「水害の時は復興に向けて前進している手応えがあったが、今回は手の打ちようがない」。日の丸タクシー(倉敷市真備町有井)の平井啓之社長(48)が肩を落とす。

■キャンセル100件

 同社は2018年夏の西日本豪雨で、保有するタクシーとバス計54台の7割に当たる39台が水没。車両を約1年かけて買い直すなどし、事業が軌道に乗ったのもつかの間、今回の新型コロナウイルス禍に見舞われた。

 深刻なのは観光バス事業。2月下旬からキャンセルが目立ち始め、政府がイベント開催の自粛と全国一斉休校を要請(同26、27日)したことで一気に加速した。地域の婦人会や老人会の旅行、学校の遠足や部活動の遠征、選抜高校野球大会に出場予定だった倉敷商高の応援バスも取りやめになった。

 その数約100件。「(人が)まったく動かない。リーマン・ショック(08年)の時も、こんなことはなかった」と平井社長。3月の売り上げは前年同期比9割減、4、5月も今のところ半減の見込みという。

 タクシーも、企業や住民が感染を避けて夜の懇親会や病院通い、買い物を控えがちになっているため、需要が減少している。

 「会社は大丈夫か」―。社内では不安の声も上がる。それでも、バスの運転手をタクシーに振り向けたり、休業手当の一部を助成する雇用調整助成金を活用したりして、全従業員78人の雇用は何とか維持している。

■二重苦

 政府は資金繰りを支援するため、無利子・無担保の融資などを用意した。ただ同社は、水害後の車両購入や社屋の改装に充てた借入金1億円余りの返済が残っており、「需要回復のめどが立たず、これ以上の借り入れは難しい」(平井社長)。当面は手元資金と、近く交付予定の補助金でやり繰りする方針だ。

 学校は新学期からの再開が決まったが、景気回復の鍵となる東京五輪・パラリンピックは1年程度延長される見通しとなった。感染拡大はいつ終息し、需要はいつ戻るのか…。豪雨とコロナの二重苦を背負い、我慢の時が続く。