妹から年賀状が届いた。そこには「令和」と大きく、金澤翔子さんの書があった。

 はがきサイズなのに、凛として、なんと力のある書なのだろう。ダウン症の書家ということは知っていたが、もっと詳しく知りたくて、急いでこの本を買い求めた。

 翔子さんの書と、お母さまの泰子さんが書いた文章によるコラボレーションの作品集である。泰子さんが、障害を持って生まれた翔子さんをどのように受けとめ、どんな苦悩を抱えながら育てられたのか。一緒に書を書き、見つけた才能をどう導いてこられたのか。いや、持って生まれた能力と智恵がどのように花開いてきたのかを品格ある文章で知ることができた。

 翔子さんは「遠い未来を想って不安になったり、恐れたりしない」という。「過去を振り返り、悔やんだりなどもしません。その刻(とき)その刻を一〇〇パーセントの久遠に生きているのです」。

 その書はエネルギーに満ちている。元気になれそうなのだ。そこには神様からの授かりものを持った一人の女性がいる。般若心経に何度も何度も挑み、ついに書き上げたとき、「ありがとうございます」と感謝を語った翔子さん。「笑」という字はいつも微笑みを忘れない人柄を映しているようで素敵だ。

 「俗世に欲望のない無心な翔子の心には、『人に喜んでもらいたい』という愛だけが満ちています」

 人は皆、何かの宝を持っている。小さなものかもしれないが、それを見つけ、大切にしていきたい。年のはじめ、トンネルの先にささやかな光を見つけた思いがした。

  奈良市 吉岡順子 73

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