津田塾ブランドの原点 津田梅子と星野あい

津田塾ブランドの原点 津田梅子と星野あい

特集 研究力でブランドを構築する

津田塾ブランドの原点 津田梅子と星野あい

 

津田塾大学は、学生数3000人ほどの小規模大学だが、政界や経済界など多くの分野で活躍する人材を輩出し、卒業生には著名人も数多くいる。どこにそんなポテンシャルがあるのか。津田塾ブランドとは何か。

(国立研究開発法人 科学技術振興機構 本誌編集長 山口泰博)

 

◆「オールラウンドな女性」の育成を建学の精神に

女性の登用や人材育成、社会科学の重要性、国際化…本誌の編集方針も社会の要請や期待に対応しながら新年度の企画を検討していたときのことだ。企画をクリアするキーワードの多くを備えている研究や連携はないものかと思案していたとき、元号が平成から令和に改元される直前の4月、5000円札の肖像が樋口一葉から津田梅子に変わるとメディアが報じた。2024年度に発行が予定されている新紙幣のことだ。 

津田塾大学の教育方針は、津田梅子を知らずして語ることはできない。 

1900(明治33)年当時、「家」を守り、社会を近代化していくためには賢い母の育成が必須とされ、女子には良妻賢母に、という考え方が主流だった。それゆえ、官制(現在の国立あるいは公立)の女子中等・高等教育は良妻賢母育成を目指す傾向が強かった。 

津田梅子は、1871(明治4)年に北海道開拓使が募集した日本初の女子留学生5人のうち最年少の6歳で米国へ留学した。 

11年後の1882(明治15)年に帰国し、日本女性の置かれていた状況に落胆した梅子は、日本の教育に疑問を抱き、女性の地位を高めなければという思いを募らせた。1889(明治22)年に米国に再度留学、ブリンマー大学で学んだ後、1900(明治33)年、当時の日本では先駆的な、「オールラウンドな女性」の育成を建学の精神にして学問重視の女子高等教育機関である女子英学塾を私学として設立した。 

髙橋裕子学長は「あまり知られていないことですが、梅子はブリンマー大学に在学中から、自分の後に続く日本女性のための奨学金制度でもある日本女性米国奨学金委員会を設立しました。その資金で、後の初代津田塾大学学長となる、星野あいも、ブリンマー大学に留学しています。星野は帰国後、女子英学塾の教員、塾長を務め、1943(昭和18)年には英文学科に加えて、理科を増設して津田塾専門学校設立に尽力。そこから新制大学としての津田塾大学へと発展を遂げていったのです」と力を込める。 

髙橋学長の言う通り、当時の女子専門学校では珍しく、1943年には理科も設置され、戦後の1948(昭和23)年には大学へと昇格し、今の津田塾大学へとつながっていった。

 

◆研究力と「津田スピリット」で「変革を担う女性」ブランドの形成

「津田スピリット」が脈々と引き継がれ、今の津田塾ブランドに根付いている。 

その津田塾らしさを研究によって示そうとしたのが、「変革を担う女性」の持続的育成を目指した「インクルーシブ・リーダーシップ研究」拠点の形成だ。 

文部科学省の2018(平成30)年度私立大学研究ブランディング事業の支援対象「タイプB」として採択された。タイプBとは、世界展開型として、先進的で学術的な研究拠点の整備により、全国的あるいは国際的な経済・社会の発展、科学技術の進展に寄与する取り組みを指す。インクルーシブ・リーダーシップとは、全ての人々を包摂できるように発揮されるリーダーシップと、これまで、社会環境によって制約を受けてきた、女性や障害者が獲得しうるリーダーシップの両面を意味する。 

事業の柱は、国際的女性リーダーシップ英語教育の方法論開発、データ活用型政策研究と実践的教育プログラム開発、社会的インクルージョン研究基盤形成、津田アーカイブを用いた多様で先進的な女性ロールモデル研究推進と大きく四つに集約される。 

この事業の中心的な役割を担うのが、ダイバーシティーセンター・フォー・インクルーシブリーダーシップのセンター長を務める総合政策学部総合政策学科の森川美絵教授で、自身も同拠点のデータ活用型政策研究と実践的教育プログラム開発の研究代表である。データサイエンスと社会科学との融合を視野に、地域連携や産官学連携による課題解決志向の政策研究と教育プログラムの構築を目指す。 

津田塾大学・住田町連携プロジェクトは、住田町と津田塾大学が2018(平成30)年2月に包括連携協定を締結したことを契機に立ち上げた。住田町、大船渡市、陸前高田市の3市町からなる岩手県気仙地域とは、東日本大震災後の地域ケア体制整備でつながっていたが、プロジェクトでは、大学生が自らの目線で地域の魅力を考え、雇用、産業振興、教育、コミュニティ形成、住環境整備、高齢者の暮らしなど、地方創生の課題について現地で話を聞いて理解を深めた。現地での経験や情報収集を元に、課題の分析や解決策の検討を行い、町や地域に提言するなど、地域と協働で解決策を模索、大学として地域の創生に協力する。 

福井県鯖江市や長野県飯田市などとも連携プロジェクトがあり、研究メンバーで分担して進めている。「現地に行くからこそ得られる質的データ、現地との対話により鍛えられる考察力も大切にしたい」と、森川教授はその意義を示唆する。

 

◆新国立競技場に最も近いキャンパスだからこその五輪プロジェクト

総合政策学部ではさまざまな地域連携プロジェクトも実践する。 

例えば、来年開催の東京五輪(東京2020オリンピック・パラリンピック)に関連し、津田塾大学梅五輪プロジェクトを創設。学生が中心となって自治体や商店街などで活動する。新国立競技場は五輪開催に向け現在は建築中だが、期間中は、競技会場として多くの人が訪れるだろう。また千駄ヶ谷の東京体育館と道路を挟んで隣接する津田塾大学のキャンパスは、五輪と向き合う意義と必然があるようだ。 

東京五輪期間中は、短期間に1000万人を超える人が集まるとされる。そのような状況下では、観光や観戦、防災や減災にも、適切で迅速な対処方法を事前にシミュレーションすることが必要だろう。 

近年、そのような状況に直面した経験のない日本には、科学的根拠に基づくデータがない。そこで、地域や公共機関、産業界など幅広い関係機関と共同してデータの収集を行い、不安の払拭(ふっしょく)に貢献する。 

このほか、「津田塾大学LINE@アカウント」を活用し、自動対話の効果検証や課題抽出の実証実験を行う。チャットボット(Chatbot)と多くの人が利用するライン(LINE)を連動、テキストや音声を組み合わせ、会話を自動的に行うプログラムと、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の活用で、「社会産学連携活動」やインターンシップ制度、就職状況など学生が大学生活に必要な情報検索の対話支援も整備する。 

2019(平成31・令和元)年度以降、私立大学研究ブランディング事業の新規募集の停止が発表された。事実上の中止である。文部科学省の助成が終了すると、プロジェクトの運営が難しくなることもあるが、「それぞれの研究は、先生方が独自に研究されていた側面もあります。それを、津田塾らしく再構成したのが、変革を担う女性の持続的育成を目指したインクルーシブ・リーダーシップ研究拠点です。研究ブランディング事業の支援期間は2020年度までの3年間ですが、地域社会や産業界との共同研究や、連携協力に必要な社会問題発掘力やソリューション力はたくさんあります」と大島美穂副学長は自信をのぞかせた。 

取材を通し、小規模でも、私学の女子大として常に、先頭を走るそんなブランド力を感じた。 

(産学官連携ジャーナル 2019年6月15日発行号)


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