鍋料理のシーズンも終盤に入った。とりわけ人気の高い「おでん」「すき焼き」は、家庭で味わった人も多いだろう。地域や家庭ごとにさまざまなレシピがあるものの、ちょっとしたコツで、プロ顔負けの味になる。ワンランク上のおいしさで、鍋シーズンを締めくくってはいかがだろうか。(榊聡美)

 「おでんは煮込めば煮込むほどおいしい、という人もいますが、お勧めの煮込み時間は45分です」

 紀文食品が開いた講習会で、同社のクッキングコミュニケーター、根岸恭子さんが受講者にこう説明した。

 煮えにくい大根やこんにゃくは切り目を入れたり、軽くゆでたりして下ごしらえし、大きめの鍋に汁をたっぷりと用意する。そして、大事なのが具材を加えていくタイミングだ。

 具材を次の2グループに分ける。(1)煮えにくく、じっくりと味をしみ込ませたいもの(大根、こんにゃく、結び昆布、卵など)。(2)練り製品(さつま揚げや焼きちくわなど)、大豆加工品(厚揚げ、がんもどきなど)。

 先に(1)を鍋に入れて30分ほど煮る。根岸さんは「蓋をせずに弱火でコトコト。沸騰させると雑味が出て、汁が濁ってしまいます」。

 大根がやわらかくなったら(2)を投入。汁にうまみを出しつつ、持ち味を生かすには15分の加熱で十分。はんぺんは火を止める直前に加え、汁をかけて温める。

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 キッコーマンの講習会では、創業約150年の老舗すき焼き店「伊勢重」(東京都中央区)の7代目、宮本尚(しょう)樹(じゅ)さんが関東風の作り方を実演した。

 最も興味を引いたのは割り下だ。お勧めの割合は「本みりん1・砂糖1・しょうゆ3・水6」。3、4人分用に、本みりん60ミリリットル、砂糖60グラム、しょうゆ180ミリリットル、水360ミリリットルを鍋に入れて一煮立ちさせ、火を止めた。

 宮本さんは「一晩冷蔵庫に入れて寝かせると、角の取れた味わいになります。ここがポイントです」と強調した。

 主役の牛肉は、赤身と脂身の間にあるかたい筋と、脂身を大胆に切って除く。この一手間でやわらかさや食感が変わるという。

 食卓で煮ていくときは、鍋に牛脂を溶かして割り下を注ぎ入れ、まずは肉から。「肉から出るだしが野菜やしらたきに移って全体がおいしくなる。だから肉を最初に煮るんです」

 煮込み過ぎると肉がかたくなり、鍋料理でなく“煮物”になってしまう。火加減は強くせず、具材は必要な分を少しずつ加えるがコツだ。

 「家族でひとつの鍋を囲み、お父さんが鍋奉行になれば株が上がりますよ」

「しらたきが肉をかたくする」は誤解

 「しらたきがすき焼きの肉をかたくする」は誤解だった−。一般財団法人「日本こんにゃく協会」は検査機関に委託し、試験を行った結果をこう発表した。

 しらたきは水酸化カルシウムなどの凝固剤で固められたこんにゃく製品。カルシウムのアルカリ性が肉をかたくすると考えられ、すき焼きでは肉と一緒に煮るのを避けたり、くず切りや春雨で代用したりするケースも少なくなかった。

 ところが、試験によってカルシウム成分の含有量は焼き豆腐の半分程度と判明。肉がかたくなってしまう主な要因は加熱時間と肉質(霜降りの度合いなど)で、しらたきによる影響は見られなかったという。

 同協会の担当者は、「しらたきは食物繊維が豊富で低カロリー。ごちそうが続いて食べ過ぎが気になるこの時期は、すき焼きをはじめ、鍋料理に打って付けです」と話している。