お金に関する問題は生涯つきまとうものですが、収入が激減する定年退職後はその心配もより大きなものになるはずです。事実、多くの高齢者が頼れる当てもなく生活保護を受給しています。生活できなくなるほど追いつめられる原因は何か? どう対策すれば経済的な危機を回避できるのか? 日本が抱える社会問題の実情と照らし合わせながら探っていきたいと思います。

定年後に私たちにのしかかる老後破産

通常、65歳で定年を迎えたあとは、年金(厚生年金または国民年金)が主な収入源となります。株式や不動産といった資産を所有している人以外、この年金を頼りに生きていくことになりますが、年金の減額や打ち切りによって生活ができなくなってしまう状態を「老後破産」と言います。

老後に備えて貯蓄している人も多く見られますが、預貯金はいずれ底を尽きます。長生きするほど問題は深刻になるばかりで、生活していけるだけの定期的な収入の確保は、今の高齢者だけでなく、若い世代にとっても避けて通れない重要な社会問題と言えます。

老後破産が生じる主な原因

なぜ老後破産が起きるのでしょうか? さまざまなケースが考えられますが、以下代表的な例を取り上げていきます。

年金支給額の減少
老後破産の最たる原因が年金支給額の先細りです。日本の年金制度は積み立て方式ではなく、当代の高齢者を現役世代が支払う年金で支える賦課(ふか)方式を採用しています。少子高齢化が進む現在、年金を納める現役世代が減る一方、受け取る高齢者が増え続けているため、国民に支払われる支給額は年々減りつつあるのです。加えて消費税も段階的に引き上げられているため、生活は苦しくなる一方です。配偶者が死別した場合も年金支給額が減らされるため、今までどおりの生活レベルの維持は難しくなります。

医療費と介護費の増加
高齢になるほど医療や介護に対する支出は増えていきます。高齢者の医療費負担は原則1〜2割と現役世代よりも軽減されているものの、病院にかかる頻度が増えれば当然支出も多くなります。生活困窮者の中には、医療費を切り詰めるため病院へ行くのを我慢してしまう人も見られますが、体に無理が生じた結果、病気がより深刻になりかえって医療費がかさんでしまうことも考えられます。

若いときと同じ感覚で散財してしまう
収入が少なくなれば、同時に節約を心がけるようにするのが理想的です。ところが、若いときの贅沢な生活レベルに慣れてしまい、家計を無視して散財し続けた結果、気づいたときには破産していたというケースも考えられます。今後しばらくすれば、バブル期に現役だった世代が定年退職する時期に入ります。現在の収入に見合った質素な生活を心がけなければ、老後破産する人はさらに増えることでしょう。

晩婚化と子どもの養育費
結婚と出産の時期が高齢化しています。定年を迎えるころに子どもがまだ高校生、大学生という家庭も珍しくありません。収入が激減する時期に学費など子どもにかかる費用がかさめば生活は厳しくなります。さらには、子どもが親から独立せずに家に居続けるパラサイトも老後破産に拍車をかける原因にもなります。

住宅ローンの長期化
マイホームは一生に一度の大きな買い物です。定年を迎えるまでに住宅ローンを払い終えたいところですが、収入減にもかかわらずローンを完済していない家庭も目立ちます。金利変動がない代わりに支払い期間が長期にわたる住宅ローンプランが一時期注目を集めましたが、返済期間の長期化によって破産することもあり得る話です。

いずれのケースでも、一夜にして財産が奪われるようなことは決してなく、長い時間をかけて徐々に私たちの生活を苦しめていきます。それだけに自分たちが置かれている危機的な立場に気づきにくいのかもしれません。