炭鉱を知らない世代に石炭産業の歴史や文化を伝えていこうと、福岡県田川市の石炭・歴史博物館が、デジタルミュージアムの展開を始めました。パソコンやスマートフォンから特設サイトのバーチャルツアーを楽しめたり、館内に新設したVR(仮想現実)シアターの映像で当時の坑道に潜る疑似体験ができたりします。


まずはネットで散策

 炭都として栄えた田川には、筑豊地方の主要炭鉱の一つ、三井田川鉱業所伊田坑がありました。地下に無数のトンネルが張り巡らされ、石炭を掘り出していました。閉山後、跡地には石炭記念公園が整備され、園内の博物館がその歴史を伝えています。

 来館者の年齢層は高くなっているそうです。そこで、若い人にもまちの歩みを知ってもらおうと、同館は特設サイト「田川市石炭・歴史博物館デジタルミュージアム」をつくりました。博物館や公園内を特殊なカメラで撮影・合成し、現地の様子をリアルに再現した画像を「3Dビュー」としてインターネット上で公開しています。

 ネット上に現れる公園や博物館は、非公開の場所も見て回ることができます。例えば、公園のシンボル「二本煙突」。3Dビューでは、そびえ立つ煙突の内部まで進み、煙で黒ずんでいる中の様子を見学できます。

 普段は立ち入ることができない蒸気機関車の運転席からの景色も楽しめます。マウスなどを操作すれば、周辺360度を見渡せます。

 特設サイトは、まず博物館に興味をもってもらい、来館を促すことが狙いです。3Dビューのほか、博物館の公式YouTubeチャンネルにアップした動画を案内し、展示に関連するクイズも用意しています。


博物館で当時を体感

 デジタルミュージアムの取り組みでは、VR技術などを使ったシアターを館内に設けました。シアターで上映する6分間の映像は、4台のプロジェクターで天井や壁、床に当時の様子を映し出し、炭鉱マンの仕事ぶりを立体的に感じ取ることができます。

 映像は、垂直の坑道・竪坑(たてこう)の跡からタイムスリップし、地下300メートル超の坑内に下りていくストーリー。昭和初期の三井田川鉱業所がモデルで、炭鉱マンとともに採炭の現場に臨み、一日の仕事を終えて坑外に戻るまでを体感できます。

 同館の森田竜治館長は「今の若い人たちに、炭鉱が繁栄していた頃の歴史や文化、伝統を学んでほしい」と話しています。