「抗体って何?」「集団免疫って何?」「ワクチンって何?」※写真はイメージです
「抗体って何?」「集団免疫って何?」「ワクチンって何?」※写真はイメージです

治療薬もない、ワクチンもない。そんな新型コロナ感染症にかからないためには免疫力を鍛えることだ!......っていうけど、そもそも免疫ってなんだ?

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■免疫には自然免疫と獲得免疫がある!

世界中で都市封鎖が起こり、感染拡大が続いているのに、現時点で治療薬はない。ワクチンもまだできていない。新型コロナに対してできるのは、感染予防と自分の免疫力で闘うことだけだ。

......でも、ちょっと待て! 「そもそも"免疫"ってなんだっけ?」

そんな疑問に感染症専門医で「KARADA内科クリニック」の佐藤昭裕(あきひろ)院長に答えてもらった。免疫システムを詳しく知ることで、新型コロナに負けない体をつくろう!

1.最初にウイルスの感染の仕組みについて教えてください。

「ウイルスの多くは目、鼻、口、性器などの粘膜から人間の細胞に侵入してきます。ただ、どんな細胞にも侵入できるわけではありません。例えば肝炎ウイルスは肝臓の細胞に入ってきます。ヘルペスウイルスは口や性器を好む。新型コロナウイルスは気管支、肺などと決まっています。

なぜ決まっているかというと、細胞の表面にはレセプター(受容体)があって、それがそれぞれ違っているため。例えば、ある細胞のレセプターは三角形をしているので、表面が逆三角形のウイルスでないとくっつかない。また、球体のレセプターを持っている細胞の場合は吸盤のようなウイルスでないとピッタリハマらないというわけです。

そして、ウイルスが細胞の中に入ると一気に自らを複製する。複製でいっぱいになると細胞から飛び出していって、次の細胞に侵入していきます。

ちなみに、細菌は細胞の中に入るわけではありませんが、やはり好きな場所が決まっていて、溶連菌は喉につきやすい、O−157は大腸につきやすい、といった具合です」

2.そんなウイルスや細菌が、体に侵入したときに体を守るのが免疫ですよね?

「そうです。ただ、免疫にも"自然免疫"と"獲得免疫"があります。自然免疫は生まれながらに持っている免疫で、ウイルスが入ってくると、まず自然免疫が働いて攻撃します。

もうひとつの獲得免疫は、人間が生きてきたなかで、これまでかかったウイルスを記憶していて、そのウイルスに対して攻撃をする免疫システムです。ですから獲得免疫は、初めて感染したウイルスにはほとんど機能しません。

獲得免疫が働くには特定のウイルスに結合して攻撃の目印となる"抗体"という物質を作らなければいけない。それにはある程度の時間が必要なんです。

ですから、初めて感染したウイルスは自然免疫だけで闘うことになり、この自然免疫がウイルスに負けるとどんどん症状が重くなっていきます。

逆に2回目の感染の場合は、すぐに獲得免疫が出動して、あっという間に侵入したウイルスをやっつける。それで、発症しにくくなるというわけです」

3.ワクチンを打つと感染予防になると聞きますが?

「はい。この獲得免疫の仕組みを利用したのがワクチンです。ワクチンには主に"生ワクチン"と"不活性ワクチン"があります。

生ワクチンは、ウイルスを弱毒化したもの。風疹やはしか、水痘(すいとう/水ぼうそう)、おたふくかぜなどの予防接種に使用されます。不活性ワクチンは、死んだウイルスや細菌を体内に入れて記憶させます。日本脳炎やインフルエンザワクチンなどがそれです。

生ワクチンのほうが長い期間、体が記憶しているので効果が高く、一生のうちに2回実施すれば大丈夫といわれています。逆に不活性化ワクチンは途中で効果が切れてしまいます。例えば、3回の接種で10年などと期間が短いのです」

■ワクチンがあってこそ成立する集団免疫!

4.新型コロナウイルスのワクチンは、なぜすぐできないのですか?

「普通、ワクチンを開発するのに10年から15年かかるといわれています。病原体のウイルスを獲得して、弱毒化または無毒化させ、動物実験を行なってから、人間に試してみる。実はここからが非常に難しくて『副作用はないのか?』『本当に人間に効いているのか?』など、検証する期間のほうが長いんです。

新型コロナウイルスのワクチンは、開発のスピードが速くて、今、人への治験を行なっているものもあるようですが、やはりここから1年くらいはかかるのではないでしょうか」

5.イギリス政府などは当初「集団免疫アプローチで感染拡大を防ぐ」と言っていましたが、集団免疫ってなんですか?

「はしかは感染力が強く、ひとりの感染者が8〜10人にうつしてしまいます。そのため、はしかは95%の人が抗体を持っていないと広まってしまいます。インフルエンザは、ひとりがふたり程度にしかうつしません。ですから人口の60%が抗体を持っていれば大丈夫だといわれています。

わかりやすく言うと、50%の人が抗体を持っていれば、ひとりの感染者がふたりにうつしたとしても、ひとりは抗体を持っているので発症しません。そして、その感染したひとりが、またふたりにうつしてもひとりにしか感染しません。これだと感染拡大はしません。それが60%になると、ひとり以下になるので感染者がどんどん減っていくという考え方です。

新型コロナウイルスもインフルエンザと同じような感染力といわれているので、60%と計算されています。

しかし、基本的に集団免疫はワクチンによって作るものなのです。でも新型コロナウイルスに対してはまだワクチンがないため、イギリス政府は感染によって集団免疫を得ようとしたわけです。すると、死亡率の高い高齢者が犠牲になる。それには目をつぶりましょうという政策だったために、非難を受けて方針転換をしたわけです」

6.ワクチンはもう少し時間がかかるとして、今、新型コロナの治療薬の開発はどんな状況なのでしょうか?

「新規の治療薬を作るのは、かなりの時間がかかります。そのため既存の薬で効くものがないか、多くの病院が臨床試験をしているところです。以前、抗HIVの薬が効くのではないかという説がありましたが、臨床試験の結果、有効性は見いだせなかったという報告がありました。

残念な結果ではありますが数ヵ月という短い期間で結果がわかったのですから、今後、このくらいのスパンで有効性の有無がわかれば、近い将来、治療薬が見つかるのではないでしょうか」

7.治療薬もない、ワクチンもまだできないということになると、ウイルスが侵入してきた場合、自分の自然免疫で闘うしかないわけですね。自然免疫力を下げないようにするにはどうすればいいのでしょうか?

「睡眠不足だと風邪にかかりやすいというデータがあります。ですから、免疫力を下げないためには、まず、規則正しい生活をして、十分な睡眠をとることです。そして、バランスのいい食事をする。さらに、ストレスをため込まないこと。ごく普通のことですが、これに手洗いやアルコール消毒、そしてマスクの着用などを徹底すれば、新型コロナウイルスに対抗できると思います」

――ということで今できる対策は、感染予防と免疫力を下げないことだ。ひとりひとりの「うつらない・うつさない」という行動が、感染拡大を防ぐことになる。先は長いかもしれないが、がんばろう、ニッポン!

取材・文/村上隆保 イラスト/はまちゃん