館内に40カ所ある企画展示コーナー。司書がテーマを設定し、本を手に取ってもらう工夫をしている=伊万里市民図書館

 伊万里市民図書館が7日で開館25周年を迎えた。設立準備の段階から市民と一緒に理想の図書館づくりを進め、今では地域に欠かせない知の拠点に成長した。本離れや市の財政難など厳しい状況の中でも、より良い図書館像を求めて歩みを続ける。

 開館は1995年7月7日。その10年前に市民から新しい図書館を望む声が上がり、住民運動となって行政を動かした。建物の設計にも市民の意見を取り入れ、市民の名を冠した図書館が生まれた。開館後も多数のボランティアがイベントの企画運営や環境美化などで運営を手伝っている。

 市民の熱意に応えるように、司書ら職員も個々の能力向上に努めてきた。館内には本の企画展示コーナーが40カ所もあり、時宜にかなった展示を行っている。レファレンス(調査相談)サービスにも力を入れ、議員の調査活動や子どもの自由研究まで幅広い層に活用されている。

 「すべての市民の知的自由を確保し、文化的かつ民主的な地方自治の発展を促す−」。館内に掲げられた市民図書館設置条例第1条だ。その高い志は、新型コロナウイルス対策で県内の公立図書館が全て休館する中、唯一貸し出し業務を続けたことからも見て取れる。

 市民と連携した運営の在り方は図書館関係者に注目され、今も全国から視察が絶えない。ただ一方で、図書館を訪れる市民の数は年々減少していることが、懸念材料となっている。

 年間貸し出し点数は最も多い98年度に55万冊あったが、昨年度は42万冊まで減った。本を良く読む人とほとんど読まない人の二極化が進み、読まない人が増えているという。

 もう一つ気掛かりなのは資料購入費の減少だ。市民1人当たりの年間資料費は開館から10年ほどは500円前後だったが、ここ数年は300円前後になっている。市の財政が苦しい中、資料の充実をどう図り、利用者を増やしていくか、課題となる。

 鴻上哲也館長(61)は「市民の図書館に対する熱い思いはレガシー(遺産)として大事にしたいが、世代が変われば風化するのは避けられない。今後も幅広い市民に利用してもらうため、若い世代や本を読まない人を引きつける仕掛けを考えていきたい」と話す。