2年で58カ国への出荷を実現した越境ECパワー Ritz 

 雑貨、化粧品、カラーコンタクトレンズ(カラコン)などの企画・開発・販売を手がけるRitzの清水厚芳社長が、〝越境EC〟という言葉にはじめて触れ、その将来性を確信したのは、2015年あたり。知り合いのバイヤーを通じて、中国のECサイト「bolome(ボロミー)」への商品供給をスタートした頃だった。
 「ボロミーでは、とにかくすごい勢いで売れていきました。流通総額が1カ月で1億円近くになることもあったほどです」(清水社長)
 しかし売り上げの割には利ざやが薄い。相手は巨大なグローバル企業だけに、価格等の条件交渉が厳しいのだ。企業としての図体は大きくなるが、その分、リスクは増えるばかり。「このままでは危ない」と結局手を引くことになる。
 実はその2、3年前、前職において東京ガールズコレクションと合同でタイのジャパンカルチャーイベントへ合同出展したり、台湾、香港といった国にも同様の展開を仕掛けた際、自社で取り扱う製品がアジアの若者にも必ずうけるという手応えを得ていた。
 ただ、当時は現地の実店舗への展開しか想定していなかったためハードルが高すぎた。行政の許認可を得て、正規の輸出手続きを行い、代理店や販売店を探す必要があるし、化粧品などは現地の法令に対応しなければならない。
 「当社の取引先は中小企業が多く、そこまでコストと手間をかけて販路開拓はできない」と半分諦めかけていた清水社長。そこに冒頭のボロミーである。開眼した清水社長は、中国市場こそ諦めたものの、別の形での越境EC事業を模索しはじめる。
 清水社長の背中を押したのは、中小企業基盤整備機構の「海外ビジネス戦略推進支援事業」だった。TPP参加国への輸出事業におけるマーケティング費用に助成金が出るという建て付けのこの支援事業。「中国以外」の国への越境ECビジネスを考えていた矢先のことだっただけに、これが〝渡りに船〟となる。

国内の越境ECモールを活用
 仕入先は問題ない。実は、清水社長は前職で、「渋谷109」の人気ショップ「SBY」を立ち上げ、成長させたという実績を持つ。その頃からの取引先はもちろん、若い女性の文化を先取りするような商品開発やマーケティングはそのままRitzにも受け継がれているために、同社の事業の信頼性と堅牢(けんろう)堅牢(けんろう)なビジネスネットワークには揺るぎがない。
 「ただ、自社運営の越境ECは全くの未経験。手探りでした。サイトづくりの問題もあるし、物流・通貨決済機能をどうするかも悩ましい。現実的に考えて外部のモールを利用した方がいいのかなあと……。かといって海外のサイトは情報面などでリスクがあります。そんなとき、たまたまベガコーポレーションという福岡県の会社とつながりができ、同社が上場する際の目玉事業として企画していた越境ECモール(国内サーバー)の立ち上げにかかわったのです」
 サイト名は『DOKODEMO』。2017年初頭にオープンし、国内では珍しい越境EC専門のモールとして、順調なスタートを切る。また、Ritzも同モール内に、『サクラギャラリー』という自社販売サイトを出店する。
 「独自ドメインでやりたいことをやろうとすると、サイト制作費などに700〜800万円かかり、集客もすべて自前。モール出店だと200万円程度で、モール事業者によるマーケティングによってある程度の集客は見込めます。スタートアップにはモール出店で十分という判断でした」
 目玉商品はカラコン。ちなみにカラコンは、2009年の法改正により、「高度管理医療機器」となり、医薬品医療機器等法の規制を受けることとなった。そのため、法知識などのノウハウときっちりとしたビジネスプロセスが必要で、そこが参入障壁ともなっている。当然、清水社長は早々に販売資格を取得している。
 そのカラコン販売に当たって、清水社長は米国、オーストラリア、カナダ、香港、台湾などに住む日本人、中国人、韓国人をはじめとするアジア系の若者という極めてニッチなユーザーターゲットを設定する。
 「当社の扱い商品は、欧米人向きではありません。カラコンの需要は、瞳の黒いアジア系の若者に集中しています。白人の瞳はもともと淡色なので、コスプレくらいしか用途がありません。スキンケア用品なども、アジア系の人向けの商品で白人の肌のコンディションに合わない。だからこそ、欧米に留学のために、あるいは永住権をとって滞在しているアジア系の人にとって、当社は便利な存在として認識されつつあるのです」
 マーケティングは清水社長の得意分野だ。たとえば「オーストラリアのシドニーに住んでいるファッションや美容に興味のある中国語を話す人は何人いるか」などといったリサーチを緻密に行い、ニーズを確認する作業も行った。それら情報をもとに、インスタグラムやフェイスブックなどのソーシャルメディアを活用したマーケティングを国ごとに展開。サイトの知名度向上を実現していく。
 結果、Ritzの越境EC事業は、スタートしてわずか2年で出荷実績が58カ国を突破。「他部門へのシナジー効果も大きい」と清水社長は言う。

さらなるステップアップへ
 そもそも、同社の事業には三つの柱がある。①商品の企画・開発・マーケティングについてのブティック(専門店)型コンサルティングサービス②広告代理店業、そして③越境EC事業である。③の成功は、メイン事業である①の強化にもつながる。つまり「自社チャンネルを持つことで、商品の販売傾向や消費者の嗜好などの生きた情報が手に入るので、それをメイン事業に生かすことができる」(清水社長)というわけだ。
 さて、Ritzでは今年、さらなるステップアップ戦略の実施が予定されている。
 東南アジア最大のECサービスであるショッピ-への出店、さらに、ウイチャット上に自社サイトをオープンして、中国市場攻略へも乗りだす計画だ。いったんは諦めた中国市場だが、今年1月の電子商取引法の改正(4月1日施行)により、〝爆買い〟で仕入れを行うソーシャルバイヤー(代理購入)の激減が確実となり、法人サイトへのニーズの増加が見込まれるためである。清水社長は言う。
 「ショッピーではすでにアカウントを取得(日本企業で数社目)し、現在出店準備に入っています。また、ウィーチャットでの自社サイト展開においても、改正電商法に対応できる物流大手企業と提携し、物流・決済インフラを構築済み。今後が楽しみです」


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