表通りにある凝った店もいいが、今日はあえて住宅地に迷い込む。行き先は、地域に密着した親しみやすい町のパン屋さんだ。日々の食卓を彩る素朴な味わいは近隣住民と相思相愛。目印は、小さな手描き看板!

表通りを外れて路地に入ると、目の前に閑静な住宅地が広がった。『いでぱん』を目指してひたすら歩いているが、進めば進むほどすれ違う人の数は減り、店舗らしき外観は見当たらない。ふと不安になり、左手に持ったままのスマホを確認すると、「この先、目的地」と示された道が……存在……しない……。地図アプリも途中でナビを放棄するほどの難所ということか。念のために地図を拡大すると、数十m先にひっそりと私道が延びているのが判明。もしや、と思い行ってみると、その私道の入り口に小さな看板がかかっていた。

民家の脇に延びる私道の先に、ひっそりと『いでぱん』がある。
民家の脇に延びる私道の先に、ひっそりと『いでぱん』がある。
目印の看板。
目印の看板。

あったぞー! やったー!

たどり着くのが難しい住宅地のパン屋。しかし、ご近所さんの信頼と期待を一手に引き受けた店の味は確実で、わざわざ行くだけの価値がある、大いに。何より発見した時の喜びはひとしお。もしも道に迷って歩き疲れたら、近くの公園で休憩がてらパンをつまむのもいいし、『いでぱん』は「地域の安らぎの場所に」とテラス席を開放している。

そんなのどかな家並みや庭の緑など、道中の景色も住宅地のパン屋を訪れる理由。帰り道には澄んだ空気と、おなかに抱えたパンの香りを胸いっぱいに吸い込むのだ。

駅を挟んで反対方向の住宅地パン屋さん。看板をヒントに角を曲がると、そこに『MORI BAKERY』が!
駅を挟んで反対方向の住宅地パン屋さん。看板をヒントに角を曲がると、そこに『MORI BAKERY』が!

いでぱん [武蔵境]

地域に待ち望まれて自宅敷地内に開店

左上から時計回りに、ダークチェリーデニッシュ300円、チョコとピールのパン280円、グラタンパン260円、塩パン130円、焼めんたいこフランス260円、焼カレーパン250円。一番人気は塩パン。デニッシュは時季によってトッピングが異なる。
左上から時計回りに、ダークチェリーデニッシュ300円、チョコとピールのパン280円、グラタンパン260円、塩パン130円、焼めんたいこフランス260円、焼カレーパン250円。一番人気は塩パン。デニッシュは時季によってトッピングが異なる。

友人に向けて自宅でパン教室を開いていた井出裕子さんが、「普段から気軽に買えたらうれしい」という声に背中を押され、店を始めたのが2016年。材料は無添加にこだわり、中に入れる具材も丁寧に手作りしている。例えば、カレーパンのカレーは辛さ控えめで、生地と一緒に噛みしめるたび、国産小麦と天然酵母の醸す自然な甘みが野菜の旨味と相まって味わいを増す。季節ごとにトッピングが変わるデニッシュもおすすめ。

パンはどれも店主の井出さんが一つひとつ手作り。テラス席では購入した商品を食べられ、地域の安らぎの場にも。
パンはどれも店主の井出さんが一つひとつ手作り。テラス席では購入した商品を食べられ、地域の安らぎの場にも。
きび砂糖、ゲランドの塩など、材料は体に優しい自然のものにこだわる。
きび砂糖、ゲランドの塩など、材料は体に優しい自然のものにこだわる。
目印はコレ!
目印はコレ!

『いでぱん』店舗詳細

いでぱん
住所:東京都三鷹市深大寺1-5-30/営業時間:11:00〜18:00(売り切れ次第終了)/定休日:日〜水(臨時休みあり)/アクセス:JR中央線・西武多摩川線武蔵境駅から徒歩19分

ここね [三鷹]

一つひとつのパンに素朴さと個性が詰まる

中央上から時計回りに、ここねマフィン プレーン80円、春菊320円、黒糖ぶどうボール110円、飛べ! くまパン280円、メロンパン150円。店名を冠したここねマフィン(プレーン)はもっちり食感が魅力。まずは何もつけず、生地を味わって。
中央上から時計回りに、ここねマフィン プレーン80円、春菊320円、黒糖ぶどうボール110円、飛べ! くまパン280円、メロンパン150円。店名を冠したここねマフィン(プレーン)はもっちり食感が魅力。まずは何もつけず、生地を味わって。

ガリッとした食感が際立つメロンパンや、旬の食材を主役にした総菜パンが次々と食欲をそそる。いずれも店主の山本祥子さん、麦畑ちひろさんが二人三脚で練り上げたアイデアが満載だ。冬に登場する春菊のパンは、爽やかな風味をシュレッドチーズのコクが増幅。カスタードクリームとスイートポテトを一度に楽しめる「飛べ! くまパン」も期間限定だが、季節商品が入れ替わり現れ、今日はどんな出合いがあるかな、と訪れるたび楽しみ。

かわいい外観が目に入ると一気にわくわく。
かわいい外観が目に入ると一気にわくわく。
以前お互いが働いていたパン屋で出会ったという山本さん(左)と麦畑さん。
以前お互いが働いていたパン屋で出会ったという山本さん(左)と麦畑さん。
目印はコレ!
目印はコレ!

『ここね』店舗詳細

ここね
住所:東京都武蔵野市中町2-24-11/営業時間:11:00〜18:00(土は17:00まで。売り切れ次第終了)/定休日:月・水・木・日/アクセス:JR中央線三鷹駅から徒歩12分

MORI BAKERY [武蔵境]

国産小麦の味を生かす長時間冷蔵発酵

中央がよもぎあんぱん180円、右上から時計回りに、山食 1斤330円、ミルクフランス230円、フルーツカンパーニュ270円、塩パン150円。山食はトーストすると耳まで甘い。フルーツカンパーニュはスライスし、ワインに合わせるのもいい。
中央がよもぎあんぱん180円、右上から時計回りに、山食 1斤330円、ミルクフランス230円、フルーツカンパーニュ270円、塩パン150円。山食はトーストすると耳まで甘い。フルーツカンパーニュはスライスし、ワインに合わせるのもいい。

ホシノ天然酵母と自家製のレーズン酵母をパンによって使い分け、長時間冷蔵発酵で国産小麦の持ち味を前面に。開店直後、住宅地に漂うパンを焼く香りに誘われ、早々に人が集まりだす。自家製つぶあんが入ったよもぎあんぱんは、「ここのが一番よもぎが濃厚」と評判なだけあり、かじり付いた途端に香り立つ。「ご近所さんに育ててもらいました」と笑う店主の森春子さんとのやりとりも醍醐味。

自宅の軒先を改装し、オープン。
自宅の軒先を改装し、オープン。
パンはすべて春子さん(左)の手作り。週末はご主人が接客を手伝うことも。
パンはすべて春子さん(左)の手作り。週末はご主人が接客を手伝うことも。
目印はコレ!
目印はコレ!

『MORI BAKERY』店舗詳細

MORI BAKERY
住所:東京都武蔵野市関前4-7-16/営業時間:11:30〜売り切れ次第終了/定休日:水・土のみ営業/アクセス:JR中央線・西武多摩川線武蔵境駅から徒歩18分

ブーランジェリー hiro [三鷹]

種類豊富なハード系に大人も子供もハマる

上から時計回りに、バゲット・バタール270円、くるみとマロンのフランスパン220円、くるみとイチジクのカンパーニュ330円、ブラックペッパーとチーズのリュスティック220円、ベーコンエピ200円。ベーコンエピは辛さ控えめで子供にも大人にも好評。パンは16時ごろまで焼き続けるので、夕方でも何か焼きたてが手に入る可能性大。
上から時計回りに、バゲット・バタール270円、くるみとマロンのフランスパン220円、くるみとイチジクのカンパーニュ330円、ブラックペッパーとチーズのリュスティック220円、ベーコンエピ200円。ベーコンエピは辛さ控えめで子供にも大人にも好評。パンは16時ごろまで焼き続けるので、夕方でも何か焼きたてが手に入る可能性大。

店主の向山博幸さんは都内のパン屋に約20年間勤務し、独立。「パン屋のおばちゃんと呼ばれるのが夢だった」と妻の泰子さんはうれしそうだ。自慢のバゲット・バタールは、食べる直前にトーストすると外側はカリッと香ばしく、中はしっとりして甘い。「自家ブレンドした小麦粉を使い、香りを最大限に引き出します」と博幸さん。ライ麦で作るカンパーニュのもっちり食感にもヤミツキ。

住民が利用する生活道路に面する。下校途中の学生の寄り道スポットにも。
住民が利用する生活道路に面する。下校途中の学生の寄り道スポットにも。
店主の向山さんと妻の泰子さんが切り盛り。
店主の向山さんと妻の泰子さんが切り盛り。
目印はコレ!
目印はコレ!

『ブーランジェリー hiro』店舗詳細

ブーランジェリー hiro
住所:東京都三鷹市上連雀9-1-8/営業時間:10:00〜19:00/定休日:水・木/アクセス:JR中央線三鷹駅から徒歩25分

取材・文=信藤舞子 撮影=佐藤侑治
『散歩の達人』2021年1月号より