2023年に本社機能を島根県に他都道府県から移した企業は7社で、2年連続の「転入超過」となったことが帝国データバンクの調査で分かった。情報通信ネットワークの進化などで地方でも仕事しやすい環境が整いつつあるのが理由とみられる。一方、地方創生を目的に「まち・ひと・しごと創生法」が14年に制定されて以降、23年までの10年間では18社の転出超過となっており、県外流出の傾向にある。

 帝国データバンク松江支店によると、23年に島根県内に転入した県外企業7社は業種別で、製造、サービス、不動産が各2社と建設が1社。移転元の都道府県は鳥取県2社と、広島県、大分県、滋賀県、三重県、東京都が各1社だった。一方、23年に島根県外へ転出した企業は6社で、業種別はサービス3社、建設、運輸・通信、その他が各1社。移転先は広島県と兵庫県が各2社、鳥取県と東京都が各1社だった。

 転入企業のうち、企業ブランディングやロゴ制作などを手がける雨上(浜田市黒川町、平井俊旭社長)は22年4月に滋賀県高島市から島根県に本社を移した。業務はオンラインを通じての打ち合わせが可能で、地方でも支障なく事業を継続できることなどから決めたという。

 一方、14年から23年までの10年間では、39社が転入し、57社が転出し、18社の転出超過だった。転入企業は22、23年と2年連続で過去最多となる7社となった。ただ県外への転出は18年の8社をピークに、19年7社、20年6社、21、22年がともに4社と減少傾向にある。

 松江支店の渡辺聡支店長は「人手不足が課題になる中、テレワークなどを通じて地方での人材獲得を進める動きが出ているのではないか」と推測した。

 同じ調査で、鳥取県では23年に2社が県内に転入した一方、3社が県外へ転出して1社の転出超過となった。転出超過は3年連続。14年から23年にかけては転入28社に対して転出が44社あり、計16社の転出超過となっており、島根県と同様に県外流出の傾向にある。