<特集:人材交流で分かる銀行と大学の本気度> 銀行からの出向者は特任准教授 秋田大学

<特集:人材交流で分かる銀行と大学の本気度> 銀行からの出向者は特任准教授 秋田大学

秋田大学と秋田銀行、北都銀行の人事交流は、これまで産学官金連携の実務ではないところもあったが、2017年4月1日から、両銀行の出向者は裁量労働制を採用。特任准教授として、自由裁量で顧客先に出向く。民間企業のフットワークが持ち味だ。

(本誌編集長 山口泰博)

 

秋田銀行から出向 佐藤雄介特任准教授

秋田銀行の佐藤雄介氏は、秋田大学産学連携推進機構に特任准教授として出向している。前任者は知財などを管理する事務職として出向していたが、2人目となる同氏は、産学連携と共同研究、「文」と「医」を除いた理工系や金融機関の顧客からの相談を取り次ぐコーディネーター業務を担当する。 

また、北東北3大学3銀行提携による地域版TLO「ネットビックスプラス」への対応にも追われる。 

2016年7月に立ち上げたネットビックスプラスは、秋田大学、岩手大学、弘前大学の3大学と秋田銀行、岩手銀行、青森銀行の3銀行が、大学の研究技術を地域の企業が活用するために結んだ連携協定事業で、各大学が持つ特許や研究中の情報を共有するライブラリーだ。各銀行は、ライブラリーを活用して技術情報を取引先企業に提供する。同氏は独自業務として、新製品の開発や共同研究開発につなげるための活動を進めている。 

同氏は、関東圏の経済学部を卒業後、故郷の秋田県に戻り、秋田銀行に就職した。バブル崩壊後で社会的に就職難となった「就職氷河期」直前、秋田県内で安定した就職先といえば金融機関や県庁しかなく、中小企業のほとんどが新卒採用を見送った時期で、受け入れ企業が限られていた中、狭き門を突破した。 

大学への出向人事発令時、同氏は銀行内の仕事しか経験がない上、理系の専門分野の知識が全くなかったことから、漠然と不安を感じていたという。 

「銀行内でも、産学連携という言葉は聞いたことはありましたが、実際に何をやっているのかは具体的には理解していませんでした」と同氏。「銀行での業務は、企業の財務内容など数字の話がほとんどで、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が実施している新技術説明会やものづくり系の展示会などに参加することはありませんでした。しかし実際に大学で仕事をして、技術分野を知ることができました。銀行内だけで仕事をしていたらこのような経験はできません。知らなかった世界を見聞きでき、とても新鮮です」と視野が広がったことに満足気だ。 

 

北都銀行から出向 佐藤芳仁特任准教授

北都銀行から出向する佐藤芳仁氏は、同行からの4人目の出向者だ。これまでの出向者は、県内の起業家をゲスト講師として招きビジネスプラン作成などを指導する起業力養成の寄附講座担当や、文部科学省が実施する「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」担当などだが、同氏は、産学連携実務を担当する特任准教授として出向した。

 具体的には、県内企業を中心に、医療・福祉機器の開発と事業化に取り組む医理工連携産業研究開発事業において、学内の医学部と理工学部をつなぐ新製品作りなどの業務だ。また、メディカルスタッフからのニーズに対応した商品の開発や、助成金事業なども担当する。

 秋田大学と地域企業が共同開発した商品などには、同大学医理工連携ブランドロゴマーク(2014年に商標登録)を付与し、他社との差別化をアピールしている。医理工連携がさらに促進することを期待して作成したもので、これまでに6商品にロゴマークが付与されている。秋田市の菓子メーカー「かおる堂」と共同開発した「大学病院の先生が考えたサプリ饅頭(まんじゅう)」は、骨折予防に必要とされるビタミンDやカルシウムを含み、骨粗しょう症予防の食品として2018年夏に発売された。 

同氏は医療現場での問題を解決するための機械を開発するため、実際に手術室に入り手術現場を見学したこともある。通常なら医療現場に立ち入る機会はないが、医師である先生方の説明を聞き、最新医療の進歩に目を見張ったという。医理工連携ならではの経験だ。「銀行から大学への出向を告げられたときは、文系の自分に務まるのか、これまでの経験が全く生かせないのではないかと不安に思いましたが、JSTの目利き研修に参加し、文系の人でも活躍されているコーディネーターがいますというアドバイスに、不安が和らぎました」と研修を思い返す。 

外部ならではの視点

当初は、民間企業と国立大学との指示命令系統の手法の違いに戸惑うこともあった。また、出向期限は2年が通例であるが、アイデアから製品化に至るには2年という期間は短く、大学と銀行との人事交流はある程度継続させることが重要だという。

 銀行では産学連携に対する認知度は低く、地元企業の困り事に対応できる人材はほとんどいない。出向者が銀行に戻れば少しずつ理解が進むのでないかと、両氏の認識は一致している。両行の産学官金連携を推進する先導者となってくれると期待したい。

 (産学官連携ジャーナル2019年1月号) 


関連ニュースをもっと見る

関連記事

おすすめ情報

産学官連携ジャーナルの他の記事もみる

北海道/東北の主要なニュース

秋田 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

地域 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

地域選択

記事検索