2020年1月以降、全世界に広がり続けている新型コロナウイルス(COVID-19)。その感染源は、野生動物だった可能性が高いとの見解を中国や米国の専門家が示している。

中国の緊急措置まだ不十分

 2月24日、中国の全国人民代表大会(以下、全人代:日本の国会に相当する)の常務委員会で野生動物の食物としての消費や取引の禁止が決定された。中国では、国家が重点的に保護する動物に限って食用を禁じている野生動物保護法があるが、法改正には時間を要するため、感染拡大を防ぐ緊急措置として、今回の全人代常務委員会で食用のための取引禁止が決定されたのだ。この緊急措置は動物保護を一歩前進させたが、まだまだ不十分である。

 中国の野生動物保護法は1989年に制定され、最近では2018年に改正されている。中国の国家林業・草原局(日本の林野庁に相当)は、54種の動物が記載された「家畜化および繁殖技術が確立している商業利用のための陸上野生生物のリスト」を作成していて、それらの動物は食用、毛皮・衣類、薬用、エンターテインメント、実験用と5つの商業目的での利用が認められている。

 2月24日の緊急措置で禁止になったのは食用についてだけ。しかも、キツネ、ミンク、タヌキ、シカなどの多くの野生動物はその「野生動物」リストから「家畜」のリストに移され、今回の食用禁止の緊急措置からも野生動物保護法の規制対象からも外されたのだ。

 そもそも野生動物保護法で保護される野生動物とは、希少な野生動物、経済的価値の高い陸生の野生動物のみで、保護対象外の動物は多い。

 例えばニシキヘビ。今回の緊急措置では食べることはできなくなったが、血液や胆のうは医薬品として、皮は楽器の素材として使用できるのである。また、本来、野生動物保護法で守られるべき絶滅危惧種のクマが胆汁用に飼育されていたり、リストにある54種どころか数百種類の動物たちが飼育されていると言われるなど、問題だらけなのだ。

センザンコウに類似のコロナウイルス

 3月26日、センザンコウが新型コロナウイルスと類似のコロナウイルスを保有していると学術誌「ネイチャー」に発表された。コウモリ以外の哺乳類でこのような類似ウイルスに感染していることがわかったのはセンザンコウが初めてだという。

 センザンコウにおけるコロナウイルスについてはまだ研究されていない部分があるが、アジアに生息する多くの野生哺乳類が新型コロナウイルスに関連するコロナウイルスを保有していることは明らかになっている。ネイチャーに発表された研究データは、野生動物の取り扱いには十分な注意を要するし、市場での販売は禁止すべきであることを強く示唆している、と述べている。

 これに対し同日のBBC Newsでは、様々な専門家たちの見解が紹介されている。「今回検出されたコロナウイルスの出所は不明。センザンコウが元々持っているウイルスかもしれないし、他の動物からうつされたものかもしれない」という指摘もある。いずれにしてもセンザンコウの密猟・密売の取り締まり強化には誰もが同意するだろう。

 センザンコウはアジアやアフリカに生息する哺乳類で、8種全てが密猟により絶滅の危機に直面している。その目的は、ウロコは漢方薬や魔よけ、肉は食用、皮は皮革製品に利用するためである。

中国の野生動物保護法の改正を

 中国政府の規制強化は抜け穴だらけであることから、中国の野生動物保護法のさらなる改正を求め、動物保護団体ACTAsiaは活動を続けている。当会NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)はこの活動に協力し、孔鉉佑駐日中国大使に下記3点を法律改正に盛り込むことを要請した。

  • 毛皮農場のように商業目的のために、野生動物をオリなどに入れて飼育することを禁止する
  • あらゆる野生動物の使用と売買、あらゆる目的の派生産物を禁止する
  • あやゆる野生動物を扱う市場の閉鎖と食べることを禁止する

「動物保護は人類も守る」意識を

 身近な存在であるイヌやネコでさえ、当然のことながら、細菌やウイルスを持っている。野生動物となれば、未知の細菌やウイルスをどれほど多く持っているか想像に難くない。人が動物とそれに付属するものをコントロールできるなどと侮ってはいけない。

 今回の新型コロナウイルスが終息した後も、根本原因を断たなければ再びこのような苦境を招きかねない。そのようなことにならないよう、「動物の搾取」を反省し、「動物保護は人類も守る」意識が広まることを期待したい。

※記事の内容は2020年4月20日現在のもの

(次回は7月13日に公開予定です)