新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、国際オリンピック委員会(IOC)が、東京五輪の開催時期について延期も含めた検討に入ったことが23日、明らかになった。「仕方がない」「これからどうなるのか」。開催地の東京都や「復興五輪」を待ちわびる東日本大震災の被災地の関係者らは一定の理解を示す一方、先行きが見通せない状況に不安を募らせた。

 ■東京都

 「さまざまなシナリオを検討する中で、その言葉(延期)も入ってくるのではないか」。東京都の小池百合子知事は、IOCが4週間以内に結論を出すとしたことについて報道陣に問われ、こう応じた。

 IOC側が五輪中止は議題にしないとした点に触れ「これまでも『中止はありえない』と言ってきた。その点については同じ考えだということが共有できた」と強調。今後について「どういうシナリオが可能なのか、IOCや大会組織委員会などとしっかり交渉したい」と述べた。

 都は五輪に向け、1300億円以上を投じ、6つの競技会場を新設。延期となれば大会後の利用が遅れ、維持管理費が膨らむことも想定される。

 五輪を担当する都幹部は「国際的にスポーツ団体から延期を求める声が上がり、世論も慎重意見がある。予定通りの開催は現実的でなくなってきた」としつつ、「延期の場合は課題の洗い出しが必要になる」と困惑。ある自民都議も「施設に関する費用がどれくらいになるのかが、一番の懸案材料となるだろう」と表情を曇らせた。

 ■被災地

 今回の五輪は、9年前に発生した東日本大震災からの復興を発信する場とも位置づけられてきた。「延期ありき」の方針に被災地からは複雑な声が上がった。

 26日にJヴィレッジ(福島県楢葉町、広野町)でスタート予定の聖火リレー。同県オリンピック・パラリンピック推進室の佐藤隆広室長は「今のところ組織委から(変更などに関して)連絡はない」と困惑気味に話し、「日々刻々と変化する状況を把握したい」と述べるにとどめた。

 一般公募の聖火ランナーとして宮城県石巻市内を走る黒沢健一さん(49)は「延期となれば残念だが、復興を祈って五輪を見守る気持ちは変わらない。選手が万全の状態を整え、みんなが納得する時期に開催することが一番重要だ」と語った。

 津波で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市で高田松原の再生に取り組むNPO法人「高田松原を守る会」の鈴木善久理事長(75)も「残念だが、延期もやむを得ない。とにかく一日も早い収束を願うばかりだ」と悔しそうに話した。

 ■チケット

 4カ月後に迫った開幕に向け、すでに競技のチケットを入手した人々も不安を隠せない様子。サッカーの予選など複数のチケットを購入している東京都内の女性公務員(45)は「楽しみにしていたので悲しい。チケットの利用規約などを細かく読んでおらず、延期後の大会に振り替えや返金があるのかも分からない」と打ち明けた。

 陸上競技の決勝のチケットが当たった都内の30代の男性会社員は「希望者は同じチケットを買えるようにするか、他競技のチケットに切り替えられるなどの優先的な権利がほしい」と要望。土日の競技を選んで申し込んだといい「延期で日程が変わって平日になると行けなくなる可能性もある」とため息をついた。

 一方、バスケットボールのチケットを購入した静岡県の70代男性は「ニュースなどを見ていても、延期はやむなしだと思っていた。世界的に落ち着くまで我慢するしかない」と話した。