お城のガイドや解説本はもちろん、小説から写真集まで、お城に関連する書籍を幅広くピックアップする「お城ライブラリー」。今回は、姫路城の「平成の大修理」にあらゆる角度から迫った『世界遺産 姫路城を鉄骨でつつむ。』をご紹介します。

日本一難しいといわれた工事に挑んだ職人たち
築城から400年以上の歴史を誇る堂々とした大天守が、無機質な鉄骨に覆われている。本書の表紙を飾る姫路城のその姿は一見奇妙で、見る者の目を留める。だが、奇妙さの中に不思議な調和がある。計算し尽くされた無骨な鉄の佇まいが、歴代の職人の知恵が詰まった城の機能美を際立たせているかのようだ。

5年半の歳月をかけて行われた姫路城の「平成の大修理」。その一大プロジェクトを追った本書では、鉄骨で大天守を囲い、屋根ですっぽりと覆う素屋根の完成から、鯱瓦をはじめとする瓦の葺替え、「白すぎ城」として話題を集める所以となった漆喰の塗替えなど、のべ2万8000人の職人が参加した作業の全貌が綴られる。

姫路城の修理は文化財保護法と消防法による規制から火気は使用できず、さらに世界遺産の規定から「形状・材料・工法・位置」を変えることができない。さまざまな規約を守りながらの作業は「日本一難しい」とさえ言われたほどだ。本書を読むと、この工事が「世界遺産に傷はつけられない」という厳しい緊張感のもと、無数の職人の手によって進められたことがわかる。たとえば、輝くような白さを印象づけた漆喰。これはただ表面に白い漆喰を塗れば良いわけではなく、100以上ある工程のうちの仕上げにすぎないという。屋根瓦にしても、7万4000枚の瓦を一枚ずつ下ろし、洗って、破損したものは寸分違わぬものを作って、また並べて……と、気の遠くなるような作業量だ。堂々たる城の姿が、いかに私たちが普段意識しない小さな作業の積み重ねで成り立っているかがわかる。その背景を知れば、城がもっと味わい深く、美しく思えてこないだろうか。