日本語はとてもきれいな言語。要所要所にぴしっとスジが通っているし、奇跡のように整理整頓が行き届いている言語。

そう述べるのは、『すばらしき日本語』(清水由美著、ポプラ社刊)の著者であり、30数年にわたり、海外からの留学生に日本語を教えてきた日本語教師の清水由美氏だ。

■「どうぞいただいてみてください」はOK?NG?

ただ、普段当たり前に使っている日本語が、実は誤った使い方をしている場合は多い。中でも使い方を間違えやすいのが「敬語」だという。

たとえば、料理番組を見ていると「いただく」という言葉がよく使われているのを目にする。番組のホスト役や料理人がゲストに向かって「どうぞいただいてみてください」と言っていることがある。

この「いただく」は「食べる」の丁寧語として使っているのだが、「いただく」は謙譲語で、話し手側が自分や身内の行為を低めるときに使うもの。なので、食べようとする側が「これいただいてみていいですか」と使うのが正しい。

食事を出す側が言うのであれば、「お召し上がりください」「ご賞味ください」「召し上がってください」という使い方なら問題ない。「いただいてください」は、単に「食べる」のちょっと丁寧な言い方という認識で広まってしまっているまちがった使い方だ。

「いただく」とは、「雪をいただいた富士山」のように、もともと何かを頭上に置くこと。「頭上にささげ持つ」というところから転じて、何かを頂戴する、という語義が生じたので、「いただく」ものは食べ物に限らなくていい。たとえば、勲章やお小言でもいい。

なぜ、飲食の場面で謙譲語の「いただく」が、丁寧語表現として使われてしまうのか。これは子供の頃から「いただきます」と手を合わせて食事をしてきた日本人にとって、食べ物はどこか高いところからくだされるありがたいもの、という意識が染みついているからかもしれない、と清水氏は述べる。なので、客の行為にも、つつしんで「いただく」という動詞を使うのではないか。このように、飲食の場面での誤用が目立つのが「いただく」という言葉なのだ。

知らず知らずのうちに、間違った日本語の使い方をしていたり、日本語の奥深さ、良さに気づかずに使っている日本人は多いはず。日本語のおもしろさを教えてくれる本書から、改めて日本語にしっかり触れてみてはどうだろう。

(T.N/新刊J P編集部)