25年前の1月17日、6千人を超える人々の命が失われた阪神大震災が起きました。災害が多発する日本に住む私たちにとり、各地の被災地を忘れないことは、記憶を継承するという意味だけでなく、命を守るための教訓にもなります。そこで大阪の書店員(スタンダードブックストア=移転のため休店中=代表・中川和彦さん▽紀伊国屋書店天王寺ミオ店・此川洋平さん▽ジュンク堂書店大阪本店・持田碧さん)の皆さんに「災害の記憶」をテーマに本を選んでいただきました。(司会は大阪文化部・渡部圭介)

 持田 私が選んだのは『生き残る判断 生き残れない行動』(アマンダ・リプリー著、ちくま文庫)です。災害や事故、9・11(米同時多発テロ)などの事件で生き残った人たちにインタビューした本です。

 渡部 人間は身近に起こるかもと思いつつ、でも「自分は大丈夫だろう」と考えてしまうもの。こうした体験談は貴重です。

 持田 「すごい」と感じたのが9・11で数千人いた従業員の大半が助かった証券会社の話。非常階段の位置を知っていたし、階段では上層の人を優先する行動を取りました。というのも、会社の警備員が日ごろから避難訓練を徹底していたそうです。みんなから「またかよ」と面倒くさがられていたそうですが…。

 此川 避難訓練は大事ですね。私の職場があるビルでも訓練はありますが、各テナントから代表者が出ればいいという感じです。今の話を聞いて、非常口を再確認しようと思いました。

 持田 災害や事故、テロは怖い。でも生存者が何をしたか、パニックになった人はどう行動したかを頭にちょっとでも入れておくと、自分の身に危険が迫ったとき、取れる行動も変わると思うんです。表紙やタイトルのイメージとは違い、自分のこととして、前を向いて考えようという印象も抱きました。

 此川 過去から学ぶという点では、僕が選んだ『天災から日本史を読みなおす』(磯田道史著、中公新書)も同じです。磯田先生が記憶を継承、勉強するために書いた本で、災害を記録した古文書を読み解いたり、実際に現地に行ってみたりしています。歴史を学ぶ、過去の災害を知ることは「備え」になると思います。

 中川 そういうのを学校の歴史教育でも深く教えたらいいのに。

 此川 地元の歴史を学ぶ意味はこういうところにある気がしますし、災害への備えという点で書店ができることもあるのだなと気付かされました。

 持田 地域ごとにそういう本があるとありがたいですよね。

 渡部 「もう2冊」にある『呼び覚まされる 霊性の震災学』は中身が気になるタイトルです。

 此川 大学生たちが東日本大震災の被災地で調査してまとめた論文集です。興味深かったのはタクシーに乗せたはずの客がいなくなったという体験をした運転手がいる点です。

 渡部 いわゆる心霊体験ですか。

 此川 でも「幽霊」と片付けたら、震災の犠牲者や遺族の思いは理解できない。学生たちは関係者に畏敬の念をもって話を聞いているなと感じましたし、そういう現象が起きてもおかしくないと思いました。特に東日本大震災当時は関西にいたので、現地の空気をすごく感じられました。

 中川 僕が選んだ『アフターマス 震災後の写真』(飯沢耕太郎、菱田雄介著、NTT出版)にもつながるなぁ。発生直後の写真はひとしきりメディアで報道された後、写真集にもなるけれど、被災者にとってはその後がものすごく大変。本ではそうした記録もしっかり残さないといけないと書いている。

 渡部 いつまでも忘れてはいけない、という強い思いを感じますね。

 中川 でも、こういう写真集ってあまり売れないんですよ。例えば広島の原爆ドームは残すことに遺族や被爆者のさまざまな思いがあったはず。でも今、核兵器の悲惨さを伝えるモニュメントになってますよね。こうした写真集や体験をまとめた本は、後世に教訓を残すモニュメントになりうると思います。

 [おおすめ!もう2冊]

 ■中川さん選

『アルバムのチカラ』著/藤本智士(赤々舎)

『凹凸を楽しむ 大阪「高低差」地形散歩』著/新之介(洋泉社)

 ■此川さん選

『呼び覚まされる 霊性の震災学』編/金菱清ゼミナール(新曜社)

『崩れ』著/幸田文(講談社文庫)

 ■持田さん選

『ヨブへの答え』著/カール・グスタフ・ユング/、訳/林道義(みすず書房)

『メンタルが強い人がやめた13の習慣』著/エイミー・モーリン、訳/長澤あかね(講談社)