石川県金沢市にあるクラスコは綿密なブランディング戦略やITツールの徹底活用で会社のイメージを一新した。その背景には「非効率業務やマンパワーに頼りがちな不動産業界の働き方に一石を投じたい」とする小村典弘(よしひろ)社長の強い信念があった。

 創業は1963年。地元の賃貸物件の管理・仲介を取り扱う〝街の不動産屋〟としてスタートし、現在は注文住宅の建築・販売、リフォーム、リノベーション、不動産テックの開発など幅広い事業を行っている。近年特にウエートを置いているのがクラスコのサービス、ノウハウを全国の不動産会社に提供する「フランチャイズ事業」。築古物件のリノベーションを扱う「Renotta(リノッタ)」や空室に悩む物件オーナー向けのコンサルティングサービス「満室の窓口」などをFC展開することで、住宅の老朽化や空室の増加といった業界特有の課題だけでなく、サービスの充実や業務プロセスの改善などフランチャイジーが抱える課題の解決にも力を注いでいる。
 「『リノッタ』は営業手法、デザイン、プロモーションなど物件をリノベーションするにあたって必要なノウハウや技術を提供するサービスで、『満室の窓口』は不動産テックを駆使して物件の空室改善を支援するサービスです。これ以外にも当社は不動産に関する21の商品・サービスを展開しており、これらをパッケージングした『TATSUJIN(タツジン)』も提供し、好評を博しています」(小村社長)
 今でこそ革新的なサービスを矢継ぎ早に仕掛け、不動産業界の底上げに貢献しているクラスコだが、かつては旧来的な働き方が会社全体に蔓延(はびこ)っていた。業務効率が悪く、長時間労働は日常茶飯事。社内のあちこちに紙の資料が散在し、率先して片づける者もいない。社有車も汚れたまま放置。挙句の果てには物件の相談に訪れたお客に飲み物を出さず、営業担当者は悠々とコーヒーを飲みながら接客する……といったことが、さも当然のことであるかのように行われていた。当然、従業員の定着率も芳しくなかったが、現状を変えようとする動きは見られなかったという。
 そんななか、小村氏は当時社長を務めていた父親(小村利幸会長)に請われる形で中途入社。これまでとの働き方の違いに「大きな衝撃を受けた」と振り返る。
 「不動産コンサルタントを経てクラスコに入社したのが1999年のこと。当時は会社のビルも年季が入っており、古い資料や使わなくなった備品がオフィスのあちらこちらに散在していました。長時間労働、休日出勤も当たり前。お世辞にも良い労働環境とは言えませんでした。当時、会長を中心にさまざまな業務改革を進めていきましたが、その傍らで自分なりの〝改革プラン〟を密かに思案していました。そして、2014年7月に社長に就任。以降、これまで胸に秘めていた改革プランを実行に移したのです」
 小村社長が真っ先に取り掛かったのが「ブランド力の強化」である。その先駆けとして、13年12月に社名を「タカラ不動産」から「クラスコ」に変更。「不動産会社の枠組みにとらわれず、役立つアイデアを次々と生み出す『暮らしのフラスコ』のような会社組織を目指す」という小村社長の思いを社名に反映することで、会社としての使命や目指すべき方向性を明確にした。
 あわせて、イメージカラーを「エネルギッシュな印象を醸し出す」(小村社長)オレンジに統一。社屋や名刺、社有車や管理物件の立て看板など人目につくものすべてに会社のロゴを入れた。
 「暮らしに役立つアイデアの実現に〝情熱〟をもって取り組む会社」というブランドイメージの浸透を図った。この作戦は見事的中。認知度が格段に上昇し、全国ネットのニュース番組でも「社名変更で知名度アップを実現した会社」として取り上げられるなど、今では地元・石川県を中心に絶大な存在感を放っている。
 「ブランド力の強化は地元の優秀な学生を採用するうえで大きな力を発揮しました。『アイデア実行企業』を標榜(ひようぼう)している分、クリエーティビティーあふれる学生が多く入社し、既存サービスの拡充や新規事業等の企画に反映されるなど好循環を生み出すことができています」(小村社長)

最新技術で生産性アップ
 続いて手をつけたのは長年の懸案事項だった業務効率の向上だ。小村社長はすべての部門で日常業務の棚卸しを実施。業務プロセスを細かく分解し、長時間を要する業務、効率の悪い業務を抽出。ITツールの活用や組織再編などあらゆる手段を講じて会社全体の生産性向上に取り組んだ。
 「例えば管理物件に異常がないかを確認する『物件点検』では、点検前の準備から物件のチェック、報告書作成など多くの時間を費やしていたので、これらの業務を効率化するアプリ(『きろくん』)を開発しました。アプリに入力した点検記録をもとに、結果のとりまとめや報告書の作成を自動で行うので作業効率が大幅に向上。これまでは一人当たり1週間に5時間程度割いていた物件点検ですが、今では30分ほどに短縮できています」(小村社長)
 営業スタッフも物件提案や内見に加え、見積書や契約書の作成といった複数の事務作業を掛け持ちしていたことで長時間労働を強いられていた。そこで、小村社長は新たに契約書類の作成やメンテナンスを専門で行う部署を設立。契約書関連事務を移管することで営業スタッフの業務量を大幅に削減した。
 これらの取り組みが功を奏し、かつて月平均で50時間を超えていた残業時間が20時間程度にまで削減。年間休日も80日から116日と大幅増を実現。まさに〝大改革〟を成し遂げたわけである。ところが……。
 「働き方をがらりと変えたことで拒絶反応を示す社員も多く現れました。なかには会社を去っていった人たちもいます。ただ、〝現状維持は衰退の第一歩〟という気持ちは私のなかに根強くありますし、当社には今でも多くの課題が山積しているので、スタッフたちとコミュニケーションを取りながら改善していきたいと思っています」(小村社長)
 とはいえ、社長就任以降右肩上がりで業績を伸ばしており、コロナ下では新たにウェブを活用したオンライン内見サービスを展開。今後も不動産業界の活性化に大きく貢献していくことが期待される。

COMPANY DATA
株式会社クラスコ
創 業 1963年12月
所在地 石川県金沢市西念4丁目24-21
売上高 42億8000万円(グループ)
社員数 184名(グループ)