危険性が高いとして、県が早急な伐採を求めている13本のうちの1本=唐津市の虹の松原

 唐津市の虹の松原を通る県道で死亡事故が起きてから、今月20日で半年がたつ。事故を機に、保全と安全をどう両立させるかの議論が今も続く中、県は市に13本の早急な伐採を求める。市は17日に方針を協議するが、市民の中には伐採を望まない声もある。松原保全の今後の在り方が問われている。

 虹の松原は国有林で、景観の保全は市と佐賀県が担ってきた。松原内を走る県道の安全管理は、県唐津土木事務所が所管している。国の特別名勝に指定されており、伐採には文化財保護法に基づいて市の許可を得る必要がある。

 事故が起きたのは昨年7月20日の夜。折れたマツが通行中だった軽乗用車と衝突し小学生男児が亡くなった。その後の県の調べでは、マツに空洞があったことが分かっている。雨を含んで木の上部が重くなり、風で負荷がかかったことなどが折れた要因とみられる。

 ◆緊急伐採29本

 事態を重くみた市や県は、事故直後に合同点検。手続きを踏んで29本を伐採した。病害虫被害の有無は確認せず、事故同様に路面に覆いかぶさるように生えたマツを除伐した。

 その後、県は通行の妨げになるとして、追加で254本(実数253本)の伐採申請を提出。市民に波紋を広げた。峰達郎市長は29本の伐採は「事故と同じように生えたマツを切るのは仕方なかった」との認識を示しながら、追加申請には「そんなに必要なのかと複雑な思いがあった」と話した。

 県が伐採申請した本数は最終的に327本に膨らんだ。中でも病害虫の被害があった13本の早急な伐採を求めている。県は「保全と安全の両方から検討した」と説明する。

 一連の対応に疑問を抱く人もいる。沿道で飲食店を営む男性は「そもそも29本の伐採は必要だったのか」と話す。今も伐採を巡る議論が続いているだけに「地域が守ってきた宝を切らずに済む方法はなかったか」と考えずにいられない。

 ◆点検体制を強化

 市は17日に会議を開き、伐採の可否などを話し合う。昨年開いた民間も交えた市の協議会ではマツを治療する案や、街灯を置いて県道の見通しをよくする案など伐採以外の対策も上がった。こうした意見を市がどこまで考慮するか、注目が集まる。

 仮に市が13本の伐採を受け入れても課題は残る。県が問題視する残り314本の管理だ。県は経過観察する方針で、既にマツの変化を確認する車からの目視点検を週2回から毎日の実施に改めるなどチェック体制を強化している。

 市幹部は「地域住民の安全というベースをまず確保した上で、景観も守る方策を探っていきたい」と話した。

 

【三保松原では】

 富士山と織りなす絶景で知られ、虹の松原と同じ日本三大松原に数えられる静岡市の「三保松原(みほのまつばら)」では、景観と安全をどう両立させているのか。

 同市は観光客の多い市有林に限り、枝同士をワイヤーで結んだり、曲がったマツを柱で支えたりしている。また倒れても周囲への被害が低減されるように上部を切って、高さを調節する対策も取る。

 倒れる危険性があるマツの伐採に当たっては、危険度を判定するための手引書を作成している。一方、虹の松原の県道を管理する唐津土木事務所は危険度を判定するガイドラインを持っていない。

 静岡市の三保松原文化創造センターの担当者は「幸い倒木によるけが人は今のところいないが、住民の生活を危険にさらさないためにも対策は必要」と話す。