仕事が終わってからも、家事に育児にと時間に追われ、気づくと寝落ちの日々…。家事も育児も積極的に行う男性も増えてきたとはいえ、「家庭のことは女性」という認識はまだ根深く、共働き妻の悩みは尽きません。そんな女性たちを応援するこの連載。女性のキャリア支援や結婚コンサルタントまで幅広く活躍中の川崎貴子さんから、家族を「チーム」としてとらえ、より効率的に日々を運営していくアドバイスをいただきます。

今回は「これから産休取得予定。スムーズに職場復帰をするために、産休中に何をしておけばいいのでしょうか」というお悩みについて、後悔しない産休・育休の過ごし方について育児の先輩でもある川崎さんのお話をおうかがいしました。

産休中の女性

職場復帰する女性が増えつつある現状、とはいえ…

私が第一子を出産した15年位前、結婚や出産で離職する女性は全体の8割と言われておりました。
会社を一度辞めて家事育児に専念する人、「主婦業&パートで働く」を選択する人が主流で、「キャリアアップは子育てが落ち着いてから」「理想の仕事は自宅でできる料理研究家」と語るママたちが多かったと記憶しております。料理研究家は当時の栗原はるみさんの影響も大きかったと思いますが、何はともあれ、小さい子どもを育てながら働ける環境は今に比べてずっと少なかったのです。

時を経て2016年には女性活躍推進法の施行、2017年にはマタニティーハラスメント防止措置が義務化され、子育てしながら女性が働く環境は、未だ多くの問題を残しながらも前進してゆきます。
また、経済状況からも「共働きの方が安心」「共働きじゃないと厳しい」と感じる夫婦が増え、全体の6割が共働き世帯となりました。

そのような社会や企業、夫婦の価値観の変化により、女性の育児休業取得率は82%(「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」/厚生労働省調べ)までになるのですが、未だに働く女性の46.9%が第一子出産後に離職しているというデータ(「第15回出生動向基本調査」(2016年)/厚生労働省調べ)もあり、
「産む前は復帰するつもりだった女性が、出産後復帰できなくなった」というケースが多い事も浮き彫りになるのでした。

復帰に向けてのサバイバル術〜「不安」要素はこうして対策すべし

希望していた職場復帰を阻むもの…。
多くの産前産後の女性たちから聞いた生の声を集約すると、多くの要因は実は女性たちの「不安」からくるものでした。

「復帰しても浦島太郎状態になっているのではないか…。時短で帰ることになると人間関係も不安」
「こんなに何にもできない子を残して働くのが不安」
「家事育児と仕事の両立ができるのか、夫がどこまで協力してくれるのか不安」

ただでさえ、産後はホルモンバランスが崩れ、睡眠不足も重なります。あちこちから押し寄せる「不安」から身を守る術がなければ、心が折れるのも当然です。
おまけに上記の育児休業取得率は男性の実績が同年で6.1%。夫婦二人で分担して乗り切れる!と楽観視できない現状なのであります。

何事もサバイブするには事前準備がマスト。
スムーズな職場復帰を果たすために、産休育休中に何をしておいたらいいのかを紹介します。

仕事への不安には…「筋トレ」しつつ仕事アンテナを立てておく
1)家事育児以外でやることを決め、復帰用の「筋トレ」をしておく

日頃読めなかった本を読んで新たな知識を身につけたり、資格を取ったり、家事育児以外の軸を持っておくことで、復帰して働く時のための「筋トレ」になります。産後にまともに仕事ができるのかどうか…といった不安も解消されるでしょう。

2)会社の動きに関する情報収集を怠らない

会社に対してご自身の現状を連絡する事も必要ですが、業界動向や会社の変化をできるだけリアルタイムで捉えられるように、ニュースやSNSなどチェックいたしましょう。迷惑にならない程度に同僚から聞いたり、出歩けるようになったらランチに行ったり、自宅にお招きしたり。職場とのつながりを持ち続ける事が浦島太郎にならずに、人間関係を良好に保つ秘訣です。

子どもの不安には…育児方針と保育環境を考えておく
1)育児書を選別して読み、育児方針を固めておく

昔の常識は今の非常識。「子どもを保育園に入れると悪い子になる」とか「3歳までは母親が家庭で育てるべし」など、子育てほど「謎理論」がのさばる世界を私は他に知りません。時間があるからといって、片っ端から育児書を読んでしまうと方針がブレます。ご自身が憧れている現役ママたちが勧める本や、「いいね!」している記事を中心に読むなど、情報を見極めて選んでいく力を産休育休中に養いましょう。

2)復帰を念頭に、預け先を複数確保しておく

保育園、病児保育、単発でお願いできるベビーシッター、私立、認可、認証問わず調べて確保しておきましょう。実家や義実家も、近くても遠くても「いざという時には助けて欲しい」とお願いしておくと心の平穏が保たれます。子どもの入園当初は急な発熱や病気などで園からの呼び出しがどうしても多くなりがちです。複数のセーフティネット(頼れる先)を持っておくことをお勧めいたします。

家庭の不安には…夫婦で「先を見越した共通認識」を持つことが大切
1)夫婦で「将来のビジョン」をすり合わせる

結婚時もそうですが、子どもを授かったタイミングこそ、夫と将来のビジョンをすり合わせるチャンスでもあります。持ち家にするのか?子どもの人数は?子どもの教育費にいくらかけるのか?何歳まで働くのか?などなど、日頃話さない将来の話を現実問題として話し合ってビジョンをすり合わせていきましょう。
保険の見直しをするのもお勧めです。プロに話を聞きながら、これからの家族計画を練り、夫婦で共有しておきましょう。お金の話はリアルです。妻が職場復帰する事が家族にとってのアドバンテージであるということが夫にも伝われば、そのためにどう協力しあうのが良いのか、具体的な話もスムーズにできるでしょう。

2)産休中に「にわか専業主婦」になってはならぬ

夫が例え育休を取れなくても、帰宅後や休日を利用して育児参加、家事分担は可能です。「私は今、産休育休中だから」と家事育児の何もかもをやってしまうと、「専業主婦の奥さんがいる状態」に夫が慣れてしまい、妻の職場復帰後は揉め事必須になることが多いのです。
妻も母になるように、夫も同時期に「父」になれるよう、産休育休中にも分担し二人で協力し合って「妻職場復帰の覚悟」を固めてゆきましょう。

仕事と家庭の両立は大変だが、思わぬギフトも

なんて偉そうに「産休育休中の事前準備」を羅列してみましたが、上記は私の経験ではなく、私の周囲の賢いワーキングマザーたちが実践していた事で、後に「私もそうすべきだった!」と地団太踏んだ件を選んで紹介してみました。

私が長女出産時、当時から独立して仕事をしていたので産休制度というものはなく、自分で育休3週間と決めました。3週間だけなので、とにかく自分の体を休める事と授乳する事に専念しようとしていたのですが、ほぼ寝たきりの日々に3日で飽き、ベッドの上で人生初のデイトレーダーになっていました。(60万円程儲かりました)
でも、それは、長女がとにかく手がかからなかったから、というひと言につきます。
次女は同じく丈夫でしたが長女より繊細なタイプだったため、夫が半年間張り付いて育児を頑張っていました。
職場復帰は仕事と慣れない育児で手いっぱいになることもありましたが、良かった点としては、仕事が育児のストレス解消になり、育児が仕事のストレス解消に変化したということでした。育児で何か気になることがあれば保育士さんというプロの意見を聞いたり、仕事では他の人に任せてみたりと、多くの人の手を借りながらではありますが、そのことで仕事のスキルが子育てに生き、子育ての経験が仕事に生きた事もたくさんありました。両方経験できる事に「これはなんのギフトなのか」と、毎日スキップして帰宅していたものです。

上記は私のケースであって、赤ちゃんのタイプによっても育児の大変さはだいぶ違うので、一律に「こうすべき!」とは言えません。もし、赤ちゃんが病気にかかりやすかったり、泣き止まなかったりという個性を持っていたら、「職場復帰はマスト」なんて容易に言えないからです。

家庭ごとに優先順位はあれど、「やってみて無理だったら軌道修正すれば良い」事はたくさんあります。何よりも、ママたちのこうしたチャレンジ精神が、多くの知識と助けの手を呼び、イキイキと人生を歩めること、そのことが家庭をも照らすのだと私は思っています。
将来に向け一時の不安に負けない、充実した産休育休を過ごしてもらえたらと願います。

プロフィール
川崎 貴子

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リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。


イラスト:かしえみ