【中東混沌2017(1)】 IS壊滅、トランプ氏がカギ 米露連携なら有志連合に亀裂も

【中東混沌2017(1)】 IS壊滅、トランプ氏がカギ 米露連携なら有志連合に亀裂も

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)がシリアでの“首都”と位置付ける北部ラッカ。トランプ米大統領の20日の就任式を前に、「ラッカ攻撃は近い」という緊張感が漂う。

 ラッカはISの完全支配を受けて3度目の新年を迎えた。米国主導の有志連合やロシア軍の空爆で橋や道路は破壊され、ISの機動力は低下。進軍に向けて、米軍が支援する少数民族クルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)は市の周囲で着々と準備を進める。トランプ氏は「IS打倒」を公約し、攻撃を強化する構えだ。

 「空爆で医者はみんな逃げた。薬も手に入らない」。ラッカの男性住民は、こう憤った。外国メディアとの接触がISに露見しないよう匿名を条件に電話取材に応じた。ISは空爆被害者の遺族に接近して米国やロシアといった異教徒への「復讐(ふくしゅう)」を呼び掛け、戦闘員や協力者を勧誘しているという。

 「生活は苦しいしISもベストではない。だが、自分の町が破壊されるのは望まない。次に良い支配者が来るとは限らないし…」と不安を語った。

    ■  ■

 IS壊滅に向けた攻撃は今年、正念場を迎える。

 ISは2014年にイラク北部モスルを掌握。そこからシリア北部一帯まで支配を広げ、過激なシャリーア(イスラム法)解釈に基づく統治を行った。女性に顔を覆うベール着用を強要、礼拝時間を守らない住民に厳罰を科した。徴税制度や行政機構を整え、擬似(ぎじ)的な国家を作り上げた。

 15年以降は有志連合の空爆が本格化。昨年10月にはイラク軍などがモスルで奪還作戦を開始した。16年の最初の9カ月で支配地域の16%を失ったとされる。

 経済封鎖で原油密輸などの収入も激減しているもようだ。モスルを最近脱出した住民の男性アブーエマドさんは「公共サービスはほぼ機能していない」と話す。

 一方、トランプ大統領の就任は不安をはらむ。トランプ氏はロシアのプーチン大統領との関係修復をめざし、「IS打倒の助けとなる」として協力を模索する。だが、有志連合に参加するサウジアラビアなどアラブ諸国は、シリア情勢などへのロシアの介入を嫌っており、軋轢(あつれき)が生じる可能性がある。

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 年明けの1日未明、トルコの最大都市イスタンブールにある高級ナイトクラブで、男が客に銃弾を浴びせた。死者は39人に上った。

 年末年始のテロを警戒し市内に1万数千人を配備していた警察当局をあざ笑うかのような凶行。ISは同国へのテロでは異例の犯行声明で戦果を誇示した。

 支配地域が減少したISは、テロの多用に戦略をシフトしていると指摘される。有志連合に加わる米欧も標的だ。130人が死亡した15年秋のパリ同時多発テロ、ベルリンで昨年12月に起きたトラック突入テロで犯行声明を出した。

 ISの最大の特徴は、既存の国境や国家体制を否定し、各国から集まった民兵部隊を動員した「面」でのジハード(聖戦)を目指したところにあった。その戦略は崩れつつあるが、敵の懐をテロという「点」で刺し、巻き返しを狙うしたたかさは失っていない。(カイロ 大内清)

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 米国の政権交代で、混迷する中東はどう変わるのか。トランプ新政権を待ち受ける課題を検証する。

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