デパート屋上のペットショップで保護猫の譲渡会。そんな画期的なイベントが、2月22、23日に、東京・新宿の京王百貨店新宿店で開催された。

かつて生体販売をしていた場所で開催

 2017年の夏から、sippoの人気イベント『みんなイヌ、みんなネコ』の会場となっている京王百貨店新宿店で、猫の日(2月22日)にあわせ、保護猫の譲渡会が開かれた。

 参加したのはよつやねこ(新宿区)、北新宿晴れ時々ねこ(新宿区)、すぎなみあんないがかり(杉並区)の3つの猫ボランティア団体。

 京王百貨店新宿店の屋上にあるペットショップ内で、かつて生体販売に使われていたスペースを利用して、1日8〜10匹の保護猫たちが一生をともに過ごす家族との出会いを待った。

 京王百貨店の広報担当者によれば、2日間の来場者数はおよそ250人。場所は、ペット用品やフードが並ぶ細い通路沿いの限られたエリア。一度に大勢が入れないかわりに、人通りは多い。

 保護猫たちのケージの前には各団体のスタッフがスタンバイし、少しでもストレスを感じていそうな気配があれば、ケージを覆って猫を落ち着かせるなどの配慮も怠らなかった。

 京王百貨店の販売促進担当者は、「保護猫の譲渡会は、sippoの『みんなイヌ、みんなネコ』の中で3年連続実施していますが、回を重ねるごとに集まる人の数も増え、保護動物への関心の高さがうかがえます。今回は猫の日にちなんだフェアにからめて、何か保護猫のためになることができないかと考え、開催にこぎつけました」と話す。

 会場となったペットショップでは2018年3月以降、生体の取り扱いはしておらず、子犬や子猫の販売スペースが使われなくなっていた。その設備を利用し、今回の譲渡会の開催となった。

 今回、各団体を取りまとめたのは千代田区で活動をしている「ちよだニャンとなる会」だ。副代表の古川さんは、「デパートのペットショップが保護猫の譲渡に取り組んだ、ということ自体が大きな一歩と考えます。多くの人に知られる有名なデパートで、普段譲渡会に足を運ばない人たちも関心を持ってくれた。そのことに大きな意味があります」と話す。

新宿をさまよっていた猫たち

 会場では猫たちの写真とプロフィルを書いたシートが用意されていた。猫エイズや白血病のキャリアかどうかなど、健康上の情報に加え、いつ、どこで保護されたのか、各猫のいきさつや背景が記されていた。

「どの子も新宿区周辺をさまよっていた子たち。そして、来場者もやはり新宿周辺か、新宿に来やすい距離の人たちが多かったですね。地元の猫たちだとわかると心動かされる方も多いようです」(古川さん)

 譲渡の申し込み以外にも、「近所に飼い主のいない猫がいるが、どうしたらいいか」などの相談も多かったという。

「何人来場した、何匹譲渡できた、という数字的な成果よりも、普段、ボランティア団体の活動に接する機会の少ない人たちに、活動が知られる機会になった。その意味のほうが大きいと思います」(古川さん)

 通常、ボランティア団体の譲渡会は1日開催が多く、2日連続というのも珍しい。元気な猫で心配がなさそうな子は連日登場。猫への負担を考えて日替わりにした団体も。連日足を運ぶほどに、前向きに考える人が多かったという。

「人気の猫には複数の方から希望が集中します。申込書は各団体の基準で審査して判断。残念ながらお断りする方には、私たち『ちよだニャンとなる会』が対応しました。その猫とのご縁がなくても、その方により条件に合った猫とのマッチングができるかもしれない。

 何か保護猫のためになることをしたい、とおっしゃる方なら、預かりなどのお手伝いをお願いできる場合もある。せっかく生まれたつながりを今後に生かして、不幸な猫を1匹でも減らせればと思っています」(古川さん)

 百貨店にとっても、この催しはプラスに働いたという。京王百貨店によれば、イベント開催の2日間のグッズやフードの売り上げは通常よりも伸びたという。

「来場された方からキャリーバッグやフードの相談もたくさんありました。特にフード類は、さすが百貨店らしく品ぞろえがハイレベル。獣医師が推奨する品質の良いものや、アレルギー対応のものまであって、保護団体としても安心しておすすめできたのもよかったですね」(古川さん)

犬や猫と暮らしたい

 保護猫を熱心にみつめていた50代の夫婦がいた。聞けば池袋から来たという。

「子どもたちも独立して、夫婦ふたりになってしまうと寂しい、と思って。犬か猫、どちらか飼いたいと思ってるんです。私は子どもの頃から犬や猫と暮らした経験があるんですが、お金を出してペットを買ったという記憶がないんです。ペットショップも見たんですが、せっかくなら保護動物から、と思って」(夫)

「私は動物を飼うのは初めて。本当に自分にお世話できるのか。責任もって飼えるのか。ワクワクする一方で、慎重に考えないと」(妻)

 それでも愛らしい猫たちを見ていて、「やっぱり猫がいいかな」「両方でもいいよね」と前向きな様子だった。

 古川さんは「決して広いスペースではないけれど、百貨店という開かれた場所が会場になるのは素晴らしいこと。譲渡会の場所に困っている団体はたくさんある。細々とでもいいから、ペットショップで保護動物と出会えるこの機会を、継続してもらえたら」と話す。

 保護動物と動物との暮らしを望む人とをマッチングする新たな動きは、始まったばかりだ。