上場企業の経営に積極的に口を出す投資家「アクティビスト(物言う株主)」の存在感が年々高まっている。社外取締役選任や役員報酬見直しなど要求内容に広がりが出てきたほか、株主総会への議案提出も増えている。企業統治改革が進んだことに加え、新型コロナウイルスの感染拡大で、中長期的な成長戦略に関心が向いたことが影響している。株式市場に金融緩和マネーが大量に流入していることも背中を押している。

 大和総研によると、今年の株主総会で、株主提案を受けた企業は66社(6月25日時点での集計)と過去最多となった。3分の1はアクティビストがかかわったものだ。

 例えば、23日のJR九州の株主総会では、米投資ファンド、ファーツリー・パートナーズが不動産投資やリスクマネジメントの専門家3人の取締役選任議案や、不動産の個別収益性などの情報開示を可能にする定款変更議案を提出した。

 総会に先立って、JR九州側はこれに反対する意見を表明するなど、両者の対決姿勢は鮮明になっていた。総会ではJR九州側に多くの支持が集まり、ファーツリーの議案は昨年に続いて退けられた。

水面下で話し合いも

 このように、経営陣とアクティビストの攻防が表面化しやすいのが株主総会の場だ。ただ、両者は実際には、長期間にわたって水面下で話し合いを続けることが多い。その結果、よく見ると、会社提案の議案の中にアクティビストの意をくんだものが紛れ込んでいたり、アクティビストの攻勢をかわすために株主還元が実施されたりするケースがある。

 海外投資ファンドの“主戦場”は米国だが、その次のターゲットになっているのが日本だという。

 大和総研の鈴木裕主任研究員は「多くの日本企業は株価に割安感があり、内部留保をため込んでいる。制度上、株主提案がしやすいこともあり、日本企業はアクティビストに狙われやすい」と指摘する。

 アクティビストといえば、かつては海外投資ファンドが日本企業の株式を安く大量に買いたたき、数の力をバックに、株主還元や買収提案を強硬に要求する「ハゲタカ」のイメージが強かった。

 米投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパンがユシロ化学工業や毛織物染色業大手のソトーに日本初の本格的な敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けたことで、その存在は広く知られるようになった。

 最近はアクティビストの顔ぶれが多様化してきた。米ブラックロックやステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのように、世界中の企業に投資する巨大な資産運用会社の他、一部の非政府組織(NGO)などの組織もアクティビストに分類されるようになってきた。

ESG投資の浸透

 そんな中、今後のアクティビストの活動に大きな変化を与えそうな考え方が投資の世界に浸透してきた。環境と社会、企業統治の取り組みを重視して投資先を選別する「ESG投資」だ。

 コロナ禍で人種差別や社会の分断が起きている米国では、企業に対する投資家や世間の目は日に日に厳しくなっている。黒人のイラストや蔑称が使われた商品パッケージを取りやめたり、黒人従業員の待遇を改善したりする動きがみられるようになった。

 大和総研の鈴木氏は「社会運動が株主行動に影響し始めた。消費者による自社製品のボイコットにつながるリスクを恐れ、経営側もこれに敏感に反応するようになった」と語る。

 日本では、三菱UFJフィナンシャル・グループが昨年5月、石炭火力発電への新規融資の中止を宣言した。

 みずほフィナンシャルグループは25日の総会で、日本で初めての気候変動に関する株主提案を議論。パリ協定の温暖化対策目標に沿った投資を行うための計画を毎年開示するよう、環境団体から求められたのだ。結果的に取締役会の反対で議案は否決されたが、鈴木氏は「日本企業もソーシャルムーブメント(社会変革)の入り口に立った」と述べ、この流れが本格化するとみている。

 日本株全体の評価を高めようと、個人投資家をアクティビストとして育成する取り組みが注目されている。マネックス証券が平成31年1月に立ち上げた「マネックス・アクティビスト・フォーラム」だ。今年6月25日には、個人投資家の声を集め、投資先と対話活動も行う投資信託の運用を始めた。公募で集まった個人の資金は32億円に上る。

 東京証券取引所によると、30年度末時点の個人の株式保有割合は約17%。一定の影響力を持ちうる一方で、株主優待狙いで株主になる人や、お土産が目的で株主総会に出席する人も少なくない。

 マネックスの松本大会長は「個人がアクティビストになることが日本株全体のパフォーマンス向上につながる」と訴えている。

(経済本部 米沢文)