動作の一つひとつが遅くなったり、人の名前を思い出せなくなったりと、人間は年をとると共にあらゆる機能に衰えが見えるようになります。しかし、一連の症状が年相応な衰えによるものなのか、それとも認知症を発症しているのか。そのどちらかで今後の対応は大きく変わってきます。

基本的に認知症は完全な治療法がありません。そのまま放置してしまうと、コミュニケーションを取ることが難しくなり、徘徊や暴力といった危険行為にまで発展する恐れがあります。

一方で、完治が困難ではあるものの、早期に認知症を発見し適切な処置をすることで認知症の進行を大きく遅らせることが可能です。今回は、認知症と疑わしい初期症状の特徴を取り上げるとともに、認知症の判定方法などについてもご紹介します。

認知症と似ているようで異なる?「物忘れ」や「軽度認知障害」

シニア世代の人ならば誰しもが敏感なテーマとなってきています。それゆえ日常生活の中で起こる「財布をしまった場所が思い出せない」「テレビに出ているタレントの名前が出てこない」といった「物忘れ」をした場合に、もしかしたら自分が認知症の初期症状では? と疑心暗鬼になる人もいるのではないでしょうか。

こういった物忘れは年齢を重ねてくれば誰しもに現れる現象ですので、心配する必要はありません。しかし、過去に体験した内容の一部分が思い出せないのではなく体験したこと自体を忘れてしまう場合や、現在進行形でおこなっている動作の目的そのものを思い出せなくなるようでは、認知症の予兆と言えます。

例えば......

夕食に何を食べたのかを思い出せない→物忘れ
食事した事実を思い出せない→認知症

買い物に出かけ、何を買うのかを忘れる→物忘れ
買い物に出かけ、途中で外出した理由を忘れる、また自分の居場所がわからなくなる→認知症

また物忘れが進んだ状態の「軽度認知障害(MCI)」に該当する高齢者も増えています。厚生労働省によると、軽度認知障害に該当する65歳以上の高齢者は400万人いると言われており、高齢者のうち約4人に1人がこの"認知症予備軍"に該当する計算になります。軽度認知障害を放置しておくと、将来的に症状が悪化する可能性が非常に高く、軽度認知障害と診断された高齢者のうち、約半分が認知症にエスカレートすると言われています。

こんな場合は要注意!代表的な認知症の初期症状

認知症の早期発見には、周囲、特に家族の"気づき"がもっとも重要です。以下のような行動や言動が見られる場合は要注意です。

同じことを何度も繰り返し言う
脳の機能が衰えてくると、直前に起こったことや話した内容の記憶が難しくなり、同じ内容の発言を繰り返すようになります。独り言のようにつぶやくだけならまだよいかもしれませんが、「外の天気は雨かい?」「今日は仕事休みなのかい?」などと質問を繰り返すようにもなります。

食事したことを忘れる
認知症の人によく見られるのが、食事したことを忘れて「ご飯はまだ?」と聞いてくることです。「さっき食べたでしょ」と返答して納得してもらえるならばよいのですが、本人がどうしても腑に落ちない様子を見せるようであれば注意してみましょう。

感情の起伏が激しくなる
突然急に怒り出したり、逆に塞ぎ込んだりと感情の起伏が激しくなることがあります。例えば、今まで熱心に打ち込んでいた趣味に対して、急に無関心になるなどの兆候が見られる場合は注意が必要です。

外出しても自力で帰宅できない
散歩や買い物などで外出しても、自宅の場所が思い出せなくなり帰宅できなくなる場合、認知症を発症している確率が高いと言えます。このように日付、時間、場所などが認知できなくなる症状を「見当識障害」と呼びます

作業を完遂せず、やりかけのまま忘れてしまう
何かひとつの作業に没頭していても、別のことに関心が移ればやりかけのまま別の行動に移ってしまうなどが多い場合も認知症の疑いがあります。

部屋を散らかす
認知症が進行し記憶力が著しく低下すると、物をしまった場所が思い出せなくなります。そのため一度探し物を始めると、タンスの棚から押入れの中まで部屋の隅から隅までを探すようになります。探し物を見つけ出すまでは不安な気持ちでいるため、散らかした物を元に戻す、片づけるといった余裕はありません。