愛犬が若いうちにしておいた方がいいことってあるの? 年をとってきた愛犬の変化に戸惑う、正しいケアができているか不安……など。意外に知らない犬のこと、多くありませんか? 快適な老犬ライフを送るために知っておきたい老年期について、毎月第3火曜日にお届けします。

 第5回テーマは「認知症」について、苅谷動物病院グループ総院長の白井活光獣医師にお話を伺いました。

認知症のサインは夜鳴き、昼夜逆転、徘徊

 犬の認知症とは、老化や医学的な脳障害、脳出血、または栄養障害などを原因とし、結果として脳神経細胞や自律神経がうまく働かなくなることによって出てくる症状のことです。

 認知症の症状として代表的なのが、夜鳴きが多くなる、昼夜逆転、そこに徘徊が加わるなど。感情のコントロールがうまくできなくなり、短気になり怒りっぽくなったりします。さらに、尻尾を振らなくなるなど、反応が鈍くなることもあります。

 たとえば、徘徊して壁にぶつかって、そのまま動けなくなったり、狭いところに入って出られなくなるのも認知症です。目的があって壁の向こう側に行きたいというとき、通常なら、壁を回避するために後ろに下がり、左右に行って壁を回避できるのですが、認知症になると、そこに向かうという希望が強くなり、回避する能力が低下するんです。壁に向かったままじっと止まってしまう。

 このように認知症になると、いままでの学習で本来ならできていたことができなくなります。

認知症、老犬

認知症は総合的にチェック!

 一般的に犬の認知症は10歳〜12歳くらいから始まると言われていますが、病院で診察をしていてたくさんの犬を診ていると、もう少し遅いかな。15歳超えてから始まっている子が多いなと感じています。

 傾向として、柴犬やダックスは認知症になりやすいように思います。また、大型犬は老化が始まるのが早い分、認知症が始まるのが早い可能性もありますね。

 認知症の診断をする『内野式100点法』というものがあります。大きく10項目あり、その中のそれぞれ5段階で点数をつけて、合計点を出し、何点以上なら認知症かもというような判断をする診断です。その得点法を使っている獣医さんは多いと思います。

 食欲・歩き方・排泄リズム・視力低下・姿勢・鳴き方・感情の出し方・習慣行動の可否、そういうものを総合的に評価して認知症の傾向をみます。内野式以外にも、サプリメントのVetPlus Aktivaitなどでもスコア表を出しています。インターネットで飼い主さんご自身でチェックできるサイトがあるので、愛犬の認知症が気になる方は、チェックしてみてください。

飼い主が愛犬をいやす立場に変わる

 認知症になった愛犬にしてあげられることは、症状をそれ以上進ませないようにすることですね。

 飼い主ができることとして、たとえば、愛犬の小さいころからの習慣を思い出させてあげること。高齢になってくると、いいことをするとご褒美をもらえるというような習慣が減ってくるので、小さいことにやっていたご褒美の習慣をあらためてやってみるとか。

 また、触ってもらって喜んでくれるなら、スキンシップをとって、精神的なケアをしてあげるのもいいですね。

 そうなると、付き合い方が「犬に人間がいやされる」から、「人間が犬をいやす」立場に変わるわけです。触れ合ったり、なでたり、抱っこする回数、声をかける回数を増やしたり。そういった飼い主の気持ちは愛犬に伝わります。

 認知症になっても、脳のすべての機能が使えなくなっているわけではないので、今までのようにうまく感情を出せなくても、反応として返ってこなくても、働いている一部の脳のどこかに伝わり、なんとなく反応が出ていると思うんですよね。

 そして刺激を与えてあげることでしょうか。お散歩で外の匂いをかがせてあげるとか、常に脳に刺激を与えてあげることで、認知症の進みを緩やかにしてあげることができるかもしれません。

認知症、老犬

認知症は予防が大切、愛犬ときちんと向き合う

 認知症の予防はできるだけ早いうちから始めましょう。付き合い方を見直し、変化を与えてあげて、犬の生きがいを考える。生きがいがある子は長く生きてくれているように思います。

 サプリメントで認知症を遅らせるようなものがありますが、それだけに頼るのは意味がないかもしれません。サプリに追加して、先ほど申し上げたように、愛犬に対しての接し方を変えたり、脳に刺激を与えてあげたりという、愛犬との付き合い方を変えることが大切です。

 また、本当に認知症なのかどうか? 普通とは違う行動が出てきたら、まず獣医師に相談してください。もしかしたら、違う脳の病気(脳腫瘍など)の可能性もあります。病変があるならそれに対処しなければいけません。

 予防のためにも、飼い主がしっかりと愛犬と向き合ってあげられるといいですね。