日章旗、73年後の奇跡 元米兵「家族に返すと日本兵と約束」 日米夫妻が返還活動に尽力

日章旗、73年後の奇跡 元米兵「家族に返すと日本兵と約束」 日米夫妻が返還活動に尽力

 米西部モンタナ州の元海兵隊員、マービン・ストロンボさん(93)が、先の大戦中に戦地サイパン島から持ち帰った日章旗(寄せ書き日の丸)を岐阜県の遺族に返還するため来日した。ストロンボさんは13日、記者会見し「日本兵と約束していた。いつか必ず家族の元に返すと。約束がかなえば私にとって一つの終止符になる」と語った。その傍らには日本人と米国人の夫妻がそっと寄り添っていた。(天野健作、写真も)

 「奇跡が起きた。戦地で戦った本物の兵士が、遺族に直接日章旗を返す。全ての日章旗には一枚一枚願いが込められている。英霊に導かれるようにして返されるのだ」。日章旗返還活動に携わり、会見に同席したレックス・ジークさん(63)=米オレゴン州在住=は目を潤ませながらそう話した。返還活動に携わるきっかけは、妻の敬子さん(49)だった。

 敬子さんは京都府出身で、祖父がビルマで戦死した。2007年、祖父の日章旗が実家に返還されたことを歴史研究家でもあるレックスさんに伝えたところ、「帰れない日章旗はたくさんある。2人でできる限り一枚でも多く遺族に返せないか」と提案された。

 戦後70年となる15年を目標に各地の日章旗を返還しようと、「OBON(オボン)2015」の名称で09年から旧日本兵の遺品の返還活動を開始。今春には、日本で一般社団法人「OBONソサエティ」も発足させた。

 ストロンボさんから連絡があったのは今年3月。日章旗には「安江」の署名が多かった。レックスさんらが同法人の支援者である神社の宮司に相談すると、持ち主は安江姓が多くいる岐阜県東白川村出身の安江定男さんと分かった。ストロンボさんは1944年7月ごろ、サイパンで25歳で戦死した安江さんが上着の中に入れていた日章旗を見つけ、持ち帰っていた。

 ストロンボさんは「横たわる遺体から何か持ち帰るというのは罪悪感を感じた。しかし持って帰らなければ戦地で永遠に失われてしまう。旗が大切な物だと分かり、いつか必ず返すと心の中で約束した」。終戦の日の15日、娘や孫らと東白川村を訪問し、安江さんの最期の様子を遺族に直接伝えるという。

 安江さんの弟の辰也さん(89)は「破れやすい旗を70年以上も大事に保管してもらって、ただただうれしい気持ち。兄は海上で亡くなったと聞き、遺骨もない。どのように亡くなったか聞けるのは、大変感動している」と話した。

 レックスさんと敬子さんに託された日章旗は400枚以上。そのうち遺族の元に戻ったのは約100枚で、今でも毎日、メールや電話で、元米兵らから戦時中の遺品返還についての問い合わせがある。元米兵も高齢化しているため、直接遺族に手渡す機会はなくなっていくかもしれない。

 「彼らは心の中で葛藤や悲しみと格闘している。日本に返すことで戦争に対する終止符を打ちたいという願いがある」。レックスさんはそう思いやった。

 寄せ書き日の丸 先の大戦では出征にあたり、家族や知人らが武運長久を祈って日章旗に署名やメッセージを寄せ書きし、多くの日本の将兵は受け取った日章旗を肌身離さず身に着けて戦地へ赴いた。一方、連合軍の将兵らは戦火に倒れた日本の将兵が持っていた日章旗を戦利品として入手。故郷へ持ち帰った。その後、日章旗の返還を希望する旧将兵やその遺族が出てくる一方、近年は国内外のインターネットオークションで売買されるケースも増加、問題となっている。

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