普通解雇

申出の概要

 申出人X(労働者)は、医療法人Yにおいて受付業務に従事していたが、来客者に対して不適切な対応を行ったことを理由に、YはXに対し、Xの同意を得ずに関連の清掃業を営む株式会社Aに転籍出向するように命じた。出向先は清掃業で、全く業種が異なり、労働条件も下がるので出向命令には同意できないため、出向命令を取り消すよう労働局長の助言・指導を求めた。

紛争の背景

1.申出人Xは契約期限の定めのない正社員として採用され、病院の受付業務に従事していた。
2.Aでの勤務条件は、1年の契約期限の社員であり、賃金はYよりも低く、従事する勤務は病院の清掃であった。
3.Yの就業規則には出向に関する規定はなかった。
4.医療法人設立から○○年経過している。

紛争当事者の主張

申出人X(労働者)

 Yの理事が懇意にしている来所者に対する応対のことで理事から注意を受けたことがあるが、普段の仕事はきちんとやっている。Yから注意を受けたことはない。

 Aに転籍だと言われたが、業種が今と全く違うし賃金も下がるので到底受け入れられない。

被申出人Y(事業主)

 Xは、普段から接遇が悪く、また、医療の知識もないのにいろいろと医療のことで患者に話をしており、患者から苦情が寄せられていた。しかし、これまで注意したことはない。

 直接出向を決意したのは、Xがある来所者に対して医師の判断を得るべき医療上のことを話したことによる。

 就業規則には出向に関する規定はない。これまで関連会社に出向させた者はいない。

 病院の信用にもかかわるので解雇も考えたが、それもXに対してひどすぎると思い、出向させようと思った。

助言・指導の内容

 被申出人Yは、医療法人設立以来○○年経過するが、これまで出向させた実績はなく、また、出向に関して就業規則に規定はなく、かつ、本人の同意を得ていないことから当該出向命令は無効となるおそれがあるので、当該出向命令を取り消すこと。

結果

 指導の結果、被申出人Yは申出人Xの出向命令を取り消し、Xは受付業務を続けることになった。また、Xは本件をきっかけとして非難を受けていることについて耳を傾け、自分の業務態度について改めることをYに約した。

参考裁判例

JR東海事件(大阪地裁平成6年8月10日判決)
新日本製鐵事件(福岡高裁平成12年2月16日判決)
相模ハム事件(大阪地裁平成9年6月5日判決)
川崎製鉄事件(大阪高裁平成12年7月27日判決)


1.就業規則に出向について明確な定めがあるか。
 就業規則には出向に関する定めは規定されていないこと。
2.出向が通常の人事手段となっているか。
 就業規則に規定する必要がないほど出向はこれまでなされていないこと。
3.業務上出向させる必要性があったか、または正当な動機・目的をもってなされたか。
 申出人Xの業務態度について悪評を聞いていながら、これまで事実関係を調査することも注意もしてこなかったこと。
 清掃業という受付業務とは全く業務内容が違う業務に就かせること。
4.本人の同意を得ているか。
 本人の同意は得ていないこと。


※この記事は弊社刊「都道府県労働局による 助言・指導 あっせん好事例集―職場のトラブルはどう解決されたのか」(平成24年3月30日発行)から一部抜粋したものです。