東京都内に四つある岡山県出身者ら向け男子学生寮が入寮生の募集を本格化させている。いずれも進学を機に故郷を離れ、都会生活を送る学生たちを長年支えてきた一方、近年は施設の老朽化やニーズの変化を背景に苦戦が続く。家賃が安く、自治の精神が育める共同生活空間という学生寮ならではの「看板」を前面に、アピールに力を入れている。

 れんが風のシックな外壁が印象的な鶴山館(西東京市)は39室を備え、約20人を募集する。築30年余。最寄り駅からは徒歩15分と距離も少々あるが、歌舞伎鑑賞、大相撲観戦など随時催す文化に触れる独自行事、夜間を含め平日に常駐者がいる安心感が魅力だ。

 「郷土ゆかりの著名人らを招いての講演会も開いており、学生に好評だ。閑静な住環境と合わせ、教養を身に付ける場として最適」と鶴山館理事の石黒將介さん(75)。今年は津山市で例年1回の入寮面接を2回に増やし、初めて岡山市でも実施するという。

 東京大本郷キャンパスなど高等教育機関が点在する文京区には15室の精義塾、17室の備中館の2寮があり、それぞれ7人程度、6人程度を募る。完成から各40年、60年を超える施設内では学生主体の運営が行われ、家族のような絆が生まれるのが特色だ。

 精義塾の大倉有紀也さん(21)=早稲田大4年=は城東高時代、寮生活の説明に訪れた現役寮生の気さくさや低家賃に引かれ、入寮を決めた。「先輩後輩を問わず強いつながりが生まれ、OBとの交流もある。ここでの生活は社会に出たときに必ず生きる」

 県育英会東京寮(港区)を含め、4寮ともインターネット利用環境や冷暖房が整い、月2万5千〜4万7千円程度(一部食費込み)という破格の家賃が最大の売りだ。入寮生主催の旅行、4寮対抗のフットサル大会など寮内外で横の交流を図る行事も好評という。

 一方、旧来型の設備を敬遠する声も少なくない。各寮とも風呂・トイレは共同タイプ。学生情報センター(京都)が管理運営する学生向け物件の入居者を対象とした昨年11月の調査では、部屋を決めた理由(複数回答)で「(室内で)バス・トイレ別」が2位に食い込み、住環境を巡る現代の学生ニーズとの違いを浮き彫りにする。

 45室を備える東京寮は築50年。JR品川駅に程近い好立地ながら空き部屋が多く、約40人を募集する。住み込みの寮長川元啓二さん(62)は「集団生活は制約もあるが、規律を学び、自治の精神を育むことができる」とメリットを強調する。