シャープは29日、堺市堺区の本社で株主総会と経営説明会を開催した。同社が新型コロナウイルス感染拡大を受けて新規参入したマスク生産について、株主からは評価する声が相次ぎ、戴正呉(タイ・セイゴ)会長兼社長は、国内で健康関連分野の新規事業を展開する考えを示した。また、戴氏は、新社長に選んだ同社生え抜きの野村勝明副社長について、「シャープの事業に精通した人物」と語った。

 今年の総会は新型コロナウイルス感染予防のため、事前に株主へ来場の自粛を呼びかけており、出席者数は81人と昨年の392人から大幅に減少した。取締役4人の選任議案など会社側が提案した計4議案はすべて可決され、その後開かれた取締役会を経て、戴氏が会長兼CEO(最高経営責任者)に、野村氏が社長兼COO(最高執行責任者)に就任した。

 総会やその後の経営説明会では、日本政府から要請を受けて3月に新規参入を決め、個人向けの販売でも爆発的な人気が出ているマスク事業について、出席した株主が「消費者のニーズに合っていた」と評価。ただ、同社が手土産を配布していないことに関し、別の株主からは「マスクをもらえるかと期待していた」との声も上がった。

 新型コロナ感染拡大に伴う入国制限のため、台湾の販売拠点からオンライン中継で参加した戴氏はマスク事業について、「日本の社会に貢献できた」と手応えを明かし、健康関連分野での事業を拡大する考えを示した。

 一方、戴氏は株主から野村氏を新社長に選んだ理由を問われ、「8年間一緒に仕事をし互いのやり方や考え方を熟知している」と評価。新体制では自身が取締役会と人事評価委員会、野村氏が経営戦略会議を主催する考えを示し、「私が海外事業に使う時間を増やし、野村新社長には日本でビジネスをしっかり展開してほしい」と述べた。

 また、他の株主からは同社が注力する超高精細な「8K」テレビ事業などについて、「市場がまだ立ち上がっておらず事業領域を広げるべきでは」との指摘があり、野村氏は「プレーヤーがまだ少なく、日本ではシャープが先陣を切りたい」と答えた。

 株主からは米アップルと進めるジャパンディスプレイの白山工場(石川県)の購入交渉の進捗(しんちょく)や、新型コロナの影響で公表を延期している今年度の業績予想についての質問もあったが、経営陣は「詳細はお答えできない」と回答するとどめた。(山本考志)