<特集:広報の上手下手で実績は変わる> 実践的広報の基本と創り出す社会現象

<特集:広報の上手下手で実績は変わる> 実践的広報の基本と創り出す社会現象

広報とは何? 宣伝やPRとは何が違うのか。プロモーション、イベント、セールスプロモーション(SP)、キャンペーン。さらに似たような言葉や同じような意味合いのオンパレードで、広告との違いも紛らわしい。プロでも説明できない言葉の意味を整理し、広報の知るべき基本と、大学広報そして近畿大学の際立つ成功手法をまとめてみる。

 (本誌編集長 山口泰博)


広報と一言で言っても複雑

広報は目的、組織、予算などによって体制や効果も変わってくる。大企業などの場合、広報と広告・宣伝部門は分業制だが、中小企業はそうもいかない。行政機関は、一般的に広告・宣伝部門はなく、主に広報主体だ。これらは、「広報・宣伝・PR」などが取られてきた歴史的経過をなぞると理解できる。また知っておきたい基本ともいえる。その上で紛らわしい用語の概念も分かってくる。 

小職は、福島高等専門学校のビジネスコミュニケーション学専攻科の学生(4年生大学でいう3〜4年次の学生)に広告メディア論の講義を担当してきた。JABEE基準に対応しつつ、より実践寄りのシラバスでは、マス・メディアの変遷、ジャーナリズムと広告、メディア、マス・メディア、4マス(新聞、雑誌、ラジオ、TV)、交通・屋外メディア、インターネットメディア、PR・広告会社、マーケティング、コーポレート・アイデンティティー(CI)、ブランディング、製品(商品)、サービス商品、プロモーション戦略、パブリシティー、セールスプロモーション(SP)、イベント、広報、クロスメディアとメディアミックス、企業研究、そして最後にプロモーション企画を立案し企画書を作成、プレゼンテーションまでの授業である。これらは広報活動をする上でも必須知識でもある。 

広報活動の結果は、日常生活の中の看板やポスター、スマートフォン(スマホ)やテレビなどのメディアを通して嫌でも目にする。しかし現代のメディア事情は、ラジオや新聞、雑誌は当然ながら、テレビを含め屋外メディアまでほとんど注視していない。学生の日常は、スマホで始まりスマホで終わる。SNSやゲーム、漫画、オンデマント放送、音楽などのコンテンツ、情報取得も含めデバイスの先にあるメディア一色だ。

 

歴史的背景と用語の違い

広報や宣伝、PRの概念は1800年ごろから、戦時下の情報操作が原点だとされる。1800年代に米国の大企業がPRという概念を取り入れた。労働組合や世論の批判に対応するためだ。欠陥製品や環境汚染などの問題発生時の対応などで、企業への信頼を与えるためであり、危機管理が目的でもある。日本では、戦後のGHQ統治下で、官庁や自治体への広聴と政策などを知らせる広報部署としての活動が原点で、それが企業にも広がった。また、宣伝はラテン語でpropaganda(プロバガンダ)である。特定の思想を人々に植え付けようとする軍事宣伝のための活動で、政治的色彩が濃く、これも戦時中〜戦後に広がった言葉だ。それぞれ、派生した時代背景は若干異なるが、自分たちをより良く見せることと統率が目的だった。現在では、全て同じような意味合いで捉えられている。 

だが、同じ情報伝達手法でも、広告やプロモーションなどとは線引きが明確である。プロモーションは、高度経済成長期の販売技術として登場し購買意欲を喚起するための活動で、さらに公害などによる企業批判の高まりから、企業の社会的責任(CSR)を図る手段として広報部門が一気に増えていった。同じような言葉にセールスプロモーション(SP)があるが、需要の喚起を刺激するマーケティング活動で、商品などを認知してから、購入までの行動を促すことである。どちらも営業寄りで広告に至っては実質的な費用(お金)がかかる。 

報道やジャーナリズムと広告は、その対極にあり、広報と広告の異なる点は無料か有料かの違いだ。広報活動の結果伝達された情報は、意図したものと異なることがままある。広報はメディアに対し自ら操作できないが、広告はお金を払いメディアを買い、自分の好きな時期に好きな表現ができる。ここが大きな違いである。

 

近畿大学の広報

大学の広報部門は、広報はもちろん広告やプロモーションやSP、マーケティングも扱う、総合メディアコニュケーション活動である。単に広報誌を作り、リリースを配信し、入試やオープンキャンパスを仕切っているだけでは成果を期待できない。組織の花形とはなりにくい間接部門だが、誰もが認める実績として築き上げてきたのが近畿大学だ。 

同大学の場合は、通常なら何でも大学や教育担当の記者クラブおよび記者に丸投げしてしまうところを、リリースの切り口によって配信先も変えることで取材される確率を上げる。

 広告は、交通広告(車内)と新聞が中心で、朝日、読売、毎日、産経、日経の全国5紙をバイイングし、掲載は大阪本社版エリアの関西圏のみである。基本の掲載時期は、受験とオープンキャンパスに合わせ各1回。あとは年始に1回程度の出稿なのだが、この広告が掲載料以上に何倍も何十倍ものパブリシティー効果を生み出す。およそ大学らしからぬユーモアと目を引くキャッチコピーとデザインで、読者の目を引き付ける。そして「ほかの大学と違う」が、そのほかマスコミやメディアの「引き」につながり、記者が飛び付きさらに飛び火していく。 

メインターゲットは将来の受験生だが、新聞の媒体属性とはミスマッチだ。メディアの主戦場は、わずか20年ほどでラジオと雑誌、新聞を抜き去り、インターネットへシフトしている。テレビを抜きメディアの「王座」に輝くのも時間の問題なのだが、インターネットメディアはメディアプランに入っていない。 

ターゲティングではミスマッチの新聞でも「ほかと違う」挑戦的で冴えわたる広告表現で、広く伝わり広告自体が取材対象となる。結果的に社会全体に波及し、SNSやテレビなどでも話題となりターゲットにも到達する。また、研究や産学連携は、「社会に広く受け入れやすいもの=広報効果に広がりをもたらすもの」だけをピックアップし、分かりやすく伝えることに徹する。広報活動の鉄則や基本を保持しながら、切れの鋭さで自ら社会現象を創り出し勝ち組へと定着したといえる。

 

ネガティブも逆手に捉えればプラスに転じる

ある都道府県別の観光イメージ調査を基に、学生に聞いたところ1〜3位は京都府、北海道、沖縄県に関するイメージが多く、おとなしめの学生も盛り上がり多くの発言があった。一般的に1位は覚えてもらいやすく、ニュースソースとしても価値を持ちやすい。2位、3位も多少印象に残るかもしれない。4位から46位は、広報的メリットから考えれば全く意味のない数字だが、最下位の47位はどうだろう。何事にも1番になるのは努力も必要で誰もが取れるわけでない。47番目をネガティブに捉えるか、ポジティブに捉えられるかで、広報活動の視点も一つ増えるというもの。ネガティブも逆手に捉えればプラスに転じるものだ。

(産学官連携ジャーナル 2018年9月号)

 


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