【総体】市船が衝撃の敗戦を喫したワケ。前回覇者を敗退に追い込んだ日大藤沢の戦略と敗者の弁

【総体】市船が衝撃の敗戦を喫したワケ。前回覇者を敗退に追い込んだ日大藤沢の戦略と敗者の弁


 全国高校総体(インターハイ)は4日に決勝が行なわれ、流経大柏が9年ぶりの優勝を飾ったが、前日の準決勝では前年度王者の市立船橋が衝撃的な敗戦を喫して、大会から姿を消していた。

 市立船橋は初の4強進出となった日大藤沢と対戦。序盤からボールを支配して押し込む展開を作り、後半23分にはMF郡司篤也が先制点も奪い取った。だが、後半アディショナルタイムで迎えたラストプレー。GKからのロングキックのこぼれ球を交代出場したばかりの日大藤沢MF菊地大智に叩き込まれて、まさかの同点に。そのまま迎えたPK戦を落とし、連覇への道は途絶えることとなった。
 
 どこかでボタンを掛け違えているような、違和感のある試合内容だった。ボールは持っている。動いてもいた。しかし「テンポが悪い」(朝岡隆蔵監督)。理由の一つは、日大藤沢のやり方が想定と異なっていたことだろう。

 これは佐藤輝勝監督の狙いどおり。普段はボールにガツガツと奪いに行くところを抑えさせつつ、しかしまったく奪いに行かないわけではない「行くようで行かない。やらないようでやる」微妙な守備を徹底。不思議なノープレッシャーもあれば、油断していると突然取りに来る。そのリズムの変化を狙う。「市立船橋の選手たちは本当に素晴らしい。だから少しでも彼らの判断を迷わせられればと思っていた」(佐藤監督)。
 
 一人ひとりのボールを持つ時間が長くなったうえに有効でもない。おまけに「一番良い選手」と日大藤沢側が見込んでいたU-19日本代表の左SB杉山弾斗だけは意図的にプレッシャーをかけられており、他の選手を使って攻めさせるように仕向けられてもいた。日大藤沢が張った罠に入り込んでいた。
 
「前半から押し込んで、リスク管理もできていたし、(こぼれ球も)拾えていた」(杉山)
 
 杉山が言うように、内容が絶望的に悪いわけではなかった。事実として、日大藤沢の得点機は皆無。だがそれでも、徹底して中央を固めていた日大藤沢に対し、攻め切れない。何かがおかしいまま時間だけが過ぎていく。
 
 それでも交代出場の郡司がCKのセカンドボールからしぶとく決めた先制弾は「さすが市船」と思えるもの。エースFW福元友哉を出場停止で欠く影響でゴール前の強さ・怖さがなくなっても、セットプレーで勝負強さを見せるあたりは王者の資質あり、と見えた。「1点リードはまったくアンパイではない」(朝岡監督)のは確かだが、試合の流れとしては、このまま終わり“そう”ではあった。

 あるいはそこに油断が生まれるスキもあったのだろうか。本当に少しの部分だったには違いないが、「ワンプレーに対する思いの軽さが出た結果」(朝岡監督)が選手たちにのしかかることになる。ラストプレーで生まれた、よもやの同点劇。奇跡的なプレーにも見えたし、日大藤沢を褒めるべきだろう。
 
 ただ、朝岡監督は矢印を自分たちに向ける。
「少しのこだわり、責任感が足りない。それはプレミアリーグから出ていたこと。それを徹底させられなかった」
 
 少しのクリア、あと半歩の寄せ、ちょっとしたポジショニング、あるいはそもそもの起点となったFKを与えなければ……。杉山が「自分があそこでもっと声を出しておけば」と悔やんだように、ピッチにいた全員がそれぞれ違う形で脳裏に浮かべたであろう、それぞれの小さな後悔の一つひとつが合わさって、準決勝という大舞台での敗因は形作られていた。
 
 伝統校の指揮官はこの敗戦を受け入れた上で、早くも次を見据えていた。「身をもって知らないといけない経験ができた」と“薬”を得たことを前向きに捉える。「(総体は)早く負けてしまうと試合数を積めなくて成長できないからね」と、準決勝という舞台でそれが起きたことについてもポジティブだった。
 
 ディテールに宿る勝負の肝。敗戦という形でそれを痛感させられた市船の選手たちが残りの夏を通じてどう変わっていくのかどうか。まずは8月末に再開となるプレミアリーグ、そして冬の選手権に向けた脱皮を楽しみにしておきたい。
 
取材・文:川端暁彦(フリーライター)

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