安全で安い料理、44年間提供 熊谷市庁舎の市民食堂、31日閉店

安全で安い料理、44年間提供 熊谷市庁舎の市民食堂、31日閉店

 熊谷市役所内で44年にわたって営業してきた「市民食堂」が31日、閉店する。現在の市庁舎が完成した1973年に開業し、関東平野を望める8階で、職員や来庁者に定食や麺類などを提供してきた。同食堂を運営する「鮨商」の早川清治社長(82)は「自分の体のこともあって決断した。今はさっぱりした気持ち。長年お世話になりました」と感謝の言葉を口にした。
 「いらっしゃいませ」。食堂入り口付近の食券売り場にスーツ姿の早川さんが立っていた。2015年8月、突然の病に倒れ、数日意識を失ったが、奇跡的に大事には至らなかった。「リハビリを兼ねて出てみたら」と妻(77)の勧めもあり、食堂に復帰した。「お客さんに失礼がないように」と1年中ネクタイを欠かさない。
 元々すし職人だった早川さん。1988年に義父の後を鮨商の2代目を継ぐと、白衣姿で厨房(ちゅうぼう)に立って調理に当たった。野菜やコメ、小麦などの食材は主に市内の顔見知りから仕入れたもの。今は妻ら4人の女性が厨房を切り盛りする。
 「安全で安くて温かい料理を出すのが市民食堂の存在意義」と早川さんは言う。価格帯は300〜500円台が中心。値上げは一律20円上乗せした2年前の一度きり。価格改定に伴い、長女と孫が厚紙を使い食券を作った。
 30年近く通った市庁舎の8階。病に倒れてからは、タクシーか孫の送迎で市内見晴町の自宅から通う。「以前はここから荒川の土手の桜が見えてね。今ほど高い建物がなかったから」と懐かしそうに語る。男体山や赤城山などが見渡せる食堂から紅葉や雪化粧など、季節の移ろいを感じてきた。
 客の「おいしかったよ」という一言が励みだった。市職員をはじめ、サラリーマンや単身者など顔なじみも多かったという。「今後はのんびり過ごそうと思っている。これだけ続けられたのだから。82歳だし『嫌(いや)に』なっちゃった。語呂もいいでしょ」と自分に言い聞かせるようにほほ笑んだ。
 市庶務課によると、新規出店の募集を既に終え、プレゼンテーションを経て、6月1日までにこの場所で新たな業者が営業を始める予定という。

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