「みそ」の可能性を追求し新しい顧客層を開拓する  神州一味噌

 食卓に彩りを与える日本の伝統食品──「みそ」。市場規模は拡大傾向にあり、各社がしのぎを削るなか、業界の先駆けとなる取り組みを繰り返し行うことで存在感を示す企業がある。創業約360年の歴史を持つ神州一味噌だ。さまざまな「業界初」の取り組みにより、市場を切り拓いてきた同社の商品開発戦略に迫る。

 神州一味(みそ)噌(みそ)は1662年創業の老舗企業である。長野県上諏訪の造り酒屋として長らく親しまれてきたが、「人々の健康に貢献したい」との思いから、造酒で培われた醸造技術を応用し、みその製造を開始した。1916年のことである。社名の「神州一味噌」は製品のブランド名でもあり、その歴史は100年を越える。業界での立ち位置について、町田卓也常務執行役員・マーケティング本部長はこう話す。
 「当社には長い歴史がありますが、みそを手掛けた期間は他社と比べて浅い。だからこそ、常にチャレンジャーの気持ちで製品開発に取り組んでいます」
 挑戦者精神を育む企業風土は、イノベーションの源泉となる。
 1952年に業界で初めて「ビタミン配合みそ」を製造販売。みそは栄養価の高い食品ではあるものの、ビタミンの含有量は少ない。栄養失調が社会問題になる中で、さらに栄養価の高いみそを提供し、「人々の健康を支えたい」という思いを形にした。みそ本来の「くせ」の無さから他社に否定されたこともあったが、販売が始まってしばらくすると評価は一変。健康食品としてのこだわりとあっさりした風味が好評を博し、一般家庭に広く浸透した。
 こだわったのは、中身だけではない。
 「業界に先駆けてビニール詰めにして販売しました。当時はみそが入った桶(おけ)を長野から東京まで輸送し、酒屋の店頭で量り売りするという形態が主流でしたが、これでは保存状態が良くない上に途中で事故に遭うと製品自体が駄目になってしまう。もっと手軽かつ安全に提供できる方法を考えた結果、ビニール詰めでの販売に行き着きました」(町田常務)
 こうしてビニール詰め戦略も成功を収める。「みそを安全かつ手軽に提供したい」という思いがイノベーションを生み出したのだ。
 そのほか、イメージキャラクターの採用、テレビコマーシャルでの宣伝など、今では当たり前のように行われている戦略にもいち早く取り組んだ。特に、イメージキャラクターは海外での評判も良く、国境を越えて愛されるきっかけになったという。
 海外展開にも他社に先駆けて着手している。1991年、業界で初めて米国に営業所を開設すると、これを皮切りに中国や東南アジアにも拠点を設立。その後も海外市場を順調に開拓し、2015年には業界初となるインドネシアハラル認証を取得。今後は中東や西アジアなどのムスリム地域への展開を目指す。
 「私たちはみそ業界ではまだまだ〝新参者〟ですから、周りと似たような取り組みをしていては激化する競争に太刀打ちできません。だからこそ、社会の変化を敏感に捉え、商品開発や販売戦略に反映する必要があるのです」(町田常務)

みその可能性を伝える
 生みその生産量が年々減少傾向にあるなかで、フリーズドライや業務用製品は増加している。これは、調理の手間を省きたいというニーズと、みそ汁を生みそから作らない単身世帯の増加が原因と、同社では分析する。
 その結果、生まれたのが「パパッと味噌パウダー」だ。この製品は、だし入りみそを粉末状にしたもので調理の手軽さが特長。仕事や子育てで忙しい20〜40代をターゲットにしている。
 「単身世帯や共働き世帯の増加に伴い、賢く手早く調理したいという欲求の高まるなかで、生みそだと面倒だという意見が数多く寄せられるようになってきました。そんななかで、どうすれば使ってもらえるかを研究した結果、パウダー状にしてボトルに詰めて販売するという結論に落ち着きました。簡便さと汎用(はんよう)性の高さを追求したのです。パウダーみそは他社がすでに販売していますが、ボトルという形で一般家庭向けに提供するのは業界では初めてです」(町田常務)
 片手でつかみやすいように容器に「くびれ」を持たせ、内容量含めて200グラム以下という軽さを実現。また、料理の絵をパッケージにデザインし、用途を具体的にイメージできるよう工夫した。購買客が実際に手に取って、使いやすさや調理のイメージを喚起させることが販売促進につながるという仮説を形にしたのだ。中身も、香りと栄養成分保持に優れたフリーズドライを採用し、おいしさの追求や調味料としての汎用性の高さを志向した。
 「最近では、みそはみそ汁だけに使われることが多いようですが、幅広い料理に使える汎用性の高さも特長です。みそが持つ可能性を広く伝えること、これが私たちの使命です。みそがさまざまなレシピに使えることをアピールして、新しい食文化を提案したいと考えており、パパッと味噌パウダーはそのきっかけになればと思います」(町田常務)
 過去、多くの失敗を経験してきた、と町田常務は語る。ただ、失敗を恐れなかったからこそ、さまざまなイノベーションを生み出すことができた。「新参者」であるという自己認識が挑戦者精神を育む企業風土に昇華し、革新を生む源泉となったのだ。

COMPANY DATA
神州一味噌株式会社
創 業 1662年
所在地 東京都東久留米市前沢3-15-8
売上高 60億円
社員数 299名
URL https://www.shinsyuichi.jp/


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