【指揮官コラム】鹿児島ユナイテッドFC監督 三浦泰年の『情熱地泰』|初台風で見た鹿児島の一体感とボルトの銅

【指揮官コラム】鹿児島ユナイテッドFC監督 三浦泰年の『情熱地泰』|初台風で見た鹿児島の一体感とボルトの銅


 8月某日、鹿児島に台風直撃の予報が……。多くの人から心配する連絡が入った。僕も鹿児島に来る前は、鹿児島と言えば台風が必ず通過していき、大きな被害を受けているイメージを持っていた。その台風がやって来たのだ。
 台風5号だ……。
 
 土曜日の夜に上陸、日曜日に大きな影響を受けるという警報に、チームは上手く難を逃れることができ、土曜日の午前中に少し強い風の中での練習試合を終えた。
 
 もちろん飛行機が欠航になったり、羽田空港に戻ったり、福岡空港に到着が変わったり、電車が止まったりと、まったく影響がなかった訳ではないが、たまたま日曜日をオフにしていたことと、J3リーグが3週間の中断期間であったりと、運よく台風5号の大きな影響はなかった。
 
 それにしてもびっくりしたのはその予報に対しての鹿児島市民の準備の手際の良さだ。少年サッカー大会は、レギュレーションを変え土曜日で終了するようにするし、公共の施設は早めにクローズ。スーパーは夜中の12時までやってるはずが夜の7時で早じまいだ。
 
 台風が逸れた時の欲を捨て、早めに決断。日曜日のお祭りや行事、イベント、サッカーに関して言えば大会やフェスティバルは、土曜日のいや金曜、木曜の時点で中止を決めていた。
 
 そして翌日(日曜日)、道には人がまったく歩いていない。皆で台風を警戒してリスクをしっかりマネジメントしていたというわけだ。
 
 僕の住むマンションの駐車場は地下の立体機械駐車場のため、夜の21時には出入りできないように出入口に壁を作り、車の水没とトラブルが起きないようにしていた。利用予定のある人は、近くの駐車場に移動させられるなど、事前の準備を徹底しているのである。
 
 面白いもので、「備えあれば憂いなし」とでもいうのか、風の強い一日であったが僕の住む付近はそれほど強い雨も降らず被害もなく、マンションのオーナーも「大したことなかったね……」と拍子抜けしていた。
 
 もちろん鹿児島も広いので被害が大きかった場所もあるのかもしれない。これから台風何号まで続くか分からないが、また鹿児島に上陸してくる可能性もあるだろう。
 
 ただ初台風を体験した僕にとっては、「さすが鹿児島の団結力」と思えたし、過去の経験から、周りが台風に対してしっかり意識して備える所は、東京や静岡では感じとれない地域性だった。
 
 僕も台風が最接近した日は一日中、外出せず家にいた。きっと鹿児島じゅうで、そんな日曜日を過ごした人は多かったのだろう。
 そんな一日を過ごすなかで、僕は世界陸上をテレビで観戦した。
 
 注目はボルトの100メートル決勝。ご存知の通り、引退レースは銅メダルという結果になった。多くの人が「金」で終わってほしいと望んでいたのだろうが、引退を覚悟したという選手が、金を獲得して競技をやめる……。それでは余りにも凄過ぎるのでは……。
 
 ボルトの銅なんて見たくなかったと思う気持ちと同時に、引退を決めたていたのだから、3位となっても不思議はないだろう。そう思うのが自然な気がする。
 
 僕はボルトが負ける日まで、最後まで拘って走った、その姿に感動した。もちろんボルトは最後に金メダルを取ると断言したが、こうなる可能性があることを知っていたのだと思う。
 
 だからこそ引退を選んだ。僕はそう思う。
 
 台風で外へ出る予定も立たず、早朝ライブでボルトの退き際を見ているうちに、台風の気配も薄くなり鹿児島の上空から台風の雲がゆっくり移動していった。
 
 暑い日が続き、再び台風が接近してくる。これから桜島の噴煙も、夏場の風向きは市内へと吹き込むため、街には灰が舞うようになると聞く。
 
 各地で心配してくれる人たちには鹿児島のこんな状況と同時に、ユナイテッドの状況も気にしてほしい。後半戦、リーグの台風の目になれるよう、この期間で台風に負けじと良い準備をしていく!
 
2017年8月9日
三浦泰年
 

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