歌会始の儀での天皇、皇后両陛下と皇族方のお歌、入選者らの歌は以下の通り(仮名遣い、ルビは原文のまま)

 天皇陛下

 学舎(まなびや)にひびかふ子らの弾む声さやけくあれとひたすら望む

 皇后陛下

 災ひより立ち上がらむとする人に若きらの力希望もたらす

 秋篠宮さま

 祖父宮(おほぢみや)と望みし那須の高処(たかど)より煌めく銀河に心躍らす

 秋篠宮妃紀子さま

 高台に移れる校舎のきざはしに子らの咲かせし向日葵(ひまはり)望む

 秋篠宮家長女眞子さま

 望月に月の兎が棲まふかと思ふ心を持ちつぎゆかな

 秋篠宮家次女佳子さま

 六年間歩きつづけし通学路三笠山(みかさやま)より望みてたどる

 常陸宮妃華子さま

 ご即位の儀式に望みいにしへの装ひまとひ背(せ)なを正(ただ)せり

 寛仁親王妃信子さま

 雪襞(ゆきひだ)をさやかに望む富士愛(め)でて平和な御代のはじまりにあふ

 三笠宮家彬子さま

 言の葉のたゆたふ湖の水際から漕ぎ出ださむと望月の舟

 高円宮妃久子さま

 サッカーに関はりたれば五輪への出場国をひた待ち望む

 高円宮家長女承子さま

 初めての展望台にはしやぐ子の父母とつなぎあふ小さな両手

 【召人】

 栗木京子さん

 観覧車ゆふべの空をめぐりをりこれからかなふ望み灯して

 【選者】

 篠弘さん

 書き上げし稿(かう)祈りてはファックスす望外なことを近頃はじむ

 三枝(さいぐさ)●(昴の異体字)之(たかゆき)さん

 丘陵に街に暮らしの歩をとめて人は仰げり望月立てり

 永田和宏さん

 なだらかな比叡の肩を照らしつつ昇る幾望(きばう)の、はた既望(きばう)の月

 今野寿美さん

 港から汽笛とどけば手にとれる望遠鏡なり蝶々夫人も

 内藤明さん

 新しき靴履きて立つ街角にわが望郷の方位をさがす

 【入選者】(年齢順)

 三重県 森紀子(としこ)さん(75)

 茶刈機のエンジン音は響(ひび)かひて彼方に望む春の伊勢湾

 埼玉県 若山巌さん(74)

 百アールの田圃アートの出来映えを眺望するに櫓を組みぬ

 東京都 保立牧子さん(70)

 創薬の望みを託す天空の「きぼう」の軌道に国境はなき

 福岡県 石井信男さん(65)

 息を止め望遠鏡で本物の土星の環を見た夏の校庭

 福岡県 粟屋融子さん(61)

 ランドセルは●(海の旧字体)渡りゆくアフガンの子らの希望を抱き留むるため

 長崎県 柴山与志朗さん(60)

 望(もち)の日は漁師の父が家にゐて家族四人で夕餉を囲む

 山形県 村上秀夫さん(56)

 それぞれに月傾けて子どもらは墨くろぐろと「望」の字を書く

 神奈川県 森教子さん(49)

 今よりも人々の文字うつくしき平和を望む戦時下の日記

 大阪府 土田真弓さん(33)

 眺望はどうだ晩夏に鳴く蝉を咥へて高く高く飛ぶ鳥

 新潟県 篠田朱里(あかり)さん(17)

 助手席で進路希望を話す時母は静かにラジオを消した