街に1軒、本屋があるといい。店はその街の雰囲気を感じ取って、人が集いコミュニティができる。1軒できると、不思議と集まってくる。本屋が増える。なぜか品揃えはかぶらない。そんな発展途中の本の街、本所・向島エリアの本屋を紹介する。 向島といえば、幸田露伴、森鷗外、堀辰雄といった文豪たちの住居跡や碑が残る地。本との親和性はもちろん高い。細道には古い建物や小さな商店が残る下町で、川を渡れば浅草。観光地のなかにもブックスポットは数多い。

YATO [新刊・古書]

漫画から哲学まで良い本を長く置く

新刊が8割を占める店内。2019年1月にオープンした。
新刊が8割を占める店内。2019年1月にオープンした。

扉を開けて細長い店内に入っていくと、両脇に本が並び、奥に新刊がぎっしり置かれた平台がある。選書はまったく苦にならないという店主の佐々木友紀さん曰く「よい本だなと思ったら、なるべく長く置きたいんです。たとえ雑誌でも」。硬軟とり混ぜた品揃えで、その並びは一見、ジャンル分けなどの規則性がないように思える。だがそれが、脳を適度にもまれて心地よい。時を忘れる店である。

「大学のころから、新刊の書評を読むのが趣味なんです」という店主。
「大学のころから、新刊の書評を読むのが趣味なんです」という店主。
店内でコーヒー500円がいただける。豆の種類も豊富にある。
店内でコーヒー500円がいただける。豆の種類も豊富にある。

こんな本、売ってます

『YATO』店舗詳細

YATO
住所:東京都墨田区石原1-25-3/営業時間:14:00〜21:00(日は13:00〜20:00)/定休日:水・木/アクセス:地下鉄大江戸線両国駅から徒歩5分

書肆(しょし)スーベニア [新刊・古書]

気軽に立ち寄る日常の本屋さん

酒井さんは版元の在庫を預かる倉庫会社に勤めていた。2017年に自店をオープン。
酒井さんは版元の在庫を預かる倉庫会社に勤めていた。2017年に自店をオープン。

店名のスーベニアの意味は、みやげ。「本は、著者をはじめ関わった人たちのみやげ話みたいなものだと思っていて、誰かの見てきた世界を伝え聞いている感覚で読んでいます」と店主の酒井隆さんは話す。店内の古本は、手に取りやすいようにあえて高い本は置かず、ひと通りのジャンルを扱う。新刊の棚も2本あり、社会学から文学、料理まで、凝縮された品揃え。新刊と古書が互いに補い合っている。

右の棚が新刊、左が古本と分かれている。
右の棚が新刊、左が古本と分かれている。
店舗は国道6号沿いのマンションの1階。
店舗は国道6号沿いのマンションの1階。

こんな本、売ってます

『書肆スーベニア』店舗詳細

書肆スーベニア(しょし)
住所:東京都墨田区向島2-19-11 ププレ隅田公園1F/営業時間:12:00〜20:00/定休日:月・火・水/アクセス:東武スカイツリーラインとうきょうスカイツリー駅から徒歩8分

石と古本 石英書房 [古書]

店主の大切なものが詰まった空間

奥の棚に並ぶ郷土玩具は非売品。
奥の棚に並ぶ郷土玩具は非売品。

古本と石と郷土玩具が渾然(こんぜん)一体となった店内は、まず懐かしさでいっぱいになるが、ひとつひとつを見ていくうちに、その楽しさに夢中になってくる。古本は、店主の水川直恵さんと父上の蔵書。街歩き、江戸と東京、鉱物に関する本が多い。店主は石にも造詣が深く、その語りに耳を傾けていると、気持ちが穏やかになっていく。

水川さんはかつて田端にお店を開いたが閉店、2018年に向島で再オープン。
水川さんはかつて田端にお店を開いたが閉店、2018年に向島で再オープン。

こんな本、売ってます

『石と古本 石英書房』店舗詳細

石と古本 石英書房
住所:東京都墨田区向島1-14-8/アクセス:とうきょうスカイツリー駅から徒歩5分

甘夏書店 [新刊・古書]

カフェの2階にある古本スポット

一軒家の2階の一部屋に、古本と手ぬぐい、ブックカバー、ZINE、リトルプレスなどが詰まった空間。古本は、絵本や、土地柄を反映して永井荷風や幸田文などが揃う。一箱古本市や古本イベントなどへの出店も多い。

『甘夏書店』店舗詳細

甘夏書店
住所:東京都墨田区向島3-6-5 一軒家カフェikkA 2F/営業時間:12:00〜18:00/定休日:火・水/アクセス:私鉄・地下鉄押上駅から徒歩10分

取材・文・撮影(甘夏書店)=屋敷直子 撮影=三浦孝明
『散歩の達人』2020年11月号より