高等専門学校生とディープラーニング

高等専門学校生とディープラーニング

松尾 豊

日本ディープラーニング協会 理事長/東京大学 大学院工学系研究科 教授


人工知能、特にディープラーニングという技術の進展が急速に進んでいる。政府も今年、25万人のAI人材を育成する方針を発表した。ディープラーニングの研究分野にいると、毎日、たくさんの論文が出され、たった1年前にすごいと言われた技術があっという間に古くなる。付いていくだけでも大変であり、そのような状況のなか、世界中が技術開発と事業化を競っている。 

企業からもディープラーニングを使った新しい事業を検討したい、こういうことをやってみたいという声は多い。私の研究室でも、数年前からほぼ共同研究の案件はディープラーニングのみになってきた。企業との共同研究のなかで鍛えられた学生のなかから、自ら起業するものも増え始め、いま研究室の周りは、学生やOBによる起業が相次いでいる。

私の研究室の周りだけではなく、日本中でイノベーションを起こしたいと考え、ディープラーニングの有力なスタートアップを集めて2017年に設立したのが日本ディープラーニング協会である。 

ディープラーニングによって日本全体の産業競争力を向上させることが目的であり、そのために産業活用の促進、人材育成、産業や政府への提言などの活動を行っている。人材育成に関して言えば、G検定(ジェネラリスト検定)、E資格(エンジニア資格)という二つの試験を行っており、まだわずか2年であるが、G検定は通算で約1万5000人の受験者、E資格は1,000人の受験者に達し、順調に増加している。 

今年の4月には、高専ディーコン(全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト)というコンペティションを開催した。ディープラーニングの性能は画像認識で顕著だが、画像認識のアプリケーションには多くの場合、ハードウェアとの接続が必要となる。ハードウェアを開発できる高専生がディープラーニングを活用することで新たなイノベーションが起こるのではないかという意図の下、開催された第1回の大会には、全国の高専から18チームの応募があり、8チームが決勝に進出した。日本経済新聞社が主催し経済産業省が後援する、人工知能(AI)の活用をテーマにしたグローバルイベント「アイサム(AI/SUM)」内で開かれたイベントの決勝では、日本を代表するベンチャーキャピタリストがそろい、技術ではなく、事業としてのバリュエーション(企業価値評価)によって争われた。 

1位の長岡高専は4億円のバリュエーションであり、工場のアナログのメーターをカメラとディープラーニングで読み取り、デジタル化しスマートフォンで見られるようにするというものであった。高専生のプロジェクト(が会社だった場合)の価値が4億円というのは、参加者にとって驚きであったが、いまの人工知能かいわいのようすをよく表している。投資のお金が多く流れ込んでくるにもかかわらず、案件が少ない。現場に根差した課題と、しっかりした技術力を持ったチームが起業すれば、大きく評価され、そこから売上と利益を伸ばしていくことで大きな成長が見込めるわけである。 

次回は来年の春に行う予定であるが、全国の高専生が出場に向けて頑張っている。全国津々浦々の高専生が、それぞれの地域で日本ならではのイノベーションを起こしていってもらえればと思う。 

産学官連携ジャーナル 2019年11月号


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