スポーツで成功する人が持つ気質は目標魔、実践魔、貫徹魔の三つという話を聞いたことがある。スポーツに限らず目標と実行力は成功の鍵だが、この人はこれに加え「対応力」を備えている◆日米通算200勝を達成した米大リーグ・パドレスのダルビッシュ有投手である。日本ハムから大リーグに移って13年目の37歳。その右腕は衰えを見せるどころか、ますます進化している◆武器である直球の切れが悪い時は、その日に調子がいい変化球を中心に組み立てる。その日その日だけでなく、一年一年、自分とチームメートの状況、他球団や球界の動向にも目を配り、変化に対応してきた。その対応力こそがトップレベルで活躍できた要因だろう◆何かを成し遂げるにはまず、自分の「現在地」を知ることが大切とされる。自分の成長度に応じて目標を設定し直すべきという教え。ダルビッシュ投手は「己を知る」という点でも秀でている◆団体競技では、個人の活躍が必ずしもチームの勝利に結びつくとは限らない。だが、野球はやはり、投手の出来が勝敗を大きく左右する。200勝の全てを先発でものにしたのは日本人選手ではダルビッシュ投手が初めて。本人にとっては通過点かもしれないが、大リーグで積み重ねた107の白星は日本の93勝を上回る。やはり偉業である。おめでとう。(義)