強制不妊手術 きょう一斉提訴

強制不妊手術、きょう一斉提訴 国の政策…「人生返して」

強制不妊手術、きょう一斉提訴 国の政策…「人生返して」

 旧優生保護法(昭和23〜平成8年)下で障害者らへの不妊手術が繰り返された問題で、北海道、宮城県、東京都の被害者3人が17日、国に損害賠償を求める訴訟を各地の地裁へ一斉に提起する。東京地裁に提訴する男性(75)は産経新聞の取材に応じ、「人生を返してほしい」と長年苦しんだ胸の内を吐露した。旧法をめぐって、国は「当時は適法だった」と釈明するものの、ずさんな手続きが次々と明らかになっている。

 「まさか国が進めた手術とは」。東京地裁に訴えを起こす男性は1月、旧優生保護法下で障害者らに不妊手術が繰り返されていたことを報じる新聞記事を見て、14歳で受けた手術の意味を知った。28歳で結婚したが子供は授からず、妻は5年前に亡くなった。生前、知人の子供に見せていた妻の笑顔を浮かべると悔しさがこみ上げる。

 「お前が受けたの、子供ができなくなる手術だぞ」。仙台市の児童養護関連施設にいた中学2年の頃、施設の先輩にこう聞かされた。男性に障害はないが、複雑な家族関係を背景に友人とトラブルを起こすなどして施設に入所。「悪いところがあるかも」と職員に連れて行かれた病院で突然、背中に麻酔を打たれ手術が始まった。

 「なんで手術を受けさせられたんだろう」。術後約2週間は下腹部がひどく痛んで歩けなかった。正式な説明はなかったが、元の体に戻らないことは感づいていた。手術は施設や親が独自に受けさせたものだと思い、信頼していた大人に裏切られたと傷ついた。

 独身で生きようと決めていたところ、縁談が持ち上がった。一緒に暮らすうちに妻に愛着がわき、打ち明けられなくなった。「話せば別れは確実だと思った」。子供を授からず、不思議がる妻を適当な言葉でごまかした。妻の親族にも「なんで子供ができないの?」と聞かれ、知人の女児を喜んであやす妻の姿からは思わず目を背けた。

 ようやく打ち明けたのは平成25年5月13日。白血病で余命わずかと宣告された妻と病室で2人きりになったときだ。静かにうなずいた妻は「それよりもご飯をちゃんと食べてね」と告げ、数十分後に息を引き取った。

 今も「妻は自分と結婚して幸せだったか」と自問する。手術が旧法下の国の政策だったと知り、「人生を返してほしい」との思いが強まった。

 弁護団によると、男性の手術記録は見つかっておらず、下腹部に残る2本の傷跡や家族の証言を主な証拠にするという。「手術を受けた人たちの将来を国は考えてはくれなかったのか、と問いたい」。男性はそう訴えた。

【用語解説】旧優生保護法

 「不良な子孫の出生防止」という優生思想に基づく目的を明記。ナチス・ドイツの「断種法」の考えを取り入れた国民優生法が前身で、知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に本人の同意がなくても不妊手術を認めた。ハンセン病患者は同意に基づき手術された。「障害者差別に当たる」として平成8年に「母体保護法」に改正。欧米諸国にも同様の法律があった。

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