初の国産テレビアニメ「鉄腕アトム」に幻の第1話 シナリオ発見 原稿36枚、手塚さん修正指示も

初の国産テレビアニメ「鉄腕アトム」に幻の第1話 シナリオ発見 原稿36枚、手塚さん修正指示も

 昭和38年1月から放映された初の国産テレビアニメシリーズ「鉄腕アトム」の第1話で、放映されなかった幻のシナリオが存在したことが分かった。映画史研究家の牧野守さん(87)=東京都国分寺市=が構想したシナリオで、原作者の故手塚治虫さん(1928〜89年)が修正を指示した書き込みも残っていた。専門家らによると、手塚さんの、人間という存在を見つめようとした深いテーマ性と、国産アニメ第1号にかける意気込みが伝わってくるという。(横山由紀子)

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 国際日本文化研究センター(京都市西京区)の大塚英志(えいじ)教授(59)=まんが表現史=の調査で明らかになった。見つかったのは、「第1話 フランケンシュタインの巻」と題した原稿用紙36枚分の手書きシナリオ。牧野さんが都内の自宅で保管していた。

 牧野さんは当時、記録映画の現場で働く無名の若者。手塚さん側の誘いで契約を結び、脚本を担当することになったという。

 シナリオは、悪人に操られたロボットのフランケンシュタインにアトムが立ち向かう内容。冒頭、ロボット製造工場でスタッフが会話をしながら作業する姿が描かれるが、「出始めはメカニックにセリフない方がよくはないか」などと、手塚さんの指示が書き込まれている。「黙々と働く工場作業員の姿をロングショットで見せようとした意図がみられる」と大塚教授。リアリズムを追求する戦前のドキュメンタリー映画の手法といい、「記録映画性と、人間そのものを描くという手塚さんのスタンスが読み取れる」とする。

 ところが結局、牧野さんのシナリオは採用されず、最終的に21世紀を舞台にアトムが製造された背景にスポットを当てた「アトム誕生の巻」が放映された。不採用の理由は、はっきりしないというが、大塚教授は「テレビで子供向けに最初に作るアニメとしては難しすぎるとか、いろんな意見が出たのでは」とみる。

 そのうえで、今回発掘された資料について「『鉄腕アトム』に隠された手塚さんの強い意図と意気込みが感じられ、人間の存在を見つめ直そうとした深いテーマ性もうかがえる」と話している。

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【用語解説】鉄腕アトム

 故手塚治虫さん原作で、21世紀の未来を舞台に、日本の科学技術を駆使して製造されたロボット少年、アトムが活躍する物語。人間とロボットの関わりなどが描かれる。漫画作品は昭和26年、雑誌「少年」(光文社)に連載開始の「アトム大使」を前身に、「鉄腕アトム」として27〜43年まで連載された。38年、日本初の国産テレビアニメシリーズとしてフジテレビ系で放映され、絶大な人気を誇った。

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【プロフィル】手塚治虫

 てづか・おさむ 漫画家。昭和3年、大阪府豊中市生まれ。兵庫県宝塚市で育つ。大阪大付属医学専門部在籍中の21年、4コマ漫画「マアチャンの日記帳」でデビュー。数々の漫画作品をヒットさせ、「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」などのアニメ作家としても活躍した。平成元年、60歳で死去。主な作品に「リボンの騎士」「火の鳥」「ブラック・ジャック」など。

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