昭和の面影を残す蒲田のアーケード商店街で、40余年の歴史をもつ昭和の純喫茶。創業以来続くサイフォンコーヒーの味を、現在は若き2代目店主が伝えている。

時がゆっくりと流れる昭和レトロ喫茶

ガラス窓がある商店街側は1〜2人用席、奥がグループ席。店内は喫煙可というのも昭和の喫茶店らしい。

『テラス・ドルチェ』が蒲田駅西口商店街サンロード内にオープンしたのは昭和53年(1978)のこと。数年前まで初代の小野田郁夫さんが切り盛りしていたが、現在は、2代目となる息子の小野田真識(まさのり)さんが父譲りのサイフォンコーヒーを淹れている。DOLCE(ドルチェ)は、イタリア語で甘い、やさしいなどの意味をもつ。この店ではやさしい時間を過ごせそうだ。

店内の右側に4席ほどのカウンター席があり、厨房側にいくつものサイフォンが並んでいる。注文が入るたびにアルコールランプに火がつけられ、やがてコーヒーの雫がフラスコに落ちていく。カウンターに席を取り、こんな風景をぼんやり眺めて時を過ごすのもいいかもしれない。

左側はテーブル席で、相席用の大テーブルのほか、2席4卓、4席4卓のテーブル席が備えられている。よく見れば壁には逆回りに進む大きな掛け時計がある。時間を気にせず、ゆっくり過ごしてほしいという店からのメッセージか。昔ながらのレトロな雰囲気が漂い、妙に落ち着いた、居心地のよさを感じる空間だ。客の大半は近所の常連さんのようで、一人客が多いのも特徴。

2代目店主の小野田真識さん。「父の作った店を大切に守っていきたい」と話す。

創業以来のサイフォンコーヒー。アイスコ−ヒーもサイフォンで……

注文を受けるたびにアルコールランプに火を灯し、ろうとにコーヒーを入れ、1杯ずつ作っていく。

近年、サイフォンで淹れる店は少なくなったが、この店では創業以来サイフォンコーヒーを守り続けている。「サイフォンで淹れたコーヒーは、ゆっくり抽出するので香りがいいんです」と店主の小野田さんが話してくれた。

テーブルでカップに注がれるブレンド珈琲500円。ジャンボアイスコーヒーは750円。

この店ではアイスコーヒーもサイフォンで淹れる。濃いめに淹れたコーヒーと、クラッシュした氷が入ったグラスをテーブルまで運び、客の目の前でグラスに注ぐ。瞬間的に冷やすことで、味と香りが際立つのだという。これも初代店主が考案した創業以来の人気メニューだ。

セットにできるフードメニューも充実

シフォンケーキ650円。ブレンド珈琲とセットにすれば900円。つまりコーヒーを250円で飲めることになる。

フードメニューが多いのも純喫茶の特徴の一つ。メニューを開けば、ケーキ、パフェ、パンケーキ、ピラフ、スパゲティ、カレーなどに分かれ、それぞれに数種類が用意されている。選ぶのに迷ってしまいそうだ。いずれもドリンクとセットにすれば割安になる。

ケーキは自家製というので、どこかで修業したのか尋ねてみたら「独学です」との答え。それにしては種類も多く、味も本格派。かなりの努力家なのだろう。

ライブチャージは2000〜2800円、店内前売りチケット制。1回40分で2ステージ。

この店では、月に1回、水曜または土曜の夜にジャズライブを行っている。親交のあるミュージシャンのつながりで、プロ・アマ、さまざまなミュージシャンが来演するという。

レトロな店内に流れるジャズの調べ。蒲田はやはり大人の街だ。

テラス・ドルチェ(てらす・どるちぇ)
住所:東京都大田区西蒲田7-64-2/営業時間:10:00〜20:00/定休日:無/アクセス:JR・私鉄蒲田駅から徒歩4分

取材・文・撮影=塙 広明