【関西プチ遺産】法隆寺、法起寺とともに忘れてはいけない「法輪寺三重塔」(奈良県斑鳩町)

【関西プチ遺産】法隆寺、法起寺とともに忘れてはいけない「法輪寺三重塔」(奈良県斑鳩町)

 斑鳩の里を歩いてきた。まず法隆寺の五重塔が迎えてくれる。少し足をのばして法起寺へ。ここは三重塔。斑鳩には忘れてならないもう一つの塔がある。法輪寺の三重塔である。

 法隆寺、法起寺は古代からの塔。現在の法輪寺の塔は昭和50(1975)年に再建された。新築の塔であるが、今ではすっかり落ち着き、斑鳩の欠かせない風景となっている。

 この塔は飛鳥時代、7世紀に建立され、江戸時代の初めまで当初の姿を保っていたようだが、正保2(1645)年に大風のために三重塔の一番上の屋根が吹き飛ばされてしまった。一時期、三重塔であったことも忘れてしまったようである。貝原益軒(かいばらえきけん)『大和廻(やまとめぐり)』(1696年)には「三井の法輪寺 聖徳太子の建立なり。五重の塔、三重は崩れて二重残れり」と、五重塔が崩れて二層だけが残っているとの記述がある。

 90年余り後、元文2(1737)年に修築されたのだが、昭和19(1944)年7月21日に落雷によって消失してしまった。お寺の努力により昭和41年に用材のヒノキの準備も完了したが、資金難となり再建工事は中断してしまう。この時、資金集めに奔走したのが幸田文さん。父は『五重塔』の幸田露伴。「親が紙の上に文字で建てた塔のおかげで、ごはんを食べてきた私なんです。…これはもうお手伝いしなきゃならない」と(「塔のこと」幸田文全集22巻、初出1973年)。

 私も高校生の時、基壇の上に横たえられた太いヒノキの材を目撃したことを思い出した。(伊藤純)

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