分たちは世の中を変えるような新商品、サービスだと信じているものの必ずしも理解されるわけではなく事業からの撤退も経験しました。本当の意味でライフスタイルを変えるほどのインパクトを出すには、お客さまからの強い支持も継続的な収益も必要です。

ここ1年ほど『コミチカ』を見ているうちに、お客さまからの強い支持とコミュニティに対する熱量の間には共通するところがあるんじゃないかという発見がありました。これは思ってもみなかったことですが、この仮説が本当に正しいかどうか検証をして、また事業づくりにチャレンジしたいと思っています。

大橋 最後に、これから「越境」にチャレンジしてみたいという人に、アドバイスやメッセージがあればお願いします。

諸藤 「あなたはあなたの周りにいる5人の平均」という言葉を聞いたことがあります。自分自身を変えたかったら、周囲の5人を選ぶ必要があると思います。私がなりたいイメージから5人選ぶとすると、「挑戦している人」「楽しそうに仕事をしている人」「影響力がある人」「かっこいい人」「真面目な人」。特に「挑戦する人」でありたいと思っているので、挑戦している人がいそうな人がいるコミュニティに足を運ぶことを意識しています。皆さんも、「こういう人になりたい」というコミュニティに参加してみることから始めてみればいいと思います。

大辻 今日、皆と話していて思ったのは、「やらなくていいことに手を出してみる」というのが、越境の第一歩なんだな、と。自分には関係ないことだけど、面白そうだから手伝ってみる。そんな小さな越境が、その先につながっていくと思います。

大橋 今のお話に、全員の方が「うんうん」とうなずいていますね。「有志活動の主導者」と聞くと、もともと意識が高く、強いリーダーシップを備えた人物を想像しがちですが、皆さんのお話をお聞きしてみて、必ずしもそうではないことがわかりました(笑)。

諸藤 私は有志活動立ち上げに巻き込まれる前は、Facebookの友達なんて100人ちょいくらいでしたから(笑)。まずは誰かについていって何かのコミュニティに参加してみてください。社外の人との名刺交換、10人もしてみれば、知らない人に会うハードルがぐっと下がりますから。

森井 それ、ありますね(笑)。私も同期と勉強会をやったり、社外のMaker Faire Tokyoみたいな展示会に行ったりしていろんな人と話しているうちに、知り合った人から、逆に自分の会社のおもしろい人を紹介してもらったという経験があります。さらにそういう思いがけないつながりがきっかけで部署を異動したこともあります。

実際に足を運んでみたり体験してみたりして初めて、感じること、わかることもあるので、身近なことからでもまずチャレンジしてみることをお勧めします。

金子 自ら新しい動きを作るような人はある意味変わった人間だと思います。そういう人間に全員がなるのは難しいですし、その必要は無いです。しかしそうした異分子には理解者が必要です。僕らの活動を少しずつ広げることができたのは、尖った個人の強みを生かし、弱みを補えるチームがあったからです。若いうちから個人でバランスの良い人間になるのはとても難しいですが、チームでバランスを取ることはできます。もし周りに光る者を持つ組織のはみ出し者がいたらぜひ仲間になってあげて欲しいです。

大橋 皆さん、ありがとうございました。

「越境」することで、なぜキャリアは磨かれるのか?

大橋 今回の4人の越境経験を伺って、またリクルートキャリアや『Work Design Lab』での経験を踏まえて「なぜ、越境することでキャリアが磨かれるのか?」について、私なりにまとめたいと思います。

理由1:自ら不安を獲得しているから

成長機会に必要なものは「不安」です。不安を感じることで状況を打開するべく対応しようとします。そうして不安な状況を乗り越えることによって能力がアップしていく。これが成長です。

越境活動は、いわば不安な状況を自ら「獲得」していく行為です。これまでとは異なる環境に自らの身を置くことで不安を獲得し「何とかしよう」ともがいて変化への対応力を手に入れる。成長機会を能動的に得ることが、キャリアの磨きこみに繋がるのでしょう。

理由2:意思決定の連続だから

これも「不安」の一つではありますが、重要なので切り出して取り上げます。

金子さんも仰っていたように、越境活動(ここでは有志活動の運営)により、幾度となく意思決定をする機会に出くわし、これにより成長していきます。一つひとつの意思決定の粒感は大きくなくとも、日常業務では味わえない「自分で決めて自分で責任を取る」経験をされています。

4人それぞれの体験からも意思決定の頻度や重要性についてお分かりいただけると思います。

理由3:自分の価値観に気づくから

大辻さんや諸藤さんが仰ったように、普段関わらない職種や組織の人と「やりたい」で繋がるので「Why」を問われる機会が格段に増えます。日常業務でHowを問われることは多くても、自らのWhyを問われるシーンは少ないのではないでしょうか?多くの人とWhyを対話する中で、自分の価値観と相手の価値観が異なる事に気づいていきます。自分らしさとは何か?が明確になる事は、キャリア磨きのど真ん中とも言えます。

越境活動と聞くと、「なかなか自分にはできない」と感じる方も多いと思います。しかし、座談会で登場した4人も、最初から「越境活動するぞ、有志活動するぞ」と前のめりだったわけではありません。危機感に後押しされて、巻き込まれて、自分を必要としてくれて…。そんな動機により、本来は「やらなくてもいいこと」を少しだけやってみることからスタートしていました。

この小さな1歩が、今後のキャリアを磨く一つの方法になるということをぜひ知っていただければと思います。

WRITING 青木典子 PHOTO 平山 諭


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