家族介護の大変さについては当コラムでもたびたび取り上げてきました。しかし家庭を守る人は、育児や家事も並行しなければなりません。介護と育児が同時期に発生する状態を「ダブルケア」と言いますが、その大変さは近い将来の社会問題として考えられています。負担を一人で抱え込まないために、今からできる対策はあるのでしょうか?

晩婚、高齢出産が増え、介護と育児のタイミングが重なる

介護と育児を同時並行でおこなう「ダブルケア」は、近い将来、その担い手に大きな負担がのしかかるとして、社会問題になると推測されています。

女性が20代前半〜中半で出産した場合、その子どもが義務教育を終えるころには、親の世代がおおむね前期高齢者(65歳)に達する時期に当たります。子どもに手がかからなくなったタイミングで介護を始めることができるため、時間的な余裕もあります。しかし、女性の社会進出とともに、女性の晩婚化および高齢出産が目立つようになり、家庭によっては子育てが終わらないタイミングで親の介護が始まるケースも考えられるようになりました。

2016年に内閣府が発表した調査データによると、ダブルケアを実践している人は25万3千人に達しています。年代で見ると、やはり30〜40代が多く、全体の約80%を占めています。男女別では、女性が16万8千人、男性が8万5千人と女性が男性の約2倍を占めています。就業している・いないにかかわらず、介護・育児ともに女性の負担が大きいことがわかります。

団塊の世代とその子どもたちにのしかかる負担

全国の大学生以下の子どもを持つ30〜55歳の男女1万7,049名にアンケートを取ったところ、「現在ダブルケアに直面中」が12.3%、「過去にダブルケアを経験」が12.8%、「現在直面中で、過去にも経験がある」が4.0%で、ダブルケアを一度でも経験したことがある人は29.1%に達することがわかりました。

同時に、ダブルケア未経験者の中から「将来的にダブルケアに直面する」と回答した人も合わせると、およそ36.6%の人がダブルケアを危惧していることになります。

2025年には、第1次ベビーブームのときに生まれた「団塊の世代」の全員が後期高齢者(75歳以上)に達します。現在の40代の多くは、彼らの子どもの世代、いわゆる「団塊ジュニア」に該当します。ダブルケアはこの団塊ジュニアの負担をさらに増大させると考えられ、介護および被介護の当事者となる人口も多くなることから、若い人たちの間でも、もはや他人事とは言えない問題と認知されています。

ダブルケアを招く悪条件とは

実際にダブルケアが始まるとどのような問題点が浮き彫りとなるのでしょうか?

●主婦に対する負担増

上記の調査結果からもわかるように、主に家庭を守る女性への負担が大きくなります。女性の社会進出が一般的になったとは言え、出産を機に退職して専業主婦になる人も多くいます。夫(男性)の無関心も手伝って、女性がダブルケアの問題を一人で抱え込んでしまいがちになります。

●少子化でケアの負担を分散できない

少子化により、子どもがいないまたは一人っ子の家庭もめずらしくありません。きょうだいのいない家庭では、唯一の子どもがダブルケアにあたる上、両親とも要介護になった場合、最悪、父、母、子と3人分の面倒を一人で見なくてはなりません。この状態をトリプルケアと言います。

●離職

ダブルケアの負担増で仕事を辞めなくてはいけなくなる可能性もあります。現在、夫婦共働きでやっと生活レベルを維持できる世帯もめずらしくありません。介護や進学で出費がかさむことから、夫婦片方が仕事を辞めた場合の経済的負担も考えなくてはなりません。

●社会からの孤立

介護と育児に時間を割かれ、その上仕事を辞めた場合、家庭で過ごす時間が増えて従来の人付き合いができなくなります。誰かに愚痴をこぼしたり、悩みを打ち明けたりすることで気分が晴れることもありますが、そういった機会さえ失われてしまうのです。

●心理的ダメージ

上記の悪条件が重なった場合、気分の落ち込みから育児ノイローゼ、介護うつなどに見舞われる可能性があります。また、極度のストレスから両親や子どもに対して暴力を振るうケースも考えられます。