拉致被害者家族会の初代代表として救出運動の先頭に立ってきた横田めぐみさん(55)=拉致当時(13)=の父、滋さんの死去を受け、遺族に弔意を寄せたトランプ米大統領は拉致解決を誓い、手紙でも激励するなど家族に「共闘」の姿勢を示してきた。

 「拉致問題は私の頭の中に常にある」。昨年5月、東京・元赤坂の迎賓館で家族と面会したトランプ氏はこう断言した。平成29年に続き2度目の対面となった家族らと向き合い、「きっと会える」と励ました。

 拉致に関心を寄せる米大統領は過去にもいた。18年に訪米した早紀江さんとホワイトハウスで面会したジョージ・W・ブッシュ元大統領は「国の指導者が拉致を奨励するのは心がない」と指弾。協力を約束した。

 26年に来日したオバマ前大統領も滋さん、早紀江さんら家族と面会。「政治家ではなく娘2人を持つ親の立場として許せない」などと北朝鮮を非難した。ただ長年、米朝交渉の主題は北朝鮮の非核化だった。

 こうした中、トランプ氏は被害者家族と面会後の30年6月に行われた史上初の米朝首脳会談で金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に拉致解決を提起。昨年2月の会談でも「顕著な進展を見せていない」と迫った。

 トランプ氏は昨年6月、有本恵子さん(60)=同(23)=の父、明弘さん(92)に手紙を寄せた。同年5月の訪日時、明弘さんが米関係者に託した被害者救出を切望する手紙に応え「全力を尽くしています。あなたはきっと勝利する」と激励。明弘さんは「解決が近づいているように感じた」と涙を拭った。

 だが、米朝の交渉は停滞し、北朝鮮は軍事的緊張を高めて譲歩を引き出す伝統的な「瀬戸際外交」に回帰。弾道ミサイル発射など挑発を繰り返す。

 米国も新型コロナウイルスの感染者、死者数がともに世界最多に。警察官による黒人暴行死事件で抗議デモも各地に波及し、11月に大統領選を控えるトランプ氏は対応に追われている。

 安倍晋三首相もトランプ氏と連携し、北朝鮮との外交を模索するが、新型コロナによる世界的混乱も相まって、拉致解決への直接交渉は実現していない。

 トランプ氏は書簡で「早紀江さんと滋さんのたゆまない活動によって拉致問題は日本と米国にとって優先課題であり続けている」とも記した。だが今年、明弘さんの妻、嘉代子さんも94歳で死去。救出運動を牽引(けんいん)してきた被害者の親世代で存命なのは早紀江さんと明弘さんだけになった。一刻も早い局面打開が望まれる。