7月31日に再開される予定のNBAで、八村が所属するウィザーズはプレーオフ進出を狙う。失点が多いチームなだけに、八村のディフェンス面での奮闘が大きなカギを握りそうだ
7月31日に再開される予定のNBAで、八村が所属するウィザーズはプレーオフ進出を狙う。失点が多いチームなだけに、八村のディフェンス面での奮闘が大きなカギを握りそうだ

6月4日(現地時間。以下同)、NBAと球団オーナー側は2019−2020年シーズンの再開案に合意。新型コロナウイルスの影響で3月11日を最後に試合が行なわれていなかったNBAが、長い中断期間を経てようやくコートに戻ってくる。

再び幕が上がるのは7月31日からだ。新たなシーズンが始まるような感覚だが、異例な形で止まっていた時計が動きだす。

本稿執筆時点(6月15日)では決定していないことも多いが、リーグが打ち出した再開プランの最大の特徴は、フロリダ州オーランドにあるウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートの1ヵ所にチームを集めて試合を開催するという点。言わずもがな、これはコロナウイルス対策で、選手らは毎晩PCR検査を受けるという。

全30チームのうち、再開後に試合を行なうのは22チーム。東西各カンファレンスの上位8チームと、8位のチームから6ゲーム差以内のチームに権利があり、東カンファレンスは9チーム、同西からは13チームが選ばれた。

再開後、各チームは8試合をプレー(3月11日中断時点で各チームとも15〜18の残り試合があった)し、最終的には勝率によって、東西8チームずつが戦うプレーオフのシード順を決める。

八村 塁が所属するワシントン・ウィザーズは東の9位でなんとかこの枠に入り、ツーウェイ契約(下部リーグGリーグでもプレーする契約形態)の渡邊雄太のメンフィス・グリズリーズ(32勝33敗)も西の8位で残った。

日本のファンが特に注目するのは、日本人初となるドラフト1巡指名でNBAデビューした八村とウィザーズの動向だろう。

今季24勝40敗のウィザーズが、プレーオフに滑り込む可能性は高くない。一時は、アキレス腱の断裂で18年の年末以来プレーしていない、元ドラフト全体1位指名のエースガード、ジョン・ウォールの復帰も囁(ささや)かれた。しかし、本人が復帰を否定したため、得点数でリーグ全体2位のブラッドリー・ビールを含めた現有戦力で戦わざるをえない。

オフェンス面では、エースのブラッドリー・ビール(右)の活躍も欠かせない。リーグ全体2位の1試合平均30.5得点を記録する、26歳のスコアラーだ
オフェンス面では、エースのブラッドリー・ビール(右)の活躍も欠かせない。リーグ全体2位の1試合平均30.5得点を記録する、26歳のスコアラーだ

現在、ウィザーズと8位のオーランド・マジック(30勝35敗)との差は5.5ゲーム(7位にはマジックから0.5ゲーム差でブルックリン・ネッツがいる)。残り試合数を考えると、ウィザーズが順位を上げることは考えにくい。

だが、9位に終わっても8位との差を4ゲーム以内とすれば、プレーオフでの第8シードをかけての"決定戦"を戦うことができる。そこで8位チームは1勝した時点でプレーオフ進出が決定。逆に9位チームが2連勝すればポストシーズンの切符を手にする。ウィザーズが狙うとすれば、現実的にはここだ。

プレーオフは、現状8月17日から始まり、王者を決めるファイナルが最終戦までもつれ込んだ場合は10月13日をもって終幕となる方向だという。これにより来季の日程も後ろ倒しとなるが、現在のところ12月初頭の開幕が噂されており、となればオフシーズンは相当に短くなる。

長い中断が、シーズン再開にあたって選手にどのような影響を及ぼすのか、予測は難しい。この間、単に試合がなかっただけではなく、外出禁止令や施設の使用禁止によって、選手たちは練習やトレーニングができない状況を強いられたからだ。

ウィザーズがプレーオフ進出の可能性を上げるには、八村の活躍も必須。今季の個人成績は1試合平均13.4得点、6.0リバウンド、1.7アシスト。意見は分かれるかもしれないが、鼠径(そけい)部打撲で20試合以上を欠場するなどの試練もあっただけに、よくやっていると評価していい。

年間30試合強の試合数の大学から、はるかに試合数が多いNBA(本来ならレギュラーシーズンだけでも年間82試合)での初年度で戦う八村にとって、体力的、身体的負担は大きかったと想像できる。

日本出身であるというひいき目もあっての話だと断っておくが、八村は中断期間を経てフレッシュな状態で戻ることができるであろうし、ウィザーズの戦術理解をより深め、それを体現することもできるはずだ。

開幕から故障をするまでの25試合と、復帰後の16試合での八村の成績を比べると、得点はわずかに下がっているものの(13.9→12.5)、アシスト(1.6→1.9)とリバウンド(5.8→6.5)の数字を上げている。これは彼がNBAのゲームに慣れ、持ち味であるオールラウンドな力量を徐々に発揮でき始めている証拠だ。

再開後はオフェンス面のみならず、リーグで29位(平均失点119.7)と課題のあるチームのディフェンス面での活躍が期待される。

コロナウイルス感染に不安を持つ選手がプレーしない可能性もあるなど、残りのシーズンがどのように進んでいくか、あまりに未知数なところが多い。ミルウォーキー・バックス(53勝12敗)など上位にいるチームが、額面どおりの実力を保持しながら王座を狙って突き進むのか、といったところもわからない。

「シーズンが中断したときに僕らはいい位置にいましたし、チームの連帯感もあるので、自信はありますよ」

中断期間の4月、ウィザーズ公式SNS上のインタビューで、八村は力強い口調で話した。残り試合が8試合しかないとわかる以前の発言だが、常にポジティブな物言いをする彼の心持ちに変化はあるまい。

かなり特殊な状況での再開とはいえ、渡邊と併せて、日本人選手の世界最高峰の奮闘ぶりが見られることは、やはり幸せだと思うべきだ。

取材・文/永塚和志 写真/アフロ