【シャペコエンセ連載・復興への軌跡】第3回「クラブ史上初のコパ・リベルタドーレス」

【シャペコエンセ連載・復興への軌跡】第3回「クラブ史上初のコパ・リベルタドーレス」


 2016年11月28日に起きた事件を、覚えている方は多いはずだ。ブラジルの1部に所属するクラブ、シャペコエンセの一行を乗せた飛行機が墜落し、多くの尊い命が犠牲となったあの大事件だ。
 
 あれから、およそ9か月が経った。クラブ存続の危機に直面したシャペコエンセはしかし、着実に復興へと進んでいる。そして8月15日には、コパ・スダメリカーナ王者として臨むスルガ銀行チャンピオンシップで、浦和レッズと対戦する予定だ。
 
 シャペコエンセの来日を記念してお届けするのは、現地在住のサッカージャーナリスト、沢田啓明氏が飛行機事故からの歩みを追ったドキュメンタリー連載だ。第3回は、クラブ史上初めて参戦したコパ・リベルタドーレスを取材。1次リーグでは、どんなパフォーマンスを見せたのか。
 
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 飛行機事故から100日目の3月7日、シャペコエンセはベネズエラ西部のマラカイボで、コパ・リベルタドーレス1次リーグの初戦に臨んだ。
 
 16年シーズンのブラジル全国リーグで11位だったシャペコエンセが、南米王者を決めるこの大舞台に立てるのは、昨年のコパ・スダメリカーナを制して参加資格を得ていたからだ。コパ・リベルタドーレスに出場するのは、クラブ史上初。記念すべき初戦の相手は、ベネズエラ後期リーグの覇者スリアだった。
 
 アウェーゲームだったため、飛行機で移動。国外遠征は、あの事故以来だ。サンパウロ、パナマを経由する約30時間の長旅の末に会場に到着。ここでも人々の同情と共感を集め、試合前にシャペコエンセの選手がピッチに姿を現わすと、アウェーにもかかわらずスタンドからは盛大な拍手が送られた。
 
 フォーメーションは、2月下旬から州リーグで試行してきた4-3-3。3枚で構成する中盤は、アンカーが京都サンガで昨年活躍したアンドレイ・ジロット、右インサイドハーフが15年にアビスパ福岡でプレーしたモイゼス・リベイロと、2人の元Jリーガーが先発を飾った。
 
 この布陣を使う意図についてヴァグネル・マンシーニ監督に尋ねると、「中盤で激しいプレスをかけて主導権を握り、両サイドを突破してゴールを狙うため」と説明してくれた。
 
「事故で亡くなった選手たちは、誰もがこのピッチに立つことを夢見ていたはず。クラブに命を捧げた彼らのためにも、絶対に負けられない」

 試合前にそう意気込みを語ったのは、主将を務めるGKのアルトゥール・モラエスだ。その言葉通り、強い気持ちでピッチに立ったシャペコエンセのイレブンが、序盤から中盤の攻防で優位に立つ。
 
 33分には、角度がほとんどない右サイドからのFKを左SBレイナウドが直接決めて先制。69分には右からのクロスをMFルイス・アントニオがダイレクトで叩き込み加点した。78分にCKから失点し、その後もスリアの猛攻に苦しめられたものの、身体を張って最後の一線だけは越えさせない。

 このまま2-1で主審が試合終了の笛を吹いた瞬間、多くの選手は疲労困憊した様子でピッチに横たわった。何人かは飛び出してきたコーチングスタッフと抱き合って、飛び跳ねている。まるで優勝したかのような騒ぎだった。
 
 多忙を極めるシャペコエンセ一行は、ベネズエラから再び飛行機を乗り継いで帰国。長時間移動を含めて中3日の3月11日、今度はサンタカタリーナ州リーグの第2ステージ初戦に臨んだ。
 
 10チームが参加する州リーグは1回総当たりの第1ステージと第2ステージが行なわれ、それぞれの覇者がホーム&アウェーの優勝決定戦を戦う。王者として臨んでいるシャペコエンセは、第1ステージが宿敵アバイに次ぐ2位だった。
 
 第2ステージは飛行機事故で亡くなった前会長の名を冠する「サンドロ・パラオーロ杯」と銘打たれているだけに、是が非でも1位を勝ち取りアバイとの優勝決定戦に進みたいところだ。
 
 第2ステージの初戦は、インテル・デ・ラージェスとのアウェーゲーム。相手は格下だったものの、遠征の疲労が隠せずスコアレスドローに終わっている。控え組をベースに布陣を組む選択肢もあったはずだが、マンシーニ監督は「スリア戦に出場した選手たちが、ぜひプレーさせてほしいと申し出たので、彼らの意思を尊重した」と内情を打ち明けてくれた。
 
 インテル・デ・ラージェス戦から中4日の3月16日は、コパ・リベルタドーレスの1次リーグ第2戦。アルゼンチン王者のラヌースをホームに迎えた。
 
 ラヌースは初戦でナシオナル(ウルグアイ)と対戦し、押し気味に試合を進めながらも一発のカウンターに沈み0-1で敗れていた。この試合も落とすようだと、かなり苦しくなる。一方、前日に行なわれたナシオナル対スリア戦で、大方の予想を裏切りスリアが1-0の勝利を収めたため、シャペコエンセは勝てば勝点6、引き分けでも勝点4でグループ首位に立てるという状況にあった。
 
 コパ・リベルタドーレスでのホーム初戦とあって、本拠地アレーナ・コンダは勝利を期待する観衆で埋め尽くされた。試合前にマンシーニ監督が、「チーム作りは自分の予想以上の速さで進んでおり、すでに理想の70〜75パーセント到達している」と自信をのぞかせていたことも、ファンの期待を煽った。
 
 フォーメーションはスリア戦と同じ4-3-3。立ち上がりは優位に試合を進めた。しかし11分、モイゼス・リベイロが左太ももを痛めてピッチを退き、代わってオズマンが出場。この交代を機に中盤の守備力が低下し、ラヌースの巧みなパス回しに対応できなくなる。ボールを奪ってもトラップやパスのミスが多く、すぐに失った。
 
 それでも50分、味方のミドルシュートを判断良くトラップした右ウイングのロッシが至近距離から決めて先制する。しかしその直後だった。グラウンダーのクロスをニコラス・アギーレに合わせられ同点に。67分にはペナルティーエリア内でFWのラウタロ・アコスタを倒してPKを献上。これをホセ・サンドに決められてしまう。さらに81分、右サイドからのクロスをアコスタに押し込まれて、万事休す。シャペコエンセは1-3で敗れた。
 
 マンシーニ監督は試合後、「攻守両面でミスが多かった」と完敗を認め、「まだまだ改善すべき点が多い。今後、さらに戦術練習を積み重ね、攻守両面における連携を一層深化させたい」と課題を述べた。そして、全国リーグが開幕する5月上旬までに何人かの選手を補強する意向を明らかにした。
 
 たしかに、課題を露呈した一戦だった。守備は相手の中盤での素早いパス回しについていけず、カバーリングが機能せず。攻撃は中盤で基本的なミスが続出し、ラヌースの守備ブロックにボールを奪われてしまった。得意のサイド攻撃は不発。相手の老獪な試合運びに、翻弄された部分もあった。
 
 ラヌース戦の後は3月19日、22日、26日に州選手権の3試合を戦った。中2日でアトレチコ・トゥバロンをホームに迎えた一戦は、ジロットのハットトリックなどで7-0と大勝。ラヌース戦のショックを振り払った。
 
 敵地に乗り込んだアウミランテ・バローゾ戦は、2点をリードされる苦しい展開のなか、終盤に盛んな闘志と豊富な運動量を発揮して猛攻を繰り広げ、3点を奪って大逆転勝利。続く強豪アバイとの大一番も、ジロットらの得点により2-0の快勝を収めた。この結果、3勝1分けで勝点を10に積み上げ、得失点差でジョインビーレを上回って首位に立った。
 
 3月はコパ・リベルタドーレスが2試合(1試合は往復60時間の移動を要したアウェー戦)、州リーグが5試合、プリメイラ・リーガ(ブラジル南部を中心とする6州の強豪16クラブが参加)が1試合の計8試合という厳しい日程をこなした。
  
(第4回につづく)
 
取材・文:沢田啓明
 
※ワールドサッカーダイジェスト2017.04.20号より加筆・修正
 
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【著者プロフィール】
さわだ ひろあき/1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。
 

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