「滴一滴」【山陽新聞】

映画化もされた東野圭吾さんのベストセラー「麒麟(きりん)の翼」は、胸を刺された男性が日本橋(東京都中央区)の上で力尽きる場面から始まる。タイトルが示す通り、事件の真相を解く鍵は、欄干の照明灯を飾る麒麟の青銅像である▼麒麟は中国の伝説などに登場する神獣で、鹿の体に竜の頭を持つ。日本橋の像に特有の翼には、日本の道路網の起点から全国に飛び立てるようにとの願いが込められているという▼そんな麒麟の像もより映えることだろう。石井啓一国土交通相は日本橋の上空を遮っている首都高速道路の地下移設に向け、具体的な検討に入る考えを示した。2020年の東京五輪後にも着工する▼日本橋を覆う高架は前回の東京五輪の「負の遺産」と言われてきた。五輪に間に合わせるため、用地買収の手間や費用を省ける川の上に造られたからだ。撤去構想が何度も浮上したが、ことごとく立ち消えになった▼問題は数千億円とされる費用である。かつての石原慎太郎東京都知事は「つまらん金をかけるより、日本橋を近くの川に移せばいい」と突き放した。今回も国と都、首都高速道路会社などの協議が焦点となろう▼どれだけのコストをかけるべきかは議論を尽くさねばなるまいが、後世に誇れる景観にはしたい。威厳に満ちた麒麟は、高い空に向かって羽ばたいてこそ絵になる。(2017年08月07日08時00分更新)

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